セレン龍月の契約解除:海外リスナーの反発にはどのような背景があるのか?

2024-02-12 11:54:18 | Vtuber関連

 

 

 

 

 

 

このタイミングでどのテーマについて書こうかしばし悩んだが、「大手メディア不信と週刊誌報道への期待」に絡め「信頼」という視点でセレン龍月とにじさんじ(EN)のことを取り上げてみたいと思う。

 

で、まず最初に言っておくと、私はセレン龍月の配信を一度も見たことがなく、あくまでにじさんじが契約解除に到った経緯の説明(→にじさんじENによるXの公式声明)と冒頭の動画、そしてそれなりに内容がまとまったいくつかの海外勢のコメントを参照しただけである。よって、この記事は何かしら新規の情報を出すことを目的にしているわけではないし、またどちらかの側に立った発信をするつもりもない・・・

 

というより、双方のことをよく知らん😅と言えば、「なら始めから書くなや」とお𠮟りを受けるかもしれないが、逆に引いた視点の目線だからこそ書ける(書きやすい)こともあるんでねーの?とあれこれ見て思ったんで、まあ徒然なるままに言及してみんとてするなり、という次第。

 

まず大前提として言えそうなのは、

1.セレン龍月の契約解除を批判している人たちの矛先は、基本として「にじさんじEN」である

2.その背景には、同グループからの諸々の卒業とその対応に絡む積もり積もった不信がある

という部分だろう。特に1を間違えると、日本のリスナーとの反応の差異がよくわからなくなるため、非常に重要であることを強調しておきたい。

 

で、日本のリスナーは、基本的に「にじさんじJP」というフィルターを通して今回の事態を見ていると思われ、そうすると、にじさんじJPについての印象は、

A:Vtuber界の古参かつ大手で、ここまで積み重ねてきた信頼がある

B:法的には比較的クリーンな会社(働きやすいかはまた別の話だが)

というイメージを概ね共有していることが大きいと思われる。長くなるので詳細は省くが、例えばホロライブが権利関係で一度大きな問題となって慌てて対応したのと違い、そういう目立った問題は見られず、また所属ライバーに関する性的な発言をしないよう指導が入ったりと、(Vtuber業界の中では)コンプライアンス意識が強い傾向があり、むしろ「縛りが強い」環境とすら言えるかもしれない(誤解を恐れずに言えば、「illegalには程遠いが、それは必ずしもcruelでないことを意味しない」という感じか)。

 

ゆえに、

C:その「にじさんじグループ」があれだけ詳細な声明を出しているのだから、そこまでおかしな事は言ってないだろう

という推測が割と自然に成立するわけだ。もちろん、これはあくまで冒頭の動画のコメントや私の印象を重ねながら大雑把に言っているだけなのでグラデーションはあるだろうが、大きくは外れてないと思われる。この点、「合法的かもしれないが冷たい組織」のような印象とは両立しうる、という反論はありえるにしても、文野環(その気まぐれさはまさに野良猫の化身w)やギルザレンⅢ世(配信しろ!w)など反証を容易に挙げることができるので、その意見が大きくなる可能性は低いのではないだろうか(まあ新規リスナーの中には、両者をそもそも知らんという人もいるだろうけど)。

 

さて、そのようA~Cの感覚でいくと、セレン龍月の契約解除に対する反発は、いかにも「タレントを妄信し過ぎ」のように見えるし、またそれがタレントに対する観念の違いに由来する=「文化的な差異」なのか?といった発想・疑念が出てくるのも、多少は無理からぬことと言える(まあそういった曖昧な視点で考えるくらいなら、むしろ契約の発想や労働者の権利含めた法社会学なんかの面を掘り下げた方がまだ実りがあるとは思うけど→「社畜ジャパン」の口コミなどを参照)。しかし、批判の対象・背景がセレン龍月の属する「にじさんじENというbrunch」へのものだとすればどうだろうか?

 

まず少なくとも、にじさんじENに対する海外リスナーの信頼度は、にじさんじJPが(主に)日本人リスナーと培ってきた信頼関係(関係性の履歴)よりは薄い。それは単純に年数(ENは2021年結成なので当然JPより新しい)のこともあるし、さらに言えば海外グループをKR・IDと潰してきた「実績」もあるだろう(もちろん、利益が見込めない部門をクローズすること自体は企業として当然の対応と言える点は注記しておきたい)。さらに、卒業の多さはにじさんじ全体に言えることではあるが、ENは32名とJPより母数が少ない中で、(一部はあれこれ揉めた上での)諸々の卒業があったことにより、端的に言って「使い捨てInc.」のようなイメージを持たれているのではないかと予測される。

 

と言っても、あまりピンと来ないと思うので、ここで日本の事例を元に考えてみたい。まず、にじさんじのバラエティ性(人数の多さと多様性)はドミナント戦略とよく言われるが、そこからコンビニとフランチャイズの関係を想像することは難しくないだろう。さてその両者の関係はと言うと、本部は「焼き畑農業」をしながら利益を搾取し、個人事業主(フランチャイジー)として参入した人々は看板こそもらえるが、次々と店舗数ばかり増えていって食い合いが起こり、また数も多いためサポートが行きわたらずオーナーたちの奴隷労働状態が生じ、一部を除けば自転車操業の中で疲弊・脱落していく構造に批判が相次いでいる(そもそも数百メートルの範囲にコンビニが3軒とかあっても社会的公益性はゼロだしね)。実はこのフランチャイズの仕組みがある程度有効に機能していた時期もあるのだが、店舗数の無駄な増加や人件費の高騰によって、もはやよほどの好立地でないと安定的に回していくのが困難な状況になっていると言えるだろう。

