goo blog サービス終了のお知らせ 

伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

参勤交代の真相

2017-02-04 21:24:17 | 人文・社会科学系
 江戸幕府の大名統制制度の参勤交代について、その実情、費用、制度化と幕末の消滅の経緯などを解説した本。
 一方で莫大な支出に苦しみながら、大名行列の規模や衣装、先頭の槍持ち奴のパフォーマンスなどによる大名の格の誇示に執着し、国元と江戸では行列の人数を増やし衣装も派手なものとするなどしていた様子や、大名行列が重なるときのトラブル(格下側が譲歩させられプライドを傷つけられる)を避けるための配慮、天候、特に増水による川留めによる宿泊・人足費用の増加や宿の手配・キャンセル費用など、悲喜こもごもの様子が興味深く読めます。
 江戸城で大名が将軍に拝謁する際、将軍が現れる前に先払いの御坊主衆が「おー」とか「しー」と声をかけ、それであたりが一瞬のうちに静まり、この場面に遭遇した欧米人はカルチャーショックを受けたとか(169~170ページ)。「しーっ」って、そういう歴史のある言葉だったのか…
 参勤交代の大名行列の費用だけで藩の支出の5~10%を占めたとか(197ページ)。それが江戸と宿場町・街道筋に与えた経済効果も大きかったと考えられ、特異で合理性に欠ける制度ではあるものの江戸の経済を支える仕組みになっていたり、いろいろ考えさせられるところがありました。


安藤優一郎 徳間文庫カレッジ 2016年9月15日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「あきらめる」のが上手な人、下手な人

2017-02-01 21:56:27 | エッセイ
 過去の経緯や決定、他人との比較や意地から方向転換ができないことの愚かさを説き、「あきらめ」て損害を最小限にとどめて出直すなどした方がいいということを勧める人生論・処世術の本。
 過去の努力や投資が無駄になることを恐れて方向転換ができないという事態は、よく見られます。ここまで頑張ったんだからと、引き返せなくなって傷を深めるというやつ。損切り・見切りができるかという話ですね。私は、基本的に、これまでにどれだけのものをつぎ込んだかよりも、これから先続けることのメリットとデメリットを重視して決めることにしていますので、これから先続けるのがものすごく疲れるもので、続けることで得られるメリットが少なくて自分の価値観としてそれほどの意味を見いだせないことなら、過去にどれだけの労力をかけていても関係なくあっさりやめます(仕事だと、契約した範囲はよほどのことがなければ終わりまでやりますけど、その範囲が終われば、次の契約をするかの段階では過去には囚われません)。そういうあたりの話では、著者の意見と同感ですし、実践できていると思います。
 しかし、ビジネス書にありがちですが、「あきらめる」というキーワードで多くのものというか何でもかんでも語ろうとしすぎて、メッセージがごちゃごちゃしているような印象もあります。「あきらめる」のは、何かを実現するためで、大きなものをあきらめないために、目の前のものをあきらめるということであったり、二兎を追えないから片方はあきらめろということで、そこでは「あきらめない」ことに意味が見いだされたりしているわけです。その何をあきらめ、何をあきらめないかの選択が大事なのに、そこがきちんと語られていないというか、ポリシーが見えにくいように感じるのです。
 また、女性については結婚か仕事かの二者択一を論じたり、正しいことの自己主張をするのではなく長い物には巻かれろと諭したり、旧世代の支配構造に都合のいい傾向を持つ本でもあります。
 「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て妻としたしむ」という啄木の歌を引いて、足るを知るを説くのは共感します。友がみなわれよりえらく見ゆる日以外でも、妻と親しみたいと思いますけど。


斎藤茂太 角川文庫 2014年8月25日発行(単行本は2009年9月)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする