プロの画家になり、絵を売って生きていくあるいは絵を教えて生きていくためにはどうすべきかについて、Q&A形式で論じた本。
Q1での答が、「『プロの画家になる』だと?笑わせるな!プロの画家は今、日本には五人しかいないんだよ。絵だけで喰える画家をプロというならね」です(14ページ)。そして、プロになれるような器には努力など無縁です(15ページ)とも。そう言ってしまったら、「技法書」の存在価値はなく、この本の読者層もなくなってしまうのですが。
そうは言っても、自分の絵のレベルを知るためには、片っ端から公募展に応募すればいい、自分が出品料を払って応募すると入選入賞作品がそれまでと違って見えてくる(31ページ)という指摘など、なるほどと思えます。自腹を切ることで真剣になり、また納期があることで否応なく描く、そして展示場で否応なく他の作品と比較されることで思い込みではなく客観視できるということですね。
一日描かないと、翌日没頭するのに手間がかかる。二日描かないと、どう描くのか途方にくれる(46ページ)。三日描かなければ、どう筆を進めてよいかわからなくなる(53ページ)。ピアノだけじゃないんですね。美大に行っても卒業して十年以上描き続けるのは五パーセントくらいだろうって(53ページ)。そんなもんですか。まぁ法学部を卒業して弁護士になっている人の割合はもっと低いですけど。
デッサンを習慣にするには、毎日鏡に向かって自画像を描くこと(73ページ)だそうです。静物じゃダメで人物でないといけない、それは静物だといい加減に描いても狂いがわからない、人物、特に見慣れている自分の顔なら実物と違うとすぐに気がつくからだって、なるほど。油絵は乾く前に重ね塗りすると濁ってしまい彩度と明度が落ち、暗い絵になりがちで明るいカラッとした絵が初心者には描けない、暗い沈んだ色調の絵は何か意味ありげでそれに満足する描き手が多いが実は技量不足なのではないか(94ページ)と、これも厳しいけどなるほどと思う指摘です。
佐々木豊 芸術新聞社 2021年8月20日発行
Q1での答が、「『プロの画家になる』だと?笑わせるな!プロの画家は今、日本には五人しかいないんだよ。絵だけで喰える画家をプロというならね」です(14ページ)。そして、プロになれるような器には努力など無縁です(15ページ)とも。そう言ってしまったら、「技法書」の存在価値はなく、この本の読者層もなくなってしまうのですが。
そうは言っても、自分の絵のレベルを知るためには、片っ端から公募展に応募すればいい、自分が出品料を払って応募すると入選入賞作品がそれまでと違って見えてくる(31ページ)という指摘など、なるほどと思えます。自腹を切ることで真剣になり、また納期があることで否応なく描く、そして展示場で否応なく他の作品と比較されることで思い込みではなく客観視できるということですね。
一日描かないと、翌日没頭するのに手間がかかる。二日描かないと、どう描くのか途方にくれる(46ページ)。三日描かなければ、どう筆を進めてよいかわからなくなる(53ページ)。ピアノだけじゃないんですね。美大に行っても卒業して十年以上描き続けるのは五パーセントくらいだろうって(53ページ)。そんなもんですか。まぁ法学部を卒業して弁護士になっている人の割合はもっと低いですけど。
デッサンを習慣にするには、毎日鏡に向かって自画像を描くこと(73ページ)だそうです。静物じゃダメで人物でないといけない、それは静物だといい加減に描いても狂いがわからない、人物、特に見慣れている自分の顔なら実物と違うとすぐに気がつくからだって、なるほど。油絵は乾く前に重ね塗りすると濁ってしまい彩度と明度が落ち、暗い絵になりがちで明るいカラッとした絵が初心者には描けない、暗い沈んだ色調の絵は何か意味ありげでそれに満足する描き手が多いが実は技量不足なのではないか(94ページ)と、これも厳しいけどなるほどと思う指摘です。
佐々木豊 芸術新聞社 2021年8月20日発行