私の衝撃を受けた作品のひとつを今でも覚えている。19歳の私にはまったく知らない世界と認識があった。
黒い港
血糊のあとはまだ消えない
昨夜も黒人兵が射殺された
ふつ、ふつ、ふつ、ふつ
ふつ、ふつ、ふつ、ふつ
コンクリートの声をあげて
波はたえまなく打っているが
汽笛ひとつ鳴らさずに
この港からは毎日
二隻ずつ輸送船がコーリアにむけて
出て行く
腹部に二発、肩に一発
まだぴくぴく動いている死骸を
ジープは一瞬のうちに
運んでいったが
彼等は脱走しない方が
よかったのだ
いくら戦争がきらいでも
むしろ逃げないで
同僚たちとともに
なんにもいわず玄界灘を
渡ったほうがよかったのだ
そうすれば、あるいは、
そんな無惨なめにあわずに
すんだろう
血痕のあとはまだ消えず
この街の昼は夜よりも悲しい
だけどまだ逃亡兵をかくまう
バラックさえ
そのバラックの抵抗さえ
芽生えていないのだ
白いひらひらみえるのは
一晩だけのジャパニーズ恋人の
握るハンカチ
貂蝉へ、貂蝉へ
死にたくない涙をいっぱいうかべて
黒い貨物船は今日もでていく
黒い港
血糊のあとはまだ消えない
昨夜も黒人兵が射殺された
ふつ、ふつ、ふつ、ふつ
ふつ、ふつ、ふつ、ふつ
コンクリートの声をあげて
波はたえまなく打っているが
汽笛ひとつ鳴らさずに
この港からは毎日
二隻ずつ輸送船がコーリアにむけて
出て行く
腹部に二発、肩に一発
まだぴくぴく動いている死骸を
ジープは一瞬のうちに
運んでいったが
彼等は脱走しない方が
よかったのだ
いくら戦争がきらいでも
むしろ逃げないで
同僚たちとともに
なんにもいわず玄界灘を
渡ったほうがよかったのだ
そうすれば、あるいは、
そんな無惨なめにあわずに
すんだろう
血痕のあとはまだ消えず
この街の昼は夜よりも悲しい
だけどまだ逃亡兵をかくまう
バラックさえ
そのバラックの抵抗さえ
芽生えていないのだ
白いひらひらみえるのは
一晩だけのジャパニーズ恋人の
握るハンカチ
貂蝉へ、貂蝉へ
死にたくない涙をいっぱいうかべて
黒い貨物船は今日もでていく