伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

すごい物理学講義

2020-04-17 20:09:39 | 自然科学・工学系
 「ループ量子重力理論」という量子力学の学説のうち日本ではマイナーな立場(日本では「超ひも理論」が圧倒的にメジャー)の第一人者による宇宙論を中心とした物理学の歴史と先端の解説書。
 すべて(時空間も電磁場も物質も:文字通りこの世に存在するものすべて)が粒子の性質を持つ(非連続の特定の値/スペクトルを持つ)量子で満たされた「量子場」であるという「ループ量子重力理論」(これまでほとんど聞いたことがなかったんですが)の立場から、古代ギリシャのデモクリトスの原子論の偉大さが語られ、キリスト教支配下の停滞・後退を経て、ニュートンとともに、電場・磁場において力を運ぶ/媒介する「ファラデー力線」の提唱を重視し、その後相対性理論と量子力学へとつなぐ物理学の発展を説明する前半は、ポピュラーな説明のようでいながら、デモクリトスとファラデーの重視が目につきます。空間が何もない入れ物ではなく、粒子の性質を持つ量子が詰まっている(というよりも量子の集合体そのものである)という自説へのつながりを導くために特にこの2人の存在を強調しているのだと、後になって気づきます。空間が粒子/量子で満たされているという著者の主張は、かつて光が到達するのに媒質がないということは考えられないとして宇宙空間は物質(エーテル:「銀河鉄道999」の…ではありません/それはメーテル)で満たされているとした今では顧みられなくなった考えとどう違うのでしょうか。その極小の量子(いちばん小さな原子核の10億分の1の10億分の1だそうです:219ページ)で宇宙が満たされている(量子の集合した量子場が宇宙そのものである)としたら、「膨張する宇宙」では、量子が膨張しているのでしょうか(あらゆるものの体積は連続的には変化できず、特定の値/スペクトルを持つとすると、その膨張は非連続に起きるのでしょうか)、それとも量子が増えるのでしょうか。もちろん、ループ量子重力理論の第一人者である著者は当然に答を持っているのでしょうけれども、裏表紙には「これほどわかりやすく、これほど感動的な物理本はなかった」とされている一般向けの本で、読んでいてごくふつうに感じるそういう疑問が解説されていないのは、欲求不満が残ります。
 裏表紙の紹介とは裏腹に、量子力学をめぐる記述は、やはり難解というか、腑に落ちません。量子は他の量子に影響を与えるときしか存在しないという説明(156~158ページ等)は、量子力学の基礎的な前提/概念とされますが、それはやはり「存在しない」のではなく私たちの観察力/観測方法の限界/欠如により認識できないだけなのではないのでしょうか。私が高校生の時、講談社のブルーバックスで相対性理論の解説を読んで感激し、続いて勇んで量子力学の本を読んだら頭がこんがらがって投げ出して以来、量子力学には、いつまで経っても苦手意識とうさんくささを感じ続けています。リチャード・ファインマンが「量子力学を本当に理解している人間は、この世にひとりもいないと言っていいと思う」と言っているという紹介(182ページ)には、ホッとしますが。


原題:La realta non e come ci appare
カルロ・ロヴェッリ 訳:栗原俊秀 監訳:竹内薫
河出文庫 2019年12月20日発行(単行本は2017年、原書は2014年)
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自由に楽しむ! スナップ写真入門

2020-04-16 19:53:47 | 趣味の本・暇つぶし本
 コンパクトデジカメで撮るスナップ写真の撮り方、見せ方などについて書いた本。
 基本的には、技術的なことに囚われずに自由に撮りたい時に撮りたい対象を撮りましょうというスタンスです。「街を撮るというより、街で撮りながら自分の気持ちを写真化するための視線で街を歩くということなのです」(76ページ)、「いわゆるフォトジェニックとされるものでなければカメラアイが働かない人は、スナップ写真向きじゃないですね。というより『写真』を理解できないのではないかと思います」(80ページ)という自由な着想、センスが推奨されています。
 人物の撮影に関して、「たとえばその人が仕事をさぼってそこにいた、あるいはカップルがじつは不倫関係だったというようなことであれば、重大問題になってしまいます」(120ページ)、「車のナンバーだけでなく、写されたものが公表されて被写体である人が迷惑を蒙ると思われるシーンは撮らないことです」(127ページ)などと、Q&A形式で諭しています。「スマホによるマナー違反が写真を撮る人すべての問題とされるようになったことから写真愛好家の撮る自由が狭められつつあるのですね」(115ページ)などと、素人がマナーを気にせずに撮るから自分たちプロが迷惑しているというような論調が鼻につきます。もちろん、世の中には自己中な人がいますから、そういう面もありますが、この本にも、被写体の承諾を得て撮ったとはとても考えられない写真で顔が十分に判別できる写真が多数掲載されています。他人に対しては/素人に対しては、被写体が迷惑かも知れないとか写っているカップルが不倫関係だったらどうするなどと講釈を垂れながら、今どきそういう写真を公表できる感覚は、私には理解できません(自分もそういう間違いを犯しているかも知れないから大きなことは言えないが、というのならまだしも)。写真の撮り方については、構えずに自由にやればいいと、緩いスタンスで語る著者が、Chapter3「気持ちよくスナップ写真を撮るために」のQ&Aになると途端に上から目線でマナーの悪い素人をたしなめるというあたりの論調の変化が興ざめでした(被写体のプライバシーとか迷惑の話は、正しいというか、著者の姿勢よりももっと気をつけるべきだと思いますけど)。


丹野清志 玄光社MOOK 2020年2月27日発行
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アール・ヌーヴォーの華 アルフォンス・ミュシャ

2020-04-15 21:49:53 | 趣味の本・暇つぶし本
 アルフォンス・ミュシャの挿絵、リトグラフ、デッサンを中心に、作品とミュシャの画業について解説した本。
 リトグラフに関しては、著名な作品の大半が網羅されていますが、この本で紹介されている作品のほとんどが堺アルフォンス・ミュシャ館の所蔵という点に驚かされます。リトグラフだから多数印刷できるしされたからではありますが、「カメラのドイ」創業者がアルフォンス・ミュシャの作品を買いあさり、世界でも有数のコレクションとなったのが寄贈されて堺アルフォンス・ミュシャ館ができたというのは知りませんでした。
 ミュシャを時代の寵児にしたポスターは、フランスの舞台女優サラ・ベルナールを描き宣伝するものでしたが、当時サラ・ベルナールが50歳になっていたこと、ミュシャの前にポスターを描いていたウジェーヌ・グラッセが写実的に過ぎてサラに嫌われたらしきこと(40~41ページ)などは、「ジスモンダ」(27ページ。未見の方は、是非実物を見て欲しい。ほぼ等身大の大きさ、色使いのセンスの良さなど、ミュシャが圧倒的な支持を受けたことが納得できます)に描かれた麗しいサラから想像しにくい事情です。
 装飾的な表現が特色のミュシャが、自然そのもののデッサンとディテールの重要性を言い、モデルのポーズや衣装のしわに実際との違いがあってはならないと考え、モデルを見ずに絵を描くことはなかった(103ページ)というのも意外でした。
 それほど詳しい長文の説明はないのですが、いろいろと気づかされることの多い本でした。


堺アルフォンス・ミュシャ館編著 講談社 2020年1月22日発行
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Q&A改正民事執行法の実務 弁護士が知っておくべき改正のポイント

2020-04-13 20:11:39 | 実用書・ビジネス書
 2020年4月1日施行の民事執行法改正の改正点である債務者の財産開示手続の拡充と第三者からの情報取得手続の新設、不動産競売からの暴力団排除、子の引渡の強制執行手続の整備、差押命令の職権取消と差押禁止範囲変更の活性化(債務者への告知等)について、改正の内容と改正の経緯等を解説した本。
 弁護士グループが書いた本なのですが、改正を担当した官僚が書いた解説本のような内容で、改正前の問題点(改正の必要性)と改正の過程での議論の内容(改正の経緯)と改正結果はわかりますが、弁護士であればいちばん知りたい、改正前の実務の実情と現場での工夫、ノウハウ、改正後はそれがどのように変化するのか、改正後はどのような手続で何に注意して何を準備して申立をすればスムーズに手続が進むのか、改正後も注意すべきポイントはどこかといった、本当のノウハウ部分への言及はほとんどありません。サブタイトルの「弁護士が知っておくべき改正のポイント」は、弁護士が知りたいポイントではなく、改正に関与した関係者が弁護士に理解してもらいたいと思うポイントを意味しているかのようです。
 記載内容としても、Q&A形式の「実務本」にありがちですが、通し読みではなくそのQだけを読むという想定で、同じことが何度も繰り返されています。それもそのQが執行事件で弁護士が本当に知りたいQになっているのならいいのですが、これまたこの種の本にありがちなことですが、執筆者側が説明したい項目をQにしているだけで、率直に言えば、Q&Aにしないで通し読みすることを想定した解説本にすれば(重複をなくすことで)半分かそれ以下の厚さにできたと思います(それではブックレットレベルの厚さになってしまうので、あえて無駄にQ&Aにしたのではないかと勘ぐってしまいます)。
 子の引渡の執行をめぐっては、ハーグ条約実施法で手続規定があり、民事執行法には規定がなかったのを今回の改正で整備するにあたり、ハーグ条約実施法に規定がある間接強制前置(直接強制の執行は原則として違反に対する金銭支払を命じる「間接強制」をやってからでないと申し立てられない)、同時存在原則(執行官による強制執行は子が子の引渡を命じられている債務者:通常は片親とともにいる際でないとできない)、執行場所は原則として債務者宅などを、民事執行法改正で採用するか否かが問題となりました。この本では、改正の過程での議論で、民事執行法の場合ハーグ条約の場合(国外に連れ出した子をまずは元の国に戻せ)とは違って、子の引渡を命じる裁判の際に子の福祉・子の利益を裁判所が十分考慮して決定しているから違っていい(ハーグ条約実施法のような制約は不要だ)という意見があったことを度々紹介しています(126ページ、133~134ページ、157ページなど)。ところが、今回の民事執行法改正でハーグ条約実施法と異なる規定をした点について、ハーグ条約実施法もそれに合わせて改正されています(171~176ページ)。そこを通して読むと、ハーグ条約実施法とは条件・利益状況が違うからハーグ条約実施法とは異なる規定でいいんだという議論をてこに、民事執行法を改正し、その民事執行法の規定に合わせてハーグ条約実施法の方も変えてしまったということに読めて、何とも気持ちが悪い、騙されているような狐につままれたようなたちの悪い役人が策を弄したような後味の悪さを感じます。分担執筆している執筆者たちはそういう点に目が向かないのかも知れませんが、もう少し統一感のある説明があってしかるべきだと思います。


