「働かざるもの、食うべからず」と口癖のように言う父親に育てられ父が書いた「働かざるもの、食うべからず」の書を額縁に入れて仰ぎ見る高卒の銀行員の野原小太郎が、大学院で平安文学の研究をしていた書店のアルバイトの鞠子と結婚し、自立志向があまりなく小太郎が支えてくれているうちは働かなくてもいいと、趣味を優先して生きる鞠子の姿勢に感化され、力を抜いて生きていこうと考えを改めるという展開の小説。
賞には応募せずあくまでも趣味として書きたいと言って小説を書き出した鞠子に、小太郎も書いてみればと言われて小太郎が小説を書くや新人賞を受賞してその後3冊続けて売れる小説が書けたというのは、あまりに都合のいい設定で、そういう世界なら自由に生きていけるだろうけど…という方に、自分に引き寄せにくい感想を持ってしまうように思えました。自由に力を抜いて生きようという方向に進めながら、小太郎も、そして鞠子も、どうも会話が理屈っぽいのも、ちょっとそぐわない感がありました。
まぁ、夫婦も考えや感覚の違いを何とか折り合っていくものだし、人生も予想外のことに戸惑いながら対処していくものだということは、感じ取れます。
山崎ナオコーラ 河出文庫 2021年8月20日発行(単行本は2019年2月)
「しんぶん赤旗」連載
賞には応募せずあくまでも趣味として書きたいと言って小説を書き出した鞠子に、小太郎も書いてみればと言われて小太郎が小説を書くや新人賞を受賞してその後3冊続けて売れる小説が書けたというのは、あまりに都合のいい設定で、そういう世界なら自由に生きていけるだろうけど…という方に、自分に引き寄せにくい感想を持ってしまうように思えました。自由に力を抜いて生きようという方向に進めながら、小太郎も、そして鞠子も、どうも会話が理屈っぽいのも、ちょっとそぐわない感がありました。
まぁ、夫婦も考えや感覚の違いを何とか折り合っていくものだし、人生も予想外のことに戸惑いながら対処していくものだということは、感じ取れます。
山崎ナオコーラ 河出文庫 2021年8月20日発行(単行本は2019年2月)
「しんぶん赤旗」連載