Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

シャーキーズ・マシーン

2013-11-07 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その18)★バート・レイノルズとタランティーノの関係?

■「シャーキーズ・マシーン/The Sharky's Machine」(1982年・アメリカ)

監督=バート・レイノルズ
主演=バート・レイノルズ レイチェル・ウォード ビットリオ・ガスマン ブライアン・キース

 この映画も「キル・ビル」元ネタ映画である。え?そんなこと、どの本にもパンフにも載ってないって?。まぁそう言わずに僕の話を聞いてよ。この映画はバート・レイノルズが監督・主演したポリス・アクションの快作。レイノルズと言えば「トランザム7000」などでみられるように、鼻ひげはやしたセックスアピールぶんぶんの男というのが典型的なイメージではないだろうか。そうした役柄がお気に召さない映画ファンは、この「シャーキーズ・マシーン」の人情派ハードボイルドな彼を観たら、きっとイメージが変わるに違いない。麻薬課から風紀課に移された腕きき刑事シャーキー。彼が追うある事件が、知事選挙や裏社会の黒幕とつながっていることが次第に判明。上層部からの圧力がかかったりで彼も命を狙われることになる。知事候補と関係する高級コールガールとの恋も交え、シリアスでカッコよくて、いい女も出てきて、チャールズ・ダーニングを始めとする癖のある脇役陣が渋くって、実に見応えのある映画に仕上がっている。レイノルズの監督作は本作と「ゲイター」がある。他にもテレビ番組「新作・ヒッチコック劇場」の一本「俳優悪夢」というエピソードも彼の監督作。マーチン・シーン扮するベテラン俳優がバラバラ殺人をするのだが、この過程をユーモラスに描いた佳作となっている。

 「シャーキーズ・マシーン」で特に強烈な印象を残すのは、ジャンキーの殺し屋を演ずるヘンリー・シルバだ。現在も悪役一筋で活躍するいかにもワルそうな顔の俳優さんだが、この映画での彼は他とは違う。黒幕である兄に偏愛の感情を抱くちょっとホモセクシュアル的な役柄なのだ。悲しみをこらえながら兄に向かって引き金を引く何とも言えない表情。そして大詰め、シャーキーたちとの銃撃戦は緊張感あふれた見せ場となっている。何よりもこの映画は80年代に製作されているけれど、どこか70年代ポリスアクションの雰囲気が色濃く漂う。それにバイオレンス的な要素もしっかりあり、途中現れる殺し屋二人組は何故かカンフー使いの中国人!。まさにタランティーノ好みのテイストなのだ。実際にタランティーノ自身もこの映画はお気に入りらしく、オープニングで使用されたランディ・クロフォードの Street Life は、「ジャッキー・ブラウン」でも使用されている。また主人公シャーキーが、敵のアジトで匿っている女性の居場所を問いつめられる拷問シーン。主人公は何と2本も指を切り落とされる。こんなに主人公が痛めつけられるポリスアクションはなかなか見られない。これは「vol.1」のジュリー・ドレフュスが手を切り落とされる場面にも通ずるし、「レザボア・ドッグス」では拷問の方法について会話する場面でまさに「指を切り落とすのが一番だ」と言っている。そして「vol.2」でブライドの妊娠が判明する回想シーン。中国人の殺し屋がドアの向こうからショットガンでブライドの頭を撃ちぬこうとするが、この殺しの手口は「シャーキーズ・マシーン」でのヘンリー・シルバの手口と同じ。

 タランティーノの母親コニーは、バート・レイノルズと同じくチェロキーインディアンの血をひく女性だった。コニーは、バート・レイノルズがTV映画「ガンスモーク」で演じていた役柄であるインディアン、クイントのファンであった。その名にちなんで、我が子にクエンティンと名付けた。父親を知らないタランティーノにとって、バート・レイノルズは名付け親のようなものとも言えるか。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新・仁義なき戦い。

2013-11-06 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルールを探せ!(その17)★布袋寅泰作曲 ♪Battle Without Honor Or Humanity

■「新・仁義なき戦い。」(2000年・日本)

