機械工として地下工場に召集された天野正一が、多くの機械工とともに顔だけを出して蛹型の拘束具に閉じ込められ糞尿垂れ流しの状態で吊り下げられ数日を過ごした後、監督官から鉄の棒で理不尽に殴打されながら金属製の蝶を作り続けるという労働を課せられるという設定の小説。
暴力により制圧された労働者が、理不尽な使用者・監督官の下で従事している労働の意味(のなさ)や使用者の暴力の意味を問いかける様子は、閉塞した格差社会で底辺に追いやられ抜け出せない労働者/非正規労働者のメタファーのようにも見えます。そこで虐げられた労働者が横暴な使用者に正面から反抗できずに隠れた逸脱行為を繰り返し、自虐や道化に走る姿は、闘いよりも逃走、ずらしを志向する世相を反映しているものでしょうか。そして、意味のない労働が続くうちに労働者自身が暴力を受けることを望むという構図は、労働者を虐げ経営者の利益を優先した政策をとる政治家に若者・非正規労働者が投票し続ける絶望的に被虐的な国の状況を示している、というわけじゃないんでしょうね…
金子薫 新潮社 2021年7月30日発行
暴力により制圧された労働者が、理不尽な使用者・監督官の下で従事している労働の意味(のなさ)や使用者の暴力の意味を問いかける様子は、閉塞した格差社会で底辺に追いやられ抜け出せない労働者/非正規労働者のメタファーのようにも見えます。そこで虐げられた労働者が横暴な使用者に正面から反抗できずに隠れた逸脱行為を繰り返し、自虐や道化に走る姿は、闘いよりも逃走、ずらしを志向する世相を反映しているものでしょうか。そして、意味のない労働が続くうちに労働者自身が暴力を受けることを望むという構図は、労働者を虐げ経営者の利益を優先した政策をとる政治家に若者・非正規労働者が投票し続ける絶望的に被虐的な国の状況を示している、というわけじゃないんでしょうね…
金子薫 新潮社 2021年7月30日発行