伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く

2007-07-16 09:56:01 | ノンフィクション
 オシム監督下のジェフのゲームのレポートをベースにオシム監督の戦術を解説した本。
 ジェフ時代のオシム監督の戦術は、基本的に相手のフォーメーションに対応した布陣でマンマークで対応し1人リベロを余らせてボールを奪取したらすぐマーク相手を置き去りにしてカウンターに走り3人目4人目が走り込んで数的優位を創る、理想としてはトータル・フットボール(しかし、「実現することはできない」ともオシムは言っている:24頁)、そのためには圧倒的な運動量と賢く走ることが必要というもの。
 おおかたそういう内容のことを、過去のジェフのゲームを素材に個々の局面で具体的に説明するというのがこの本の勘所。それが有効に機能している面もありますが、どちらかというと過去の観戦記の2次利用の色彩が強く、イビチャ・オシムがやめた後のアマル・オシム監督下のゲームまで使っているのは、ジェフファンのマニア本・嘆き節という感じもします。内容から見ても、出すのなら(読むのなら)代表監督就任直後にすべきだったでしょうね。


西部謙司 双葉社 2007年4月30日発行
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売ったり買ったり はじめての株

2007-07-15 08:24:52 | 実用書・ビジネス書
 普通の人が比較的安全に少しずつお金を増やすという目的で株を買うための入門書。
 株を買わせることを当然に考えているので、預貯金などの元本保証の場合でもノーリスクではない(銀行倒産がなくてもインフレや円安で価値が減って損をするリスクはある)ことを強調して、ハイリスクへの抵抗感を減らす方向に話が行くのはちょっと要警戒。
 しかし、普通の人が投資する場合には、リターンをわずかに殖やすために努力するより、「手間をかけない」「時間をかけない」「心理的な負担をかけない」を重視する方がいい(51頁)とか、底値で買うことを考えるな(181頁)、完全に上昇トレンドになったと見えてから買っても遅くない(179頁)というアドヴァイスはよさそう。
 「手間をかけない」が専門家に任せましょうになるとまた危ない話になりがちですが、情報は自分で調べて自分で判断が基本(208頁)だそうですから、本自体の姿勢は穏当に思えます。もちろん、そこは「自己責任」の問題ですが。


ノマディック 中経文庫 2007年6月5日発行
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アパルーサの決闘

2007-07-14 08:38:32 | 小説
 無法者の牧場主が牛耳る町アパルーサにやってきた流れ者の保安官2人組の闘いを描いたウェスタン小説。
 超人的に速いガンマンだがときとして傍若無人になる保安官ヴァージル・コール、飄々としていて女好きだが腕のいいコールの助手エヴェレット・ヒッチ、コールを虜にした悪女アリソン・フレンチらの人物造形がよくできています。コールが単純な正義でもなく、流れ者で生きてきながらアリーに夢中になり定着しようとする心理の動きも出てくるあたりや、アリーの悪女ぶりとそれでもアリーを捨てられないコールのもどかしさ・陰影が、物語に深みを持たせています。
 ラストはちょっとほろ苦く、ちょっと渋めのウェスタンになっています。


原題:APPALOOSA
ロバート・B・パーカー 訳:山本博
早川書房 2007年6月15日発行 (原書は2005年)
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「現代病」ドライマウスを治す

2007-07-14 00:47:08 | 自然科学・工学系
 口の中が乾く口腔乾燥症についての本。
 唾液の分泌が減少することでドライマウスになるわけですが、その原因はいろいろなものがあるようです。薬の副作用による場合が相当あり(88~99頁)、安易に薬を出す医療の問題も指摘されています。
 唾液には消化作用、殺菌作用、粘膜保護作用、粘膜修復作用、歯の保護・再石灰化作用があるそうです(45~54頁)。消化、殺菌、再石灰化はよく読みますが、粘膜関係の話は知りませんでした。まあ、口の中の傷は治りが早いということは経験的にわかりますが。唾液の分泌を促進することが老化の防止にも役立つということで、ドライマウスの治療が体の様々な機能にも影響するのだそうです。ビタミンCとか、錠剤で飲むよりもガムの形で噛む方が吸収率がいい(170~171頁)というのも知りませんでした。ドライマウスそのものよりも唾液や口の粘膜の話が勉強になりました。


