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コロンブス 永遠の海 (2007/ポルトガル=仏)(マノエル・デ・オリヴェイラ) 80点

2010-06-23 13:23:22 | 映画遍歴
ゆったりと流れる雲、海、そして船。人類は過去小さな国ポルトガルから世界を目指して5大陸を探求する航海に出た。500年ほど前の大昔だ。ジェット機も、ガソリンも何もない人間、自らが船を漕いで航海していた時代だ。

コロンブスがポルトガル人であるかどうかは、実際は【オリヴェイラ】にとってはどうでもいいことなのだと思う。高齢のため明日をも知れない人間にとって、たゆやかな海の動き、流れる雲、それらを見つめるだけで生きてきた人生を知ることはできる。そしてその目論見は達成されている。

であるからして、風景を捉えるワンシーンのゆったりとした時間。素晴らしい雲。それらはすなわち【オリヴェイラ】の、生涯見残すことなく脳裏にとどめようとする意思の映像シャッターでもある。迫り来る青い波も明日見られるものでもないのかもしれない。そんなゆったりとした映像ではあるものの、人生最後の見届けを策す映像が我々の前に展開されていく。

人間がふと今までの人生を一瞬にして思う時、何を思い浮かべるだろうか、、。

自分の一生のこと。家族のこと。そして今目の前にある空、海、木々、雲を見るだろう。そしてオリヴェイラはそれにとどまらずポルトガルという小国から全世界をまるで望遠鏡のように見届けた。

この映画は自分の死の床で人間が最後に見る走馬灯とも言える。だからして、血縁者を出演者にしたのだと思う。映画鑑賞後、あの老夫婦がオリヴェイラ夫妻だということを知る。若き日の医師とさすがよく似ていましたね。

こういう個人的な遺書を映画で堂々とやってのけるオリヴェイラはやはりスゴイ。でも見方によっては1800円で見ることのできる南欧の光と海という観光映画だと採る人もいるだろう。そういうオリヴェイラ一流の洒落もこの映画にはありますね。

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