1.NHKのニュースで次のように報道された。
【http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150507/k10010072021000.html】
神奈川県の箱根山で6日火口周辺警報が発表されたことを受けて、箱根町は7日、地元のホテルや旅館の組合と今後の対応を協議し、気象庁などの情報を観光客に的確に提供して不安を解消していくことを確認しました。
気象庁が6日、箱根山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを「レベル1」から「レベル2」に引き上げたことを受けて、箱根町では基幹産業の観光業への影響を懸念する声が出ています。
このため町は7日、ホテルや旅館で作る「箱根温泉旅館協同組合」の代表者らと会合を開き、今後の対応について協議しました。この中で山口昇士町長が「今後、火山活動がどう影響するかが心配で、対策について意見交換したい」と述べました。
会合では町と組合が協力して気象庁や県が発表するデータなどの情報を観光客に的確に提供することで、不安を解消していくことを確認したということです。会合のあと山口町長は「火口周辺警報の範囲は町のごく一部で、住民も普通の生活をしていることを訴えながら、今後予想される風評被害を払拭していきたい」と話していました。
まず箱根町長の発言と云われるものについて。
箱根町の経済活動からすると死活問題である今回の事態であることは理解できる。しかしまずは大きな被害、特に人的被害が出てしまってはいけない、これが大前提である。
そして「気象庁や県が発表するデータなどの情報を観光客に的確に提供することで、不安を解消していく」。これは行政としてもっとも重要なことであり、是非しっかりやってもらいたいものである。その上で立ち入り禁止区域への立ち入りを規制することと、常時その区域の見直し等(特に拡大)や、防災体制、連絡体制の確保などキチンとしてもらいたい。
だが一方で「火口周辺警報の範囲は町のごく一部で、住民も普通の生活をしていることを訴えながら、今後予想される風評被害を払拭していきたい」というのが私にはよく理解できなかった。NHKもここを踏み込んで報道すべきであると思った。
「火口周辺警報の範囲」とは、まず言葉としてもよく理解できない。さらにこの「範囲」とは誰がいつ指定したものなのか。町も加わって県と協議したのではないのか。とするとこの「範囲」の根拠は何なのか、ということが大切なのだが、この間の報道では何も語られていない。県や町のホームページにもこの根拠が私が見た限りでは示されていない。
蔵王山などの方が活動の実態は小規模だが、範囲は御釜の周辺1キロを超えていると聞いている。活動が活発で人口密度、観光客も多いところでこの300メートルの根拠が是非知りたいものである。
【http://www.town.hakone.kanagawa.jp/hakone_j/content/000031044.pdf】
また温泉施設維持管理のために働く人を特別に禁止区域内に入れているが、災害防止の観点からこれを認めた「科学的根拠」が不明ではないか。特攻精神で人を働かせてはいけない。
同時に「今後予想される風評被害を払拭していきたい」という表現だが、「町民」が被害者で、キャンセルしたり訪れなくなる「観光客」が加害者のような表現に思えるのは私だけであろうか。「町民」も「観光客」もともに自然災害を前にした被害者である。
観光という大きな経済的な損失が控えている中で、外野から軽々には言えないことは承知をしているが、噴火、有毒ガス噴出、地震等に伴う人的被害や巨大な物的損失は、観光という経済的損失よりも優先的に回避しなくてはいけないのである。当面の経済的損失に眼が向けられ過ぎていないか。またそれに伴って人的被害回避の方策が遅れてはいないか、私はとても危惧している。
マスコミはそこを是非取り扱ってほしい。風評被害というのは、科学的根拠がキチンとあるにもかかわらず、またあり得ない客観的状況下で繰り広げられる集団心理とそれを鵜呑みにする感性である。それを回避するのは町長自身が最初に述べた「的確に(情報を)提供すること」に尽きるはずである。町長が責任者となって取られた今回の措置が本当に科学的に根拠があることなのか、明らかにしてほしいと思う。
2.また神奈川県知事のメッセージがホームページに掲載されている。
【http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p905509.html】
知事からのメッセージ
箱根山に火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)が出されました。人的被害ゼロ、風評被害ゼロを目指すため、きめ細かで正確な情報を丁寧に提供し続けるよう命じました。
