★冬薔薇石の天使に石の羽 中村草田男
★冬薔薇紅く咲かんと黒みもつ 細見綾子
★孤高とはくれなゐ深き冬の薔薇 金久美智子
昔、「薔薇絡むレリーフの目の深き彫り」という俳句を作ったことがある。第1句を目にしたとき、恥ずかしながら習いたてのころに作った自分のこの句を思い出した。
外国人墓地にあった胸像をそのまま詠んだ句であねが、海のかなたに向いた顔に、帰れなかった、あるいは捨てた故郷を見つめているようにも感じた。「深き」にそれを込めたつもりだった。しかしこの句のように「石の天使に石の羽」という突き放したような表現にはかなわないと思えた。
石にされた悲劇の「天使」と見るのか、希望を託された「石の羽」と見るのか、さまざまな場面を類推できる。そして「顔」が隠されている。不思議だが、いろいろと想像をたくましくさせてくれる。このような句がいいと思う時と、そのにように感じない時がある。
第2句、第3句、冬に紅い花を咲かそうという生命力というのに圧倒される。そのエネルギーというか執念というのに惹かれる。