Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

キル・ビルvol.2

2013-11-17 | 映画(か行)

■「キル・ビル vol.2/Kill Bill vol.2」(2003年・アメリカ)

監督=クエンティン・タランティーノ
主演=ユマ・サーマン デビッド・キャラダイン ダリル・ハンナ

 オスカー総ナメの「LOTR」なんぞより、僕にとってはこっちこそが2003年のムービー・イベントだ。待ってました!タランティーノ!。今回は初日・初回に鑑賞って訳にはいかなかったけれど・・・ともかく観てきました。「vol.1」のド派手なバイオレンス描写は今回は控えめで、むしろ人間ドラマに力が注がれている。あのアクションを期待して拍子抜けしてしまった方々も多いだろう。もともと一本の映画だったのだから、それぞれのパートで見せ場が異なるのは当然だし、タランティーノの力量はバイオレンスというそんな狭い範疇のものだけではございません!。特に「vol.2」は単なる謎解きだけでなく個々の人間が見えてくるパートだ。エンドクレジットを観ながら 怨み節 の歌詞が胸に刺さるのよ、今回は。これは「vol.1」との大きな変化。

花よ綺麗とおだてられ/咲いてみせればすぐ散らされる/
馬鹿なバカな/馬鹿な女の怨み節

それだけ「vol.2」はオンナが描けているのだよ、ウン。「vol.1」をやりすぎと感じ、かつ「ジャッキー・ブラウン」で泣きそうになった映画ファンはきっとこの「vol.2」はお気に召すはず。

 前作同様タランティーノの映画愛はよりマニアックに「キル・ビル」という名の結晶と化した。オープンカーに乗りながらユマが語り始める冒頭、正面からカメラを据えて背景だけが遠ざかって行くモノクロの構図・・・往年のハリウッド映画ってこんなだったよね。ヒッチコックの「断崖」や「汚名」を思い出した人も多いはず。最初の「6章」はスクリーンサイズが小さいんだけど、パイ・メイとの修行が始まる「7章」に入った途端にサイズが拡大し粒子が粗くなる。退いたショットからいきなりパイ・メイのアップになった瞬間ズームがボケる。芸が細かい!昔の香港映画ってこんなだったよね。「vol.2」は随所にマカロニウエスタンの雰囲気が再現されているが、とにかくクローズアップが多い。セルジオ・レオーネ作品でもみられたイーストウッドやブロンソンの目だけスクリーンにどアップ!。そんな撮影のせいかデビッド・キャラダインの皺のひとつひとつまでもがビルという役柄を演じているようである。元ネタとされるデビッド・キャラダイン主演の「サイレント・フルート」を観ていないのが悔やまれるなぁ!(中学のとき観た映画の同時上映だった。あのとき1本観て帰るんじゃなかった!)。

 オーレン・イシイ同様魅力的な悪役エル・ドライバー。ダリル・ハンナ復活に拍手です。それにリュー・チャーフィー演ずるパイ・メイとの修行シーンの楽しいこと。おまけに「ママとビデオをみなさい。」と言われて観るのが「Shogun Assassin」(子連れ狼)!タランティーノにとっての女優ユマ・サーマンは、「モロッコ」のジョセフ・フォン・スタンバーグ監督にとってのマレーネ・ディートリッヒのような存在だ、とタランティーノはインタビューで答えていた。Goodnight Moon をバックにしたモノクロの画面を見ていてふとその言葉を思い出した。そこにはタランティーノの愛情が見えるではないか。

(2004年筆)




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