監督=阪本順治
主演=豊川悦司 布袋寅泰 佐藤浩市 哀川翔

 タランティーノは昔の東映ヤクザ映画が大好き。でも昔の役者をキャスティングするわけにいかないので現在ヤクザ映画を何本か参考に観た。日本人俳優のキャスティングに大きな影響を与えた「殺し屋1」、「PARTY7」。そしてもう1本が本作、「新・仁義なき戦い。」である。この映画がから「キル・ビル」に引用されたのはなんと音楽だった。もはや「vol.1」のメインテーマと呼んでも差し支えない、布袋寅泰作曲のテーマ曲 Battle Without Honor Or Humanity(新・仁義なき戦いのテーマ) 。タランティーノが審査員長を務めた2004年のカンヌ映画祭でも、彼が舞台に登場するBGMにこの曲は使われた。まるでレスラーの入場曲だな。布袋寅泰は、既にマイケル・ケイメンとのコラボレーションでオーケストラとの共演作品を海外でもリリースしていたし、ケイメンが音楽担当をしたアトランタ五輪閉会式での演奏は世界中に流れている。だが自作が世界的に注目されるのはもちろんこれが最初だろう。「vol.1」で使用されたこの曲に関してレコード会社に問い合わせが殺到したことから、イギリスでは布袋のギターインストアルバム「Electric Samurai」がリリースされるに至った。これにはタランティーノがライナーを寄稿している。

 オーレン・イシイが部下と共に青葉屋の玄関から奥座敷まで歩く印象的な場面。そのバックに流れるのがこの曲である。この場面のカメラワークは、「新・仁義なき戦い。」の最初の方、佐藤浩市が岸部一徳に近づく場面のカメラワークにどこか似ている。狭い半間廊下をカメラは行きつ戻りつ、佐藤浩市の姿を追う。「vol.1」での廊下は大勢を連れて歩く為にもっと広いけれどもいかにも日本家屋らしいセットの壁が動いていく背景は共通点を感じさせる。でもこの”一点消去の構図”をよく使う監督といえばスタンリー・キューブリック。もしかしたら「時計じかけのオレンジ」あたりへの敬意も込められているのかもなぁ。「新・仁義なき戦い。」でのこの曲の使い方も印象的だ。組長の遺骨と共に黒塗り車の葬列が続く、長い長いオープニングタイトル。葬儀の車が故障したトラクターに止められた後、一斉にヤクザたちが車から降りてくるスローモーションの場面に、ミュートしたギターの音がかぶさってくる。あの曲だ。そしてやっと出てくる監督のクレジット。映画のクライマックス、布袋の店で飲んでいる佐藤浩市をトヨエツが襲撃する場面にもこの曲は使われる。この曲は、これから何かが起こる・・・そんな予兆を感じさせる。

 映画本編は大阪で実際にあった抗争をモデルにし、組内部の対立を群像劇として描いていく。僕は阪本監督作を「どついたるねん」しか観ていないだが、女性をとことん脇に配した男臭い作風はやはり健在。在日コリアン役を見事にこなす布袋も素晴らしいのだが、哀川翔が特にうまい。でもさすがに深作欣二作の域までは達していない。悶々とした主人公たちの思いや悲壮感ばかりが印象に残って、男たちの鉄砲玉のような疾走感はここではみられない。それに跡目につこうとする者が支持を求めて右往左往する様は、もう政界ドラマなのね。上から「お前はオレをかつぐのか?かつがないのか?」って話。だから庶民としてはちょっとシラけてしまう。深作の頃は下っ端が強気に「かつがなくてもいいんか?」と迫り、挙げ句に上に殺されるお話。下っ端の生き様、悲しさ、切なさという他の世界でも共通の感情があったと思うのだ。だからこの「新」を観て最も心に残るのは、トヨエツと布袋の腐れ縁のような人間関係。「またハンパしやがって」「おかん呼んどんで」って台詞がグッとくる。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

男たちの挽歌・男たちの挽歌ll

2013-11-05 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その16)★教会の大虐殺/ジョン・ウーはお好き?

