伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

初めての人のための契約書の実務 読み方・作り方・交渉の考え方 [第4版]

2022-10-06 21:51:06 | 実用書・ビジネス書
 主として企業間の取引のための契約書について、典型的な条項の意味、書き方による効果の違い、立場によって気をつけるべき点、不利な条項についての修正のための交渉の必要性とそのためのアイディア等を説明した本。
 契約書作成やそのための交渉を行う者にとっては、総論的なところではどこまで一方的な条項を作ると無効になるか、一般的な条項においてもそれぞれの立場によりどのような条項にするように求めるべきか、各論ではそれぞれの立場からの条項のメリット・デメリットと注目すべき点、条項をどのように修正させるべきかなどの説明が特に役立ちそうです。もっとも各論では、その点の指摘が具体的になされているものと、抽象的な一言で終わっていてどうすればいいか読んでもわからないものがあります。まぁベテランの弁護士であっても詳しい分野とあまり経験がない分野はどうしてもありますので、すべての類型で詳しくユーザーにとって使える記載をすることを求めるのは、無い物ねだりかもしれませんが。
 改定を重ね、債権法改正などの新しいトピックがきちんと反映されているのはよいと思いますが、読んでいて場所が違うんじゃないかと思ったり(例えば86ページの販売代理店契約(ディストリビュータ契約タイプ)の概念図は2ページ前に入れるべきでしょう)、記載があっていない(例えば109ページでソフトウェアの保証について「実際にソフトウェアライセンス契約書の第8条で詳しく見ていきます」と書いているのに、第8条の説明がない。「第8条に詳しく記載されています」なら条項の文例だけでいいのでしょうけど)など、校正がちょっと行き届いていない印象があったのが、全体としてとてもよい本だと思うだけに、ちょっと残念な気がしました。


牧野和夫 中央経済社 2022年7月5日発行(初版は2013年10月)
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