■「恋愛睡眠のすすめ/The Science Of Sleep」(2006年・フランス=イタリア)
監督=ミシェル・ゴンドリー
主演=ガエル・ガルシア・ベルナル シャルロット・ゲンスブール アラン・シャバ ミュウ・ミュウ
男子は夢の中や妄想で恋愛をシュミレーションしたがる生き物だ。そりゃ女子だって彼氏を喜ばせることを想像して、ときめいたりもするだろう。でも男子は本当に恋したら、好きな女の子のことを考え、いろんな想像をめぐらしながら長い時間を過ごす。そして狩猟本能があるからなのか、どうしたら二人の距離を縮められるかの行動を頭の中で想像して、プランをたてる。誰もがすることだ。そんな男のコの妄想や考えを見事にスクリーンに示した映画が、「(500)日のサマー」だった。スプリットスクリーンで左右に分かれた画面で、主人公の想像と現実が同時進行するシーンは、僕らの心を見透かされたようで切なさと気恥ずかしさが入り交じる名場面だった。「初体験リッジモント・ハイ」の映画史に残るフィービー・ケイツのムフフな場面も、ジャッジ・ラインホールドの妄想だったよね。「夢の中なら大胆になれるのに。」とヒロインに言ったのは、「ノッティングヒルの恋人」のヒュー・グラント。きっと彼も夢でコクるシュミレーションをしていたはず。
ミシェル・ゴンドリー監督の「恋愛睡眠のすすめ」の主人公ステファンもそんな男子のひとり。だけど度を超している。夢の中の彼は「ステファンTV」という番組のホストであり、ボール紙で作られた街を飛び回り、職場の風変わりな同僚たちとバカ騒ぎを繰り広げる。そして彼はアパートの隣に引っ越してきた女性ステファニーと出会う。彼女の友達に興味をもったのが始まりだったが、次第に二人は仲良くなっていく。だって二人は想像の世界を楽しむことができる似たもの同士。ステファニーはメルヘンチックな想像を好むいわゆる"不思議ちゃん"だった。だけど不器用なステファンは、隣に住んでいることさえ最初はタイミングを逸して言い出せず、近くに住んでいると嘘をつく情けなさ。冒頭、申し上げたように不器用な男子は妄想でうまくいくことを想像する。妄想癖のあるステファンもそうだ。そしてステファンは次第に現実と想像の区別がつなかくなっていく・・・。
男として共感はできるのだけど、大人なんだからそこまでやっちゃダメだろ・・・と主人公の行動を現実的になって冷ややかに見てしまう。それは僕が夢みる頃を過ぎた大人になっちまったからなのか、ミシェル・ゴンドリー監督のやり過ぎ演出を過剰と感じたからなのか。ビジュアル面の面白さや斬新さを楽しみながらも、とにかくステファンがじれったくて仕方なく、映画にのめり込めない自分がいる。パリを去ろうと決意するクライマックスも、ステファニーを不快にさせるようなことばかり口にして不器用にも程ってもんがある。しかしステファニーのロフトで彼が目にしたのは・・・二人にとっての大事なもの。そのまま眠りにおちてしまったステファンとそれを見つめるステファニー。不思議な余韻を残すラストシーンに、それまでのじれったさを忘れて何故かほっとしてしまった。
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