 

 

 

 

で、これをにじさんじに当てはめてみるとよい。実はにじさんじJPにしてからも、コロナ禍の一時期はやたらめったらにデビューだけさせまくって、当然レッドオーシャン化が急速に進む業界でそんなやり方が上手くいくはずもなく、微妙な登録者数・再生回数で止まって次々と芽が出ないまま卒業なんてケースが見られた。さらに「すでにスキルのある即戦力を求めている」という募集要項を出して、例えば花畑チャイカ(所属ライバー)などにも「ふーん、育てる気ないんですかねえ」という趣旨の揶揄をされるという状況があって、完全に先のコンビニフランチャイズ的な形態になってしまっていたと言える。おそらく、その反省により育成を行うVTA(配信未経験者OK)を設立したのではあるが、2023年にそこから大量の退学者(解雇)を出したことは記憶に新しい・・・という状況である。

 

「いやいやちょっと待て。ちゃんと育成はやろうと方向転換をしてはいるし、あくまでVTAの件はにじさんじのコンプライアンスの厳しさを示す一件であり、腐敗とみなすには違うだろう!」という声も聞こえてきそうだ。なるほど、そこに私も異議を唱えるつもりはない。少なくともその程度には、私もまたにじさんじ(JP)の運営に信頼を置いているからだ。しかし、繰り返すが「にじさんじENに対する海外リスナーの眼差し」はどうか?

 

そしてここで、2023年に噴出した、ジャニーズ問題、ビッグモーター、ダイハツ、大手マスメディア、吉本興業、宝塚etcetc・・・という腐敗した閉鎖的組織の不祥事曝露とその隠蔽工作、及びそれへの世間の反応を想起したい。例えばもっか批判の目にさらされている日テレや小学館が、『セクシー田中さん』のドラマ化に際しては「ちゃんとした手続きで対応しました」と発表したことに対し、それを「大企業がそう言っているなら正しいに違いない」などと思っただろうか?これはそもそも訃報へのお悔やみに自分たちのエクスキュースを入れる間抜けさと姑息さで火に油を注いだ面もあるが、ともあれ事態が全く沈静化していないどころか、不信感を生んで「第三者委員会を設置せよ!」などとさらに批判を受けている状態であるのはご存じの通りだ(Business Journalの「日テレと小学館、頑なに経緯説明を拒絶し最悪の結果…第三者委員会は不可避」などを参照)。

 

この背景には、程度の差こそあれ、テレビや新聞への不信感が完全に定着したことが大きい。まあ権力や利権について批判的報道ができず、むしろ一体となって保身に走る特権的組織なんだからそりゃそーだって話で、今や日々それを悪化させながら、何か批判したとしてもブーメランでさらに自分たちが火だるまになる状態なのである。

 

で、そんな連中が「合法的にやりました」と訴えても、「何か都合の悪いことを隠しているんじゃないか!?」と全く信用してもらえん状態になるのは容易に理解されるわけで、「セレン龍月の契約解除を批判している人たちにとってのにじさんじEN」は、今やそのポジションになっており、かつ問題はその数が結構いるってことなんじゃないか?と思うわけである(にじさんじENがそこまでmaliceを持ったevilな存在かと言われれば、さすがに疑わしいと私は思う。ただ海外リスナーの反応については、あり体に言えば「日本のリスナーと見えているものが違うんじゃね?」って話で、それは必ずしも応援するライバーが卒業したのが悲しい・許せないといったバイアスだけが要因とは言えないんじゃないか、てこと)。

 

さて、この見立てがある程度正しいならば、必要なことは事実説明以上に信頼回復なのだけれども、実はこれが相当難しいように思う。その大きな理由の一つは、にじさんじの「運営者が見えない構造」である。ちょっとわかりにくいかもしれないので、以前書いたホロライブの夜空メルの契約解除とその対応を例に挙げたい・・・と思ったが、ここまででかなりの分量になったので、その部分は次回に譲ることとしたい。


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2 コメント

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Unknown ('v')
2024-02-13 04:02:37
>双方のことをよく知らん😅と言えば、「なら始めから書くなや」とお𠮟りを受けるかもしれないが

まさにその通りなんですが、
詳しくも無いのに口出したがる人って見当はずれな事しか言ってなくて
発言内容が読む価値ゼロなんですよね
拾った上辺の情報だけで偏見だけで語って勝手にジャッジして
批判して気分良くなってるだけだという

自分はこんな事思ってると言いたい=自慢したいになってるんですよね
的外れな事しか言ってなくて恥かいてるだけなのに
返信する
「外野は黙ってろ」 (ゴルゴン)
2024-02-14 12:18:52
コメントありがとうございます。

おっしゃる話、一つの意見としてよくわかります。私も様々な書き込みとかを見て、「わからないなら、もう少し調べてから書けばいいのでは?」と思うことが多いので。

まあ今回の場合は、ANYCOLORとセレン龍月氏のどちらの立場の意見が正しい・正しくないではなく、なぜ話が割れている両者の意見について、日本と海外のリスナー(という二項対立もややミスリーディングですが)でここまで反応が大きく異なるのかが一つの現象として興味深かったので、取り上げさせていただいた次第です。

なお、その観点で当該記事のどのあたりが「的外れ」と感じられたのか具体的に教えていただけると幸いです。後学のために参考とさせていただきたいと思います。

それでは。
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