現代において情報が重要である、などという話をしたら、当たり前を通り越して馬鹿にされるのがオチだろう。とは言いながら、具体的に情報やそれを元にしたトレンドが作られていく過程をプロがわかりやすく開陳してくれることは早々ない。その意味において、この動画であるとか小口日出彦の著作「情報参謀」は興味深いものである。「悪名は無名に勝る」といったことや「わかりやすさ」の重要性はドナルド=トランプの場合にも当てはまる話で、まさに今こそ広く見られるべき内容となっている(連邦政府=既存の政治体制への不信が強くなっている現状のアメリカで、目新しさのないブッシュ弟などが早急に消え、様々な意味で「新しい」トランプが生き残ったことは象徴的だ)。
さて、この動画では国内の選挙戦略がメインに扱われているが、このような戦略を発表しようと筆者が考えた契機として、韓国の情報・外交戦略があったと言及されている。アメリカはベトナム戦争で、メディアの恐ろしさとコントロールの必要性を痛感したことも有名な話だ。しかるに、日本のインテリジェンス活動はどうか?元々日本は情報戦に弱い(重視する意思が希薄)と言われてきたが、「誠実さ」があればいずれ相手はわかってくれる、などという認識はごくごく内輪でしか通用しない論理だ(同僚に戦中日本の国内情報統制を研究していた人がいるが、 その辺の話も今度じっくり聞いてみたいものである)。その意味で、このような戦略の在り方をより多くの人が認識するのは善きことであると思われる。ただ、そのような高度な領域以前に、日本の場合は1952年まで学校に存在していた「言語」のような授業を復活させるべきだろう。これはアナウンサーが喋る場面を生徒に見せて「この人はどういう背景でこのような発言をしていますか?」といった質問を投げかけて考えさせるものだが、こういった訓練を日常からしておかないと、いきなりメディアリテラシーが重要とか、情報の取捨選択をせよとか言っても無理筋というものである(ここに手当をすることなしに、情報を鵜呑みにするか真逆に陰謀論に没入する人たちを批判しても、全く無意味としか言いようがない)。
それはともかく・・・ここで述べられている戦略を踏まえれば、民進党がやっている与党の政策批判も必然的なものであると理解できるが、大きく期待を裏切った政党という記憶が新しいこと、ネットで情報がすでに氾濫していることが相まって、何を言ってもすぐに「ブーメラン」となってしまい、支持に繋げることができていないように思える(与党の政策批判は野党としては当然の行動だが、それがしばしばダメージになっていること、そして何より自民党がゴリゴリの自由放任ではなく再配分を担ってきた部分もあるため、それとの有効な違いを打ち出せていないところが厳しい。この部分を徹底的に追及せねばならないという点で自民党が政権に返り咲いた時よりよほど困難な状況で、しかしそれをクリアしなければこの政党に未来はないだろう)。
憲法の位置づけや放送法の解釈など含め、安倍政権に様々な問題があることは今さら指摘するまでもないのだが、このオルタナティブなき状況では、しばらく(少なくとも)自民党政権が続くのは避けられないだろう。
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