■「男たちの挽歌/英雄本色 (A Better Tomorrow)」(1986年・香港)
■「男たちの挽歌ll/英雄本色ll (A Better Tomorrow 2)」(1987年・香港)

●1987年香港電影金像奨 作品賞・主演男優賞
●1986年台湾金馬奨 監督賞・主演男優賞

監督=ジョン・ウー
主演=チョウ・ユンファ レスリー・チャン ティ・ロン

 タランティーノのジョン・ウー好きは周知のこと。「ジャッキー・ブラウン」では「近頃は香港映画の影響で二丁拳銃が流行り」とか、サミュエル・L・ジャクソンに言わせているから、この「男たちの挽歌」でのチョウ・ユンファはさぞかしお好みなのだろう。カタギになりたいのに裏社会とのつながりはなかなか切れない。切らせてもらえない。田舎のレコード屋と結婚してカタギになろうとしたがビルによって悲惨な目に遭うブライドの姿は、「男たちの挽歌」でのホーの役柄に重なるところがある。

 いわゆる香港ノワールは今まで食わず嫌いだった。「挽歌」も今回初めて観た次第だ。正直な感想。もっとかっこいい映画かと思ってた。裏社会の大物だった兄は警察官の弟の為に足を洗おうとする。その人情劇がドンパチよりも強く印象に残ってしまう(しかも泣けるのだ)。どフォークな雰囲気の♪ティリリ~というハーモニカの調べも手伝って、その印象はますます増幅される。もちろんど派手で「ワイルドバンチ」ばりにスローモーションで克明にみせる銃撃戦の迫力もいいのだけれど、なーんか洗練されていないし、登場人物はみんな感情で動く人ばかりでいつも何か叫んでいるし・・・。それでもラストの銃を手渡すところと、自ら手錠をかけるところはなかなか涙を誘う。それにしてもこの映画のレスリーチャン若いよなぁ。

 ところが、そんな不満は第2作になるとすべてフッ飛んだ。「挽歌ll」は1作目の涙誘う兄弟の物語を語る必要がない分だけ、アクションに酔える。階段を仰向けに滑りながらの二丁拳銃のかっこよさに、「おおぉー」と野原しんのすけの様に声をあげてしまった僕。それに筋も深い。「善人になることはどうして難しいんだ」等々些細な台詞のひとつひとつが不思議と残るのだ。「酔拳」の意地悪師範代ディーン・セキが、コミックカンフー映画とは違った渋い演技を見せてくれるし、「少林サッカー」のダメ監督ン・マンタもここでは貫禄の好助演だ。1作目で死んだチョウ・ユンファを双子の弟として再登場させる強引さや、「あんたの経験を絵にしたい」という変な画家には笑えるけれど、それはまぁご愛敬。ディーン・セキを追ってきた刺客がニューヨークの教会で大虐殺をする場面は、「キル・ビル」への直接の影響があるのかも。スーツ姿の悪役がゾロゾロやって来て主人公達を襲うのは、クレイジー88にも重なって見える。それにラストの殴り込み場面。青葉屋の比ではないくらいのおびただしい死体の山。ティ・ロンが手にしているのは、おぉ!日本刀じゃん!。





男たちの挽歌 コンプリート・ブルーレイ・コレクション〈日本語吹替収録版〉 [Blu-ray]男たちの挽歌 コンプリート・ブルーレイ・コレクション〈日本語吹替収録版〉 [Blu-ray]

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2013-07-12
売り上げランキング : 3212

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吸血鬼ゴケミドロ

2013-11-04 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その15)★オイラが一番好きな飛行機のシーンは「ゴケミドロ」

■「吸血鬼ゴケミドロ/Goke : Body Snatcher From Hell」(1968年・日本)

監督=佐藤肇
主演=吉田輝男 佐藤友美 高英男 金子信雄

 ブライドが沖縄から東京入りする場面。ミニチュア旅客機がコテコテの特撮背景をバックに飛行する不思議な場面が挿入される。真っ赤な空とヨロヨロしながら飛ぶ飛行機。タランティーノは「吸血鬼ゴケミドロ」の冒頭、血のような色の空を背景に飛ぶ旅客機のシーンがお気に入りだとか。「vol.1」では、そのサイケなイメージの空を黒澤明映画で背景を担当していた島倉仁さんが描いた。「夢」とかやってらっしゃる方なのだろうか。さらに飛行機が飛ぶ夜景は、「サンダ対ガイラ」の夜の街をイメージしているという。タランティーノ、本当にいろんなもの観ているよねぇ。街のセットは「ゴジラ」の撮影スタッフが協力した。あちこちに"Red Apple"というタバコ(「パルプ・フィクション」にも登場するらしい)の看板が見られるが、その看板モデルがオーレン・イシイの弁護士役ジュリー・ドレフュスというのもお見逃しなく。

 さてそんなタランティーノの思い入れたっぷりの「吸血鬼ゴケミドロ」。映画の冒頭、いきなりその血の色の空が登場するから、僕は「あ、これ!これ!」と思わず口にして吹き出してしまった。宇宙からやってきた寄生生命体ゴケミドロは人類を抹殺し、地球征服を企んでいる。青白い発光体に遭遇して旅客機は墜落、周りは岩だらけで何もない山中に乗客だけが取り残される。極限状態の乗客たちが次第にエゴをむき出しにしていく様は観ていてこちらまで息苦しくなるが、その異様な雰囲気にグイグイ引き込まれる。そして殺し屋(高英男)の脳に寄生したゴケミドロは次々と乗客を襲い始める。パニック映画でもあり、ホラー映画もあり、侵略SFでもある本作、カルトムービーとして人気がある映画だそうだ。松竹の特撮ものというと「宇宙怪獣ギララ」(妙な映画だったなぁ)の(悪い)イメージが強いのだけれど、本作は細部まで強いこだわりが感じられる力作。世界中で繰り返される戦争・テロに対する怒りがこの映画の根底にある。救いのないラストにものすごい後味の悪さが残るけれど、「仮面ライダー」のBGMを思わせる菊池俊輔の音楽と共に、きっと忘れられない映画となることだろう。必見!。

 (追記)タランティーノは「エアポート75」のようなパニック映画が撮りたいと言っているそうな。となりゃあ、お気に入りの「ゴケミドロ」が影響しないはずはないよね!。冒頭の鳥が窓に当たる場面、再現して欲しいなぁ。そしてスチュワーデス役はもちろん「ジャッキー・ブラウン」のパム・グリアで!。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キャリー

2013-11-03 | 映画(か行)

■「キャリー/Carrie」(2013年・アメリカ)

監督=キンバリー・ピアース
主演=クロエ・グレース・モレッツ ジュリアン・ムーア 

 "リブート"の名の下で過去の作品のリメイクが相次ぐハリウッド映画。ブライアン・デ・パルマ監督の名作ホラー青春映画を、クロエ・グレース・モレッツで撮る・・・とニュースを聞いたとき、「モールス」の次がこれかよ、再び血まみれになるのかぁ・・・と、おじさんはクロエたんをかわいそうに思った。デ・パルマ版はテレビの映画番組で高校時代に観たっけ。タイトルロールのシシー・スペイセクと母親役のパイパー・ローリーは、まさに鬼気迫る熱演だった。それにウィリアム・カットにジョン・トラボルタなどなど、この後ブレイクすることになる若手スタアが出演してそれも映画ファンとしては嬉しかった。70年代、80年代に多数映画化されたスティーブン・キング原作らしく、重く心理的に迫る恐怖感がある映画だった。プロムの大惨劇シーンもすごいけど、なによりもトラウマになったのは、エイミー・アービングが絶叫するラストシーン。あれはどうなるのだろう・・・と、どうしても僕ら世代はストーリーに関して情報がありすぎる。どうしても比べてしまう。そこを抜きに"リブート"作品を観ることができるのか。おまけに「映画秘宝」誌は、豚の血をかぶってもきゃわゆいクロエたん・・・とアイドル映画視。えーっ?。

 近頃は吸血鬼ものですら青春ロマンスにしちまうハリウッドだから、いわゆる学園もの青春映画的な仕上がり?と思ったらまさにそれ。スティーブン・キングの重みはどこへ?と思えるくらいに全体的にかなり軽い印象。どうせアイドル映画化しちゃうんなら、彼氏をキャリーに譲るスー役(オリジナル版はエイミー・アービング)をエル・ファニング嬢あたりにするといいのに・・・とあれこれ考える。いかんいかん。スクリーンに向かってて雑念が。映画冒頭、キャリーがシャワー室で受けるいじめが物語の発端。ネットいじめにまで発展するのは現代らしい味付けで、悪意と陰湿さが増している。いじめた女の子たち、一緒になってキャリーを気味悪がる男子たちの区別がとてもわかりやすい。その罰として体育教師が科した長距離走に一人反抗するのがいいお家柄のわがまま少女一人(オリジナル版はナンシー・アレン)、みんながプロムの準備をしている中に参加しない者と参加できない者がいる。各場面場面でのグループ分けがはっきりしている。"大人数のグループとそれに加われない孤立者"という構図が、それぞれの孤独感を観客にわかりやすく示している。

