鹿児島市五ヶ別府町の山あいの民家の庭に、樹齢100年を超える山桜の古木があり、毎年見物に訪れている。
庭の隅にあり、家を見下ろして立つその山桜は、毎年3月中頃満開の美しい花を咲かせる。
ご主人に何度かお会いし、この山桜はご主人のおじいさんが植えたものであると教えてくれた。
家の正面にも樹齢30年位の山桜が6~7本あり、これも毎年きれいな花を咲かせるが、これは古木の子であることも聞いた。
庭には様々な花が咲き乱れ、本当に花が好きなご夫婦だと感心していた。
去年の3月には奥様とお会いし、いろいろ話をうかがった。
その中で奥様が、自分はガンであると打ち明けられた。
今年の3月、妻とその妹の3人で見物に行った。
カメラマンと音声係の二人が撮影をしており、「NHKです」とあいさつされた。
私に「お話を聞いてもいいですか」と言うので取材を受けた。
山桜の古木をバックに
「このような満開の山桜をご覧になって、どう思われますか」
「桃源郷のようなところだと思っています」
などという会話を撮影された。
妻とその妹も取材を受け、妻は
「元気をもらいますね」
などと答えていた。
「桜のところを歩いてもらえますか」
と言われ、家の前の桜の下を3人で歩く様子も撮影された。
その時のことは、夕方のローカル放送の「妻の愛した山桜」という特集で放送された。
ご主人の日常や桜を見に来る人達が映され、私が取材を受ける様子も映された。
そして、奥様が半年前に亡くなられたことを知った。
ご主人が、家の前の山桜は妻が植えたものであると話していた。
奥様は、私に自分はガンであると言った時、もしかして
「この桜を見るのは最後かもしれない」
と思われたのではないだろうか。
ご主人は、これからこの桜の花を見るたびに、奥様のことを想われることだろう。
庭の隅の山桜の古木。
奥様が植えられた家の前の山桜。
取材を受ける妻とその妹。
去年の3月訪れて、奥様と話をした時の記事はこちらです。