1月には私自身も鹿児島を訪問し、桜島の火山対策を徹底研究するなど、神奈川県は県温泉地学研究所とともに、以前より箱根火山の噴火対策をしっかりとやってきています。
特に御嶽山の噴火を受けて、対策の具体化を加速させてきています。つい先日、4月28日も大涌谷周辺で情報伝達訓練を行ったばかりでした。
箱根は広いです。警戒情報の対象地域は一部です。県が発信する情報をご覧いただいた上で、冷静に対応して下さい。
神奈川県知事 黒岩 祐治
この黒岩知事のメッセージについて。
第1段は先の箱根町長の町の会合での発言と同様、私も異存はない。行政として当然のことである。
第2段、知事が直接鹿児島を訪れ対策について実見されたことは評価している。しかし個人のことと、県という組織のこれまでの実績とがごちゃ混ぜになって成り立っている文章である。これは二つに分けて客観的に記述してもらわなければいけない。できれば個人の手柄のはなしではなく、組織として何をしてきたか、を記載してもらいたいものである。個人プレーで災害は克服できない。
第3段、活動が活発になった26日を過ぎてから情報伝達訓練をしたことは、あまりに遅い対応である。4月26日以降知事が県の組織に対してどのような具体的な指示・命令を出したか示してもらいたい。
たとえば温泉地学研究所への指示、町との協議、周辺自治体との協議、国との連絡体制確保、災害発生時の対応、危険区域内の作業のあり方等について‥どのように具体的に対応したか、これが述べられていない。
そして最後の段落、これはとてもわかりにくい情緒的な文章である。「箱根は広いです。警戒情報の対象地域は一部です。」何を言っているか不明の小学生のような文章ではないか?
「警戒情報の対象地域」まずこの言葉の定義がはっきりしない。普通には「警戒区域」「立ち入り規制区域」等なのか、災害時こそキチンとした情報伝達、わかりやすい情報発信が必要なことは前提である。
そして先も述べたが、ここでも300メートルの根拠がわからない。
また温泉地学研究所の情報は貴重であり、地震の情報は表示されていることは評価できる。しかしその解釈・評価、あるいは県や町がとった処置・規制等の根拠とどのように連携しているか、わかりにくいものがある。
今の時点で、しかもネットでの限られた情報でしか判断できないもどかしさがあるが、わかりにく状況であることははっきりしている。風評被害という前にキチンとした情報発信について、もっと努力の余地があるような気がする。
【http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150507/k10010072021000.html】
神奈川県の箱根山で6日火口周辺警報が発表されたことを受けて、箱根町は7日、地元のホテルや旅館の組合と今後の対応を協議し、気象庁などの情報を観光客に的確に提供して不安を解消していくことを確認しました。
気象庁が6日、箱根山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを「レベル1」から「レベル2」に引き上げたことを受けて、箱根町では基幹産業の観光業への影響を懸念する声が出ています。
このため町は7日、ホテルや旅館で作る「箱根温泉旅館協同組合」の代表者らと会合を開き、今後の対応について協議しました。この中で山口昇士町長が「今後、火山活動がどう影響するかが心配で、対策について意見交換したい」と述べました。
会合では町と組合が協力して気象庁や県が発表するデータなどの情報を観光客に的確に提供することで、不安を解消していくことを確認したということです。会合のあと山口町長は「火口周辺警報の範囲は町のごく一部で、住民も普通の生活をしていることを訴えながら、今後予想される風評被害を払拭していきたい」と話していました。
まず箱根町長の発言と云われるものについて。
箱根町の経済活動からすると死活問題である今回の事態であることは理解できる。しかしまずは大きな被害、特に人的被害が出てしまってはいけない、これが大前提である。
そして「気象庁や県が発表するデータなどの情報を観光客に的確に提供することで、不安を解消していく」。これは行政としてもっとも重要なことであり、是非しっかりやってもらいたいものである。その上で立ち入り禁止区域への立ち入りを規制することと、常時その区域の見直し等(特に拡大)や、防災体制、連絡体制の確保などキチンとしてもらいたい。
だが一方で「火口周辺警報の範囲は町のごく一部で、住民も普通の生活をしていることを訴えながら、今後予想される風評被害を払拭していきたい」というのが私にはよく理解できなかった。NHKもここを踏み込んで報道すべきであると思った。
「火口周辺警報の範囲」とは、まず言葉としてもよく理解できない。さらにこの「範囲」とは誰がいつ指定したものなのか。町も加わって県と協議したのではないのか。とするとこの「範囲」の根拠は何なのか、ということが大切なのだが、この間の報道では何も語られていない。県や町のホームページにもこの根拠が私が見た限りでは示されていない。
