渋谷の高級住宅街の美容皮膚科クリニックの雇われ院長をしているバツイチ子持ちの赤澤奈美が、48歳の時に、自分を「女」としてみてくれる14歳年下の元患者の男に対し、人生最後の恋を意識してのめり込んで行くという老いらくの恋小説。
私より5歳若い作者が55歳の時に書いた作品ですが、48歳の主人公に「この歳になると、なかなか二度寝もできない。眠ることにも体力がいるのだ、と実感したのはいつのことだったか」(80ページ)と言わせています。私は、48歳の頃も、そして今も、いくら寝ても寝たりない、時間が許すならいつでも二度寝したいと思っているのですが…それは、人それぞれなんでしょうか。「『セックスで綺麗になる』という特集記事が女性誌で組まれたのはもう何年以上前になるのだろうか」(140ページ)…私たちの世代や主人公の年齢設定では、衝撃的で記憶に残るその特集は1989年に「an・an」に掲載されたもののはず。30年あまり前のことで、「何年以上」ってボケかましてるんだろうか。
「私が仕事に熱中したのは、子どもを産んでも、夫と別れても、仕事だけは手放さなかったのは、母への復讐の気持ちがあったからだ。母は生涯、仕事を持つ人間ではなかった。二人の夫の庇護のもとに主婦として生きた人だった。母のようにはなりたくない。私のなかには常にそんな気持ちがあった」(233ページ)20年以上、美容皮膚科医として働き経営してきた者が、果たしてそういう動機で働き続け、また自分の生き様をそのように総括するものか、人それぞれではありましょうけれども、私には違和感があり、また歯を食いしばって働き続ける女性たちはこういうのを読んでどう思うのかなと思いました。
窪美澄 講談社 2020年9月14日発行
私より5歳若い作者が55歳の時に書いた作品ですが、48歳の主人公に「この歳になると、なかなか二度寝もできない。眠ることにも体力がいるのだ、と実感したのはいつのことだったか」(80ページ)と言わせています。私は、48歳の頃も、そして今も、いくら寝ても寝たりない、時間が許すならいつでも二度寝したいと思っているのですが…それは、人それぞれなんでしょうか。「『セックスで綺麗になる』という特集記事が女性誌で組まれたのはもう何年以上前になるのだろうか」(140ページ)…私たちの世代や主人公の年齢設定では、衝撃的で記憶に残るその特集は1989年に「an・an」に掲載されたもののはず。30年あまり前のことで、「何年以上」ってボケかましてるんだろうか。
「私が仕事に熱中したのは、子どもを産んでも、夫と別れても、仕事だけは手放さなかったのは、母への復讐の気持ちがあったからだ。母は生涯、仕事を持つ人間ではなかった。二人の夫の庇護のもとに主婦として生きた人だった。母のようにはなりたくない。私のなかには常にそんな気持ちがあった」(233ページ)20年以上、美容皮膚科医として働き経営してきた者が、果たしてそういう動機で働き続け、また自分の生き様をそのように総括するものか、人それぞれではありましょうけれども、私には違和感があり、また歯を食いしばって働き続ける女性たちはこういうのを読んでどう思うのかなと思いました。
窪美澄 講談社 2020年9月14日発行