斎藤一郎 講談社+α新書 2007年5月21日発行
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How to 生活保護 [2007年度版]

2007-07-12 07:38:00 | 人文・社会科学系
 自治体の福祉課等の職員やソーシャルワーカーらが書いた生活保護のあるべき姿と実情の解説書。
 分担執筆のため、パートによって温度差がありますが、基本的には、今の生活保護制度が行政の裁量を広く認めていることで本来生活保護を受けてしかるべき人が申請をあきらめざるを得なくされている、昨今の「自立支援」と称する改革で生活保護がさらに受けにくくなっているという現状に批判的なトーンです。
 生活保護の資力調査(ミーンズテスト)の屈辱感とかよく指摘されますが、52頁からの説例での手続の流れの解説がわかりやすくて生活保護申請のイメージを持てました。この説例では申請者がきまじめで行政側も熱意がある人なので、実際にはもっと厳しいんじゃないかと思いますけどね。
 知らなかったんですけど、国民健康保険(自営業者とか)の加入者が生活保護を受給すると資格を喪失して、医療扶助の場合全額国庫負担になるのですが、資産が売却できたとかで返還請求されるときはその10割負担分を返さなくちゃならない、しかも意識不明状態で急迫のため職権で保護を開始したときなど本人の意思確認もないままそういう扱いをすることになる(14~15頁)って、かなりひどい。生活保護を受けなきゃ3割自己負担なのに、勝手に10割負担しておいてそれを後から請求されるなんて。


東京ソーシャルワーク編 現代書館 2007年5月20日発行
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グーグルを仕事で活用する本

2007-07-11 07:24:16 | 実用書・ビジネス書
 Gメールや、グーグルがサービスするウェブアプリケーションで文書を共有してネット上で共同作業したりするテクニックを解説した本。
 Gメールを利用していないので、ちょっとイメージしにくいところもありましたけど、共同作業で共有者全員が文書を編集できてどの段階にも戻せるというのは魅力的に思えました。
 グーグルトークのチャットが、自動的にGメールに記録されて残る(159頁)というのは、とても便利で、でもちょっと怖い。


山路達也、井上健語 秀和システム 2007年6月8日発行
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LOVE LOGIC 密と罰

2007-07-10 08:05:12 | 小説
 会員制恋人紹介クラブから招かれた10人が、制限時間内に自分と相手の提出したデータから理想の相手と決められた相手を正しく判別しないと殺されるという極限の事態に追い込まれ、知恵を絞って話し合うというストーリーの小説。
 後半はコンピュータゲームのパターンで、それぞれの局面での選択肢に従って次に進むページが示され、不正解に達する(登場人物が殺害される)と「BAD END」として元のページに戻されます。後半はページを行ったり来たりの方に忙殺されますし、戻されながら似たような話を読んでいくうちに読み飛ばすようになって、細部には集中しにくくて、本を読んでいるというよりゲームをしている感じ。
 設定も荒唐無稽で、「正解」に至った後語られる登場人物たちの「秘密」もそれがあるから今回のことを人に話せないというほどでもないし、その「秘密」をどうやって組織が知ったかもわからないし、終わり方も唐突で、エッこれで終わり?という感じ。まあ、ページを間違いなく指定する技術というか、本にするときに苦労したであろうことはわかりますけど。


清流院流水 角川書店 2007年4月30日
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Self-Reference ENGINE