東京弁護士会法友会編 ぎょうせい 2020年2月15日発行
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2020-04-09 20:52:23 | 小説
 父親の会社の都合でアメリカに赴任する際に同僚だった母親も離職して5歳の娘とともに同道し、3年後に父親が帰国する際に、アメリカに残りジャーナリストになりたいという母親を残して父親とともに帰国した森田窓香が中学2年生になった時、アメリカから1年前に死んだ母のノートが送られてきて、その中に母の思いが綴られているのを読んだ窓香の思考と行動の変化を描いた小説。
 自立を志向し、ジャーナリストを志望して、戦地に赴き、戦争に蹂躙される子どもたちの惨状を綴る母の姿とそれを読む窓香の様子を描く前半は、柔らかめの語り口で中学生に戦争の現実を読ませ、考えさせる趣向で、「岩波ジュニア新書」と見まごう内容です。しかし、母親は、ウガンダ、コソボ、アフガニスタンを取材して回るうちに、体力的にも、そして精神的にも疲弊していき、自分には合わないとして挫折し、コロラド高原に感傷旅行に出てナバホの語り部と出会い物語の創作に自らの活路を見いだしていきます。自立を志向した女性をそのまま自立させずに挫折させ、しかしそれでもいいじゃないと、娘に母の生き方を肯定させるのが、小手鞠流なのでしょう。私は、娘に母の生き様を見せるのならば、母が闘いきりそれを誇りに思う物語の方が読んでいてすがすがしく、子どもに希望を与えやすいと思いますが、現実社会では思い半ばに倒れる方が多く、結果を出せなかったとしても志したこと自体が尊いではないかと讃えた方がいいという価値判断もあっていいということなんでしょう。


小手鞠るい 小学館 2020年2月9日発行
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あの日に消えたエヴァ

2020-04-08 14:06:46 | 小説
 小学校からの幼なじみで同棲中の恋人にプロポーズした夜に目の前でその恋人を見知らぬ男たちに輪姦され、そのまま恋人は行方不明になり、大学を中退して職を転々としていたヴェルネルが、友人ブリツキからフェイスブックにエヴァの写真が掲載されていたと言われて、エヴァを探し始めるが、フェイスブックの写真はアカウントごと削除され、ブリツキは殺害されて、ヴェルネルはブリツキが見つけた探偵社の支援を得ながら逃走するが…という展開のミステリー。
 解説で「ミステリに『意外な展開』と『騙される快感』を求める読者は、本書を絶対に読み逃してはならない」(506ページ)と書かれているように、意外な展開があり驚かされ(やや違和感を残しながらではありますが)騙されるとは思います。それは、巧いとは思うのですが、結局は、いちばん知りたいと思うところは謎のままに残されてもやっとしたものが残ります。
 女性に対する暴力が、全体を通じてのテーマになっていて、読後感は重苦しい。あぁ騙されたということでスカッとする作品ではありません。女性に対する暴力、大がかりな陰謀、天才ハッカー的な女性の登場という要素は、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』を連想させますが、『ミレニアム』がフェミニズム志向を強く打ち出して闘う女を肯定的に描き、国・行政を陰謀の側に置いてそれを糾弾しているのに対して、この作品は重苦しさと哀しさを基調とし、国はあくまで正しい側に置かれています。『ミレニアム』のような飛び抜けた評価はどちら側からも受けにくいと思いますが、その分、より現実的と評価すべきではありましょう。


原題:NIEODNALEZIONA
レミギウシュ・ムルス 訳:佐々木申子
小学館文庫 2020年2月11日発行(原書は2018年)
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すしのサイエンス

2020-04-04 00:06:30 | 趣味の本・暇つぶし本
 さまざまな鮨ネタの特質や旬、捌き・仕込み方法などを解説した本。
 釜で炊いたご飯は、上部は乾燥気味、下部は上部の飯粒の重みで押しつぶされて扁平になっているので、釜の中で飯粒がしっかりと形を保ちふっくらと仕上がっているのは中部の飯粒だけで、「鮨たかはし」(この本の技術指導をしている職人さんの店)ではそこだけを使うとか(121ページ)。知りませんでしたが、高級店ではそういうことまで気をつかっているんだという感心と、食品廃棄が社会問題になっていても偉いさんが行く店ではそんなこと気にもかけないんだという驚きが半ばします。
 「鮨たかはし」ならではという紹介が多々あり、鮨について知見を深めるというよりも、このお店のPR色が強く感じられます。
 文章はフリーライターに書かせ、学者さんが監修者として名前を出し、技術指導の職人さんの写真が目につきますが、今どき珍しく思えるのですが、写真撮影者のクレジットがありません…あ、よくよく探したら奥付にとても目立たない、ふつう見落とすだろうというレベルの記載がありました(@_@)。鮨の写真が、撮影技術的には問題ないと思うんですが、私には、今ひとつおいしそうに見えません。おいしそうに撮ろうという意欲、執念がないのかなと思うのですが、そこはそういうこの本の制作姿勢が関係しているのかなと思えました。


技術指導 髙橋潤
監修 佐藤秀美
文 土田美登世
誠文堂新光社 2020年2月20日発行
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EU離脱 イギリスとヨーロッパの地殻変動

2020-04-03 21:22:06 | ノンフィクション
 2016年6月23日のイギリスの国民投票で離脱派が勝利した後、2020年1月末の正式離脱に至るまでのイギリスのEU離脱(Brexit:ブレグジット。Britainとexitを掛け合わせた造語)の経過、主としてその混乱と困惑を解説した本。
 単一市場としてのEUを背景に、EU内でさまざまな例外的処遇(単一通貨ユーロや国境管理の不参加、拠出金での優遇等)を受けつつ、実力以上の影響力を行使してきた(113~114ページ)イギリスが、EUにおいて不遇であり不利益を受けてきたという被害者意識を持って、経済合理性に反するEU離脱を、「主権を取り戻す」などという聞こえのいい幻想的なスローガンに踊らされて決定し、最終的に実行していったことは、まさしく学ぶべき歴史的教訓といえるでしょう。
 ブレグジットの過程で、国民投票の結果を、自己の信念とは逆でも実務的に実現しようとしたテリーザ・メイ首相が進退窮まって辞任した後、威勢の良さを売りに選挙戦を制した強行離脱派のボリス・ジョンソンについて、「ジョンソンは、2016年の国民投票キャンペーンでも2019年の保守党党首選挙でも、根拠のない発言、あるいは明白なウソを繰り返し、メディアからは批判されたものの、それでも勝利したのである」、「指導者の発言の中のウソが判明しても、それが支持率に影響しない構造だともいえる。それは、支持者がそうした指導者に対して発言内容の正確さや品行方正さをそもそも期待していないために起こることである」(84ページ)などと書かれているのは、まさしく今の日本のことのよう。まったく無内容の「日本を取り戻す」なんていうスローガンに踊らされて投票した人が多いことも含め、誠実さのかけらもないポピュリストに踊らされて不合理な選択をした日本は、イギリスの選択を他人事として笑うことはできないというべきでしょう。
 EUがめざす価値体系として「ヨーロッパの生活様式」を挙げ、汚染が少なく持続可能な環境のなかで、安全な食品を口にし、正当な条件のもとで就労することを保証するのがヨーロッパの価値だと紹介しています(244ページ)。より単純化していえば、社会的弱者の権利・自由と平等を重んずるのがEUの方向性、社会的強者の権利・自由と自己責任を重んずるのがアメリカ、特にトランプのアメリカと、それに追随して過去の弱者保護の規制・制度を破壊し続ける安倍政権下の日本と分類できます。イギリスが、ナショナリズムの世論に負けて、EUの価値観からアメリカ的な価値観へとすり寄ろうとすることは大変残念に思えます。


鶴岡路人 ちくま新書 2020年2月10日発行
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