一度無様に挫折したランナー加納碧李が天才ランナー三堂貢と走った地方の記録会で自己ベストの記録で復活し、その碧李の肉薄に何かを感じた貢が碧李との再戦を意識し…という展開をするシリーズ第4作完結編。
「ランナー」が2007年、「スパイクス ランナー2」が2011年、「レーン ランナー3」が2013年で、この作品は2018年発表。単行本が出たときには気がつかず、文庫本が今年出たのに初めて気がついて、予約しました。11年越しのシリーズ完結、ではありますが…
作者の出世作「バッテリー」と同様の、一見スポーツがテーマのように見せながら、スポーツではなくスポーツをする人(青年)を題材にして周囲との人間関係や自分(自意識)への鬱屈した感情とそのスポーツをする意味を自問する心理を描く青春小説です。世界一のランナーになれる(レーン ランナー3 文庫版29ページ)、日本記録まで塗り替えちまうかもしれない天才(同104ページ)、世界に挑む、挑んで勝ってみせる(同233ページ)なんていう天才アスリートを登場させながら、大舞台には立たせない、大きな試合を絶対に描かないというひねくれたスタイルが貫かれています。読者の期待を裏切るという狙いではなく(「バッテリー」を読んだ読者なら、この作者にその期待は最初から持たないでしょうから:私は、2013年7月3日の「レーン ランナー3」の記事で予想/予言していました)、「作風」なんでしょうね。
前作(シリーズ第3作)から、主人公2人ではなく主人公の友人、碧李の所属する東部第一高校陸上部のマネージャー久遠信哉と貢の従兄弟の清都学園新聞部坂田光喜のおしゃべりで持たせる場面が多いのも、「バッテリー」同様です。
私には、この作品のコンセプトは、ライバル力石徹の命を奪ってしまい挫折した矢吹丈が、天才ボクサーカーロス・リベラと出会って復活し、カーロスとの闘いはエキシビション・マッチで互いに打ち合う喜びに目覚めて試合の枠を踏み越えていく…というのを思い起こさせます。
心理描写としては、青春小説としては、読ませる作品なんですが。
あさのあつこ 幻冬舎文庫 2021年6月10日発行(単行本は2018年10月)
「ランナー」が2007年、「スパイクス ランナー2」が2011年、「レーン ランナー3」が2013年で、この作品は2018年発表。単行本が出たときには気がつかず、文庫本が今年出たのに初めて気がついて、予約しました。11年越しのシリーズ完結、ではありますが…
作者の出世作「バッテリー」と同様の、一見スポーツがテーマのように見せながら、スポーツではなくスポーツをする人(青年)を題材にして周囲との人間関係や自分(自意識)への鬱屈した感情とそのスポーツをする意味を自問する心理を描く青春小説です。世界一のランナーになれる(レーン ランナー3 文庫版29ページ)、日本記録まで塗り替えちまうかもしれない天才(同104ページ)、世界に挑む、挑んで勝ってみせる(同233ページ)なんていう天才アスリートを登場させながら、大舞台には立たせない、大きな試合を絶対に描かないというひねくれたスタイルが貫かれています。読者の期待を裏切るという狙いではなく(「バッテリー」を読んだ読者なら、この作者にその期待は最初から持たないでしょうから:私は、2013年7月3日の「レーン ランナー3」の記事で予想/予言していました)、「作風」なんでしょうね。
前作(シリーズ第3作)から、主人公2人ではなく主人公の友人、碧李の所属する東部第一高校陸上部のマネージャー久遠信哉と貢の従兄弟の清都学園新聞部坂田光喜のおしゃべりで持たせる場面が多いのも、「バッテリー」同様です。
私には、この作品のコンセプトは、ライバル力石徹の命を奪ってしまい挫折した矢吹丈が、天才ボクサーカーロス・リベラと出会って復活し、カーロスとの闘いはエキシビション・マッチで互いに打ち合う喜びに目覚めて試合の枠を踏み越えていく…というのを思い起こさせます。
心理描写としては、青春小説としては、読ませる作品なんですが。
あさのあつこ 幻冬舎文庫 2021年6月10日発行(単行本は2018年10月)