Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「図書8月号」(岩波書店)から 3

2018年08月02日 23時14分01秒 | 読書
・雨のなか、マリが赤のミアータを洗っていた    冨原眞弓
「イェテボリは映画祭の街である。‥いまや450作を上映し、16万人の観客を動員する北欧最大の映画祭である。最優秀北欧映画賞(ドラゴン・アワード)、長編ドキュメンタリー賞、ベルイマン新人賞など、いくつかのカテゴリーに分かれ、マニアックな映画ファンにも人気がある。ドラゴン・アワードに与えられる百万クローナ(1300万円)は、映画賞には破格の金額らしく、時に話題になる。ただ、受賞関係者への報奨金というより、配給支援または次作の制作支援の意味合いが強い。‥数百万人単位の人口しかいない北欧諸国では、映画にかぎらず、文化的な営為一般は、私的・公的な経済支援がないと立ち行かない。「お金は出すが、口も+ってことにならない?」「出さないわよ!スポンサーじゃないのよ、メセナなんだから!」‥スポンサーには商業的な、メセナには公共的なニュアンスがある、‥。」


「図書8月号」(岩波書店)から 2

2018年08月02日 11時06分55秒 | 読書
・湯川秀樹、戦中から戦後へ        小沼通二

・アメリカン・ジャーナリズムの仕事    若林 恵

・熊楠が見出した体系のない学問      細谷 剛
「明治政府による神社合祀に反対する意見を述べたもので、森林の伐採が取り返しのつかない生物絶滅を招くこと、もとから多神教であった日本において神社を統合・整理すれば、日本人の精神世界をも破壊する恐れがあること、神社合祀が汚職などを招いていることなどを、それまでフィールドで得た動植物の生態の知識や、民俗学の知識を総動員して例示し、強く反対している。‥「神社合祀反対運動」は環境保護のさきがけともされる。」

・ほとけの形見              桐谷美香

・冒険者たち-サン・テグジュペリ「夜間飛行」   柳 広司
「代表作といわれる『星の王子さま』は、彼の搭乗機が墜落し、砂漠を水なしで三日間さまよった際の死を前にした美しい幻想だ。“小さな王子”が語り手の幻想であることは冒頭の防止のエピソードによって暗示されている。‥初めて読んだ時に感じた妙な違和感の正体に思い当たった。『星の王子さま』の作者は目の前の読者を相手にしていない。こっちを見ているようで見ていない。宮沢賢治の童話を読んでいても同じように感じることがあって、時々、作者はどこか遠い場所を見ている。読者とはまるで異なる遠近感で物語を紡いでいる‥。彼らが見ているのは、例えば“銀河の果て”であり、その世界では人が普通に生きているこは不可能-といった辺りが妙な違和感につながっている‥。」

・大きな字で書くこと 安岡章太郎さん   加藤典洋

・アナとかボルとか、「私」とか「我々」とか   プレディみかこ
「金子文子は「我々」ではなかったからだ。彼女は常に「私」だった。そもそも無籍者として国家の枠からこぼれたところで育ったし、家庭にも、格好にも、職場にも、まともに属したことがない。‥殴り込みだ何だと水面でばしゃばしゃ水しぶきを上げる朴とは対照的に、彼女はひとり深く水中に潜る。潜って水面を見上げながら、しんと澄んだ頭で考え始める。」

・風土記博物誌 拒む女          三浦佑之
「地方の女は貢がれる存在(采女など)であり、天皇自らが求婚する対象ではないのではないか。それを地方の側から言えば、服属の証しとしてむすめや妹を差し出される存在であり、求婚されて受諾するという、ある種対等な関係には置かれていなかったのではないか。それゆえに、天皇の求婚を拒もうとすれば、死以外にはなかった。しかもそれは伝承のなかでだけ可能な意思表示だったのかもしれない。」

・雨のなか、マリが赤のミアータを洗っていた    冨原眞弓