蔵王山などの方が活動の実態は小規模だが、範囲は御釜の周辺1キロを超えていると聞いている。活動が活発で人口密度、観光客も多いところでこの300メートルの根拠が是非知りたいものである。
【http://www.town.hakone.kanagawa.jp/hakone_j/content/000031044.pdf】
また温泉施設維持管理のために働く人を特別に禁止区域内に入れているが、災害防止の観点からこれを認めた「科学的根拠」が不明ではないか。特攻精神で人を働かせてはいけない。
同時に「今後予想される風評被害を払拭していきたい」という表現だが、「町民」が被害者で、キャンセルしたり訪れなくなる「観光客」が加害者のような表現に思えるのは私だけであろうか。「町民」も「観光客」もともに自然災害を前にした被害者である。
観光という大きな経済的な損失が控えている中で、外野から軽々には言えないことは承知をしているが、噴火、有毒ガス噴出、地震等に伴う人的被害や巨大な物的損失は、観光という経済的損失よりも優先的に回避しなくてはいけないのである。当面の経済的損失に眼が向けられ過ぎていないか。またそれに伴って人的被害回避の方策が遅れてはいないか、私はとても危惧している。
マスコミはそこを是非取り扱ってほしい。風評被害というのは、科学的根拠がキチンとあるにもかかわらず、またあり得ない客観的状況下で繰り広げられる集団心理とそれを鵜呑みにする感性である。それを回避するのは町長自身が最初に述べた「的確に(情報を)提供すること」に尽きるはずである。町長が責任者となって取られた今回の措置が本当に科学的に根拠があることなのか、明らかにしてほしいと思う。
2.また神奈川県知事のメッセージがホームページに掲載されている。
【http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p905509.html】
知事からのメッセージ
箱根山に火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)が出されました。人的被害ゼロ、風評被害ゼロを目指すため、きめ細かで正確な情報を丁寧に提供し続けるよう命じました。
1月には私自身も鹿児島を訪問し、桜島の火山対策を徹底研究するなど、神奈川県は県温泉地学研究所とともに、以前より箱根火山の噴火対策をしっかりとやってきています。
特に御嶽山の噴火を受けて、対策の具体化を加速させてきています。つい先日、4月28日も大涌谷周辺で情報伝達訓練を行ったばかりでした。
箱根は広いです。警戒情報の対象地域は一部です。県が発信する情報をご覧いただいた上で、冷静に対応して下さい。
神奈川県知事 黒岩 祐治
この黒岩知事のメッセージについて。
第1段は先の箱根町長の町の会合での発言と同様、私も異存はない。行政として当然のことである。
第2段、知事が直接鹿児島を訪れ対策について実見されたことは評価している。しかし個人のことと、県という組織のこれまでの実績とがごちゃ混ぜになって成り立っている文章である。これは二つに分けて客観的に記述してもらわなければいけない。できれば個人の手柄のはなしではなく、組織として何をしてきたか、を記載してもらいたいものである。個人プレーで災害は克服できない。
第3段、活動が活発になった26日を過ぎてから情報伝達訓練をしたことは、あまりに遅い対応である。4月26日以降知事が県の組織に対してどのような具体的な指示・命令を出したか示してもらいたい。
たとえば温泉地学研究所への指示、町との協議、周辺自治体との協議、国との連絡体制確保、災害発生時の対応、危険区域内の作業のあり方等について‥どのように具体的に対応したか、これが述べられていない。
そして最後の段落、これはとてもわかりにくい情緒的な文章である。「箱根は広いです。警戒情報の対象地域は一部です。」何を言っているか不明の小学生のような文章ではないか?
「警戒情報の対象地域」まずこの言葉の定義がはっきりしない。普通には「警戒区域」「立ち入り規制区域」等なのか、災害時こそキチンとした情報伝達、わかりやすい情報発信が必要なことは前提である。
そして先も述べたが、ここでも300メートルの根拠がわからない。
また温泉地学研究所の情報は貴重であり、地震の情報は表示されていることは評価できる。しかしその解釈・評価、あるいは県や町がとった処置・規制等の根拠とどのように連携しているか、わかりにくいものがある。
今の時点で、しかもネットでの限られた情報でしか判断できないもどかしさがあるが、わかりにく状況であることははっきりしている。風評被害という前にキチンとした情報発信について、もっと努力の余地があるような気がする。