 この映画で怖い存在は何よりもジュリアン・ムーア演ずる母親だろう。彼女が何故世間を嫌うのか、男性を嫌うのか、宗教に過剰に傾倒するのかが描かれていて、単に主人公を抑圧する怖い存在というものではない。彼女も社会というグループに加われない孤立者である。映画冒頭の一人出産の場面、自傷行為のシーンで世の中に対する母親の苛立ちが鮮烈に描かれる。その母親に「みんなと同じでいたい。」と必死で訴えるキャリーが、見ていて切ない。そしてクライマックス、プロムの大惨劇は現代ハリウッドの特撮技術だけにド迫力。結局キャリーの理解者になろうとしたのはスーだけだった。その結末は変わらない。オリジナル版の衝撃のラストシーンは、映画史に残る忘れられない名場面。あの墓場から飛び出した手がキャリーのある意味で現世への執着だと考えるなら、リメイク版のラストはキャリーがすべてを拒絶してしまったかのように感じられる。だが、キャリーは崩れゆく家からスーを吹っ飛ばしながらも、その着地はふんわりとしていた。それは直前にキャリーがスーに対して気付いたあることへの配慮。キャリーは決してすべてを呪って死んでいったのではなかったのだ。エンドクレジットで流れるかるーいロックが今ドキ学園ドラマぽくて、スティーブン・キングの重厚さを消し去っているのが違和感。でもスティーブン・キングの名に重い価値を感じるのは、やっぱり僕ら世代なんだろうね。

ブログランキング・にほんブログ村へ 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コフィー

2013-11-02 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その14)★ブラックスプロイテーション映画

■「コフィー/Coffy」(1973年・アメリカ)

監督=ジャック・ヒル
主演=パム・グリア ブッカー・ブラッドショウ  

 ブライドに最初に殺されるヴィヴィカ・A・フォックス。タランティーノは彼女にパム・グリア(「ジャッキー・ブラウン」)のつもりで演技してもらったという。タランティーノは13歳の頃からパム・グリアの大ファン。特に彼女のデビュー作にしてブラックスプロイテーション映画の傑作「コフィー」に、タランティーノは夢中になったという。麻薬中毒にされた妹の仇を討つため、一人組織に挑むヒロインはひたすらかっこよく、しかもセクシー。彼女の為に「ジャッキー・ブラウン」の脚本を書いたのは有名なお話だ。ブラックスプロイテーション映画(Black+Exploitation (低予算映画))とは黒人向けアクション映画のことだ。ハリウッドでは白人の協力者として描かれがちな黒人像とは異なり、そのスクリーンでの勇姿はとにかくタフ!。むかーしTVで「クレオパトラ危機突破」(73)という黒人カラテ映画を観て夢中になったことがあるけれど、それもこのジャンルの一本。どちらも悪役は白人で、アフロヘアのセクシーなヒロインが大活躍する映画だ。ワウギターが唸る音楽も聴きどころ。黒人観客目当ての作品だが、当時タランティーノの母親に黒人のボーイフレンドがおり、一緒に鑑賞したらしい。

 僕が「コフィー」を観て思ったこと。それは「vol.2」の展開に似てないか?ということ。ジャンキーにされた妹の復讐という設定は、お腹の子を殺されたと信ずるブライドに通ずるところだし、愛する男に裏切られるストーリーを始め、両作品には共通点もみられる。例えば隻眼の殺し屋が両作品とも出てくる。もちろん「キル・ビル」ではエル・ドライヴァーだ。その殺し屋を片づけてのクライマックスはどちらも愛した男と1対1で向かい合っている構図ではないか。「コフィー」は、「キル・ビル」の物語自体に大きな影響を及ぼした映画であるに違いないだろう。

 次第に追いつめられていく主人公だが、一途に悪に立ち向かう姿には感動さえ覚える。この映画に流れるのは麻薬、権力、男・・・そんな社会への怒り。パム・グリアのセクシーな魅力には人種を越えて人気があったというのも納得できる。ダイナマイト・ボディとはこういうのを言うのