うみねこの魔女への挑戦:何を推理するのか?

2007-08-27 01:02:37 | ゲームよろず
※以下うみねこのネタバレをやや含んでいる(ひぐらしも同様)。未プレイでゲームのイメージを固定したくない人は読まない方がいいかもしれない。なお、画像の著作権は07th Expansionに属します。


さて、予告どおりうみねこの推理編に入る前に、推理の前提となる部分、すなわち「そもそも何を推理するのか?」という点に触れておきたい。


ひぐらしをプレイした人なら意識しているとは思うが、ひぐらしは「お疲れ様会」の中で「祟り派」と「人為派」に分かれて議論をさせるという行為をやっており、この形式はうみねこでも踏襲されている。しかし大きく違うのは、「人為派」は戦人ただ一人であり、残りは全員ベアトリーチェの存在を認めている、それどころか全てが彼女の仕業だと考えてさえいるところだ(「祟り派」)。このアンバランスさは本編の殺害方法を考慮すれば至極当然なのだが、さらにはプレイヤーの視点が一人に固定されていないことから、ひぐらしのように個人の異常な視点(=症候群)と見なすのが難しいことも「祟り派」優位に拍車をかけている(※)。


こうも人為派に不利な状況であり、かつジャケットに「推理は可能か、不可能か。」と書かれ、さらには「魔女に屈するのか?」といった煽り文句まであれば、当然一つの流れとして(あえて)全てを人為で説明しようとする、つまり「人為100%」で考えることに挑戦する人たちが出てくるのは想像に難くない。彼らにとって要するに推理とは、いかにして(オカルトなしに)人為100%を論理的に説明するかであり、「魔女に屈」しないというのは魔女の存在を認めないことに他ならない。しかし、本当にそのアプローチは正しいのだろうか?


こう言うと、人によっては「まずは人為100%を前提に考えてみるだけで、それに縛られるわけではない」と反論するかもしれない。しかしそれなりにひぐらし掲示板の書き込みとその変遷を見てきた俺の立場としては、そういう柔軟性を自分にあまり期待しない方がいいとだけ言っておこう。一つの思考実験(試論)のつもりが、いつの間にかその論を守るための根拠付けに汲々とし他の可能性に目が行かなくなっている、そんな例を一体どれだけ見てきたことか……まだ一話目で物語の土台さえ固まっていない現段階では、安易に前提を作り出すのは危険極まりない。ひぐらし鬼編の内容からオカルト混入が存在していることを論理的に推測していた立場としては、そのように思う。


少し話が逸れてしまったが、そもそも「何を」推理するのかという問題に戻ると、実はよく考えたとき、ここでの推理が「祟りor人為」≒「犯人を捜すor魔女の仕業として諦める」という二者択一とは限らないことに気付くのではないだろうか。「魔女に屈服しない」と聞けば、(Tea Partyの様子から言っても)あたかも魔女の存在を認めない態度であるかのような印象を受けるけれども、単純に「魔女に負けない」ともとれるだろう。もしこの見方が正しければ、彼女の「利子回収」より先に碑文の謎を解くこともまた魔女に屈服しないことであり、かつ立派な推理であると言えるのだ。


この推理の二重の意味に気付いてみると、ますます「祟りvs人為」という前提にたって人為100%を証明するというのが「推理」だという考えは危険に思えてくる。ひぐらしが人為とオカルト(祟り)の融合であったように、うみねこもまたそうでないとはどうして言えようか(※2)。


うみねこが人為100%しか認めない人たちを挑発しているのは明らかだが、少なくとも俺はそれに乗る気は無い。材料がある程度出揃ってもいないのに、どうして事件の枠組みを白か黒かで論じることなどできようか。今はただ、「なぜそうなるのかわからない現象や言動」、つまりは違和感の萌芽を取り上げ、それを丹念に考えることこそが重要なのである(問題意識の発掘と分析)。よって次回、いくつかの違和感の断片を取り上げ、それがなぜ問題なのか、どんな可能性が考えられるのかを論じていこうと思う。



もちろん、ベアトリーチェが「信じれば存在する」とでも言いたげな麻里亜たちの話から考えると、いわゆる集団幻想の可能性は捨てきれないところだ。よって幻想的な黄金の蝶などと関連して分析する必要はあるが、それは次回以降の記事に譲りたい。


※2
ついでに言うと、うみねこはオカルトが「何でもあり」ではないという防衛線をしっかり張っている。これはひぐらしの批判を意識したことの他にもいくつか理由が想定されるが、機会があれば別のところで述べたい。

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