自分たちが長く続いていて自明のように思っているものが、実は極めて新しく、かつシステムによって作り出されたものに過ぎない、という事例はこの世に数多ある。その最も典型的な事例が、「時間を守る日本人」だというのはすでに以前述べた(そもそも近代以前は時間に沿って行動する必要性が薄かったし、明治期に入っても時間を守って行動するという規範は仕事でさえ容易には定着しなかった。これが全体に広がったのはいわゆる「15年戦争」の戦時統制化においてである)。この動画で述べられているように、サラリーマンはもちろん、終身雇用というのも極めて新しいシステムに過ぎないし、専業主婦についても同じである。
以上のような認識を踏まえると、今自明だと思っている「心の習慣」も、システムが変われば変更を余儀なくされるし、逆に言えばシステムを変えることなく人の心に訴えるような人治主義的発想は人のことを尊重しているように見えて、実際には歴史的実態を無視した愚行と断じざるをえない(という話は、コロナ対応を始めとしてこのブログでも何度か言及してきた通りだ)。また、システムが一時的なものに過ぎないという認識に立てば、それを元にしたリスクヘッジと過剰適応に社会全体が流れることは、むしろ「ゲーム」が変化した際に対応不可能となって露頭に迷う大量の人間を生み出すことは容易に想像できるはずだ。
しかし、不確実性が大きすぎることへの不安でそこから逸脱する選択は難しくなっており、まして同調圧力が強く自己責任論が猖獗を極める現代日本の状況では、個人・社会ともに変化をしようとするモチベーションは突然変異的なもの以外は容易に起きえないのであり、それは日本がこれから衰退を止めることができないと私が考える理由の一つである(ポテンシャルがあることと、それを活かせる行動を取れることを同一視すべきではない)。
まあそんな話題を枕に、いくつかおもしれー動画を紹介しつつ、この稿を終えることとしたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます