中小企業の労務/総務担当者が遭遇する労務管理についての問題について、ごくシンプルに基本的な説明をする本。
弁護士の目からは、その説明は甘いなと思うところもあります。例えば、「副店長は、スタッフのシフト調整および新人スタッフの教育や配置を担っており、シフト調整をする上で、自分の出勤日や休日、その業務内容をある程度決めることができる裁量もありました」ということと3万円の役職手当で、経営への参画が少ないというのに、時間外・休日労働割増賃金の対象外となる「管理監督者性があると判断しました」としています(56~57ページ)。シフトの調整程度で人事労務に関する権限と責任が十分とは言えないでしょうし、そういう場合、むしろスタッフの都合で穴が開かないように副店長が自身の勤務を入れて穴埋めするようなことも多いと思われます。経営への参画が少なくて役職手当がわずか3万円では、裁判では管理監督者性が否定される可能性が高いと思います。会社の費用で資格を取得した労働者が早期退職したときにその費用の返還を求められるかという問題(131ページ)なんかは、使用者側の弁護士は、より労働者に厳しいえげつない手法を提案するでしょう。また、健康保険・厚生年金の加入要件が2016年10月から500人超の事業所では所定労働時間週20時間以上、1年以上の雇用が見込まれ、賃金月額8万8000円以上となっていたのが、2022年10月1日から100人超の事業所で所定労働時間週20時間以上、2か月以上の雇用が見込まれ、賃金月額8万8000円に拡大されましたが、2022年7月発行の本なのにそこが具体的に説明されていない(37ページ)というのは、どうかと思います。
そういった弁護士が書く場合のような専門性・詳細さはありませんが、現実に遭遇しそうな問題にとりあえず対応するという点では、わかりやすい本だろうと思います。
三谷文夫 ワン・パブリッシング 2022年7月10日発行
弁護士の目からは、その説明は甘いなと思うところもあります。例えば、「副店長は、スタッフのシフト調整および新人スタッフの教育や配置を担っており、シフト調整をする上で、自分の出勤日や休日、その業務内容をある程度決めることができる裁量もありました」ということと3万円の役職手当で、経営への参画が少ないというのに、時間外・休日労働割増賃金の対象外となる「管理監督者性があると判断しました」としています(56~57ページ)。シフトの調整程度で人事労務に関する権限と責任が十分とは言えないでしょうし、そういう場合、むしろスタッフの都合で穴が開かないように副店長が自身の勤務を入れて穴埋めするようなことも多いと思われます。経営への参画が少なくて役職手当がわずか3万円では、裁判では管理監督者性が否定される可能性が高いと思います。会社の費用で資格を取得した労働者が早期退職したときにその費用の返還を求められるかという問題(131ページ)なんかは、使用者側の弁護士は、より労働者に厳しいえげつない手法を提案するでしょう。また、健康保険・厚生年金の加入要件が2016年10月から500人超の事業所では所定労働時間週20時間以上、1年以上の雇用が見込まれ、賃金月額8万8000円以上となっていたのが、2022年10月1日から100人超の事業所で所定労働時間週20時間以上、2か月以上の雇用が見込まれ、賃金月額8万8000円に拡大されましたが、2022年7月発行の本なのにそこが具体的に説明されていない(37ページ)というのは、どうかと思います。
そういった弁護士が書く場合のような専門性・詳細さはありませんが、現実に遭遇しそうな問題にとりあえず対応するという点では、わかりやすい本だろうと思います。
三谷文夫 ワン・パブリッシング 2022年7月10日発行