2007-07-09 07:50:07 | 物語・ファンタジー・SF
 3世紀ほど未来の人類と「巨大知性体」と名付けられた人工知能が、おそらくはビッグ・バンのような事態を指す「イベント」により捩れてしまった時空を元に戻そうとする様子を1つの軸としつつ、種々のエピソードを錯綜させたSF。
 エピソードも登場人物もつながっているようなつながっていないような感じで、ストーリーとして読み切れる感じがしません。時折語り手として現れる「私」の正体も立ち位置も、最後の自己紹介を読んでも、何か釈然としませんし。
 観念的な、その上修辞的で饒舌な語りにあふれていますし、多次元宇宙の時空の流れやその破壊、演算と修正(書き換え)が語られたり、つながっていない感じのするエピソードの錯綜で登場人物のアイデンティティが怪しくなっていきます。私は、そういうアイデンティティクライシスというかアイデンティティの怪しげさがテーマと読みました。
 ともすれば「単語だけが暴走を始めた言葉遊び」(93頁)になりそうな語りに満ちたこの作品は、ぶん投げたくなる観念論と評価するか知的で新鮮な文学と評価するか、好みが別れるでしょう。ダイアナ・ウィン・ジョーンズがサラサラ読める人には好まれそう。唐突に人を食ったように登場するアルファ・ケンタウリ星人(163頁)とべらんめえ調の巨大知性体八丁堀(210頁)は、観念的すぎるとまずいと大衆受けを狙ったのかも知れませんが。


円城塔 ハヤカワSFシリーズJコレクション 2007年5月25日発行
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晴れたらライカ、雨ならデジカメ

2007-07-08 08:42:12 | エッセイ
 晴れの日に芸術写真を撮るには銀塩写真(ライカ)、雨の日や日常の記録にはデジカメという使い分けを勧める写真家のカメラとライカへの愛着を語るエッセイ。
 前書きには「この本は実用書だ」(頁)と書かれていますが、写真のテクニックとか書かれているところは最初の方のごくわずかだし、前中盤は1項目きっちり見開き2ページで書かれていて項目間がつながってなかったりかぶってたり、初出の表示はありませんがどこかに書いたエッセイをまとめたもののように見えます。
 本の本筋には関係ないんですが、まず引き受けたくないものは一に「民間の裁判員」で、二に「駐車違反監視員」、三に「公共放送の料金徴収員」、そして四に「ボランティアの結婚式スナップカメラマン」である(32頁)って・・・。ここでは結婚式の記念撮影を頼まれたくないということをいうために挙げられているのですが、それよりいやなものの筆頭として裁判員が挙げられているのはすごい。まだ制度も実施されていなくて誰一人なった人はいないのにこの嫌がられよう。やっぱり民から遠い人たちがこねくり回した司法改革が生み出した裁判員制度は無理があるかと、司法と全然関係ない本でまで考えさせられてしまいます。


田中長徳 岩波書店 2007年6月1日発行
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インターネット消費者相談Q&A(第2版)

2007-07-07 08:20:05 | 実用書・ビジネス書
 インターネットオークションやショッピング、ウェッブ上の名誉毀損や情報流出、「ネットワークビジネス」、架空請求等のインターネットでよく問題となるトラブルについてのQ&A。
 弁護士が読む分にはさらっと読めて納得できます。しかし、弁護士が書いた法律解説書にありがちなように、法律用語がそのまま出てくるし、抽象的に書いて条文を引用するパターンがけっこうある(その条文は巻末に掲載されてはいますが)ので、「被害にあわれた消費者の方々に利用していただける」(前書き)にはちょっと厳しいかと思います。
 それに頻繁に犯罪になるという表現が出てきて、それ自体は誤りじゃないんですが、一般の方が読んだら告訴すれば警察が相手を逮捕してくれると思って相談に来るだろうなあと予測される部分がけっこうあります。理屈上は犯罪になっても実際には警察が動かないケースが相当あるわけで、そのあたりもっと慎重に書いた方がいいんじゃないかなと老婆心ながら感じてしまいます。私は、告訴の依頼は基本的には受けないことにしていますので知りませんけど。


第二東京弁護士会消費者問題対策委員会編 民事法研究会
2007年4月28日発行 (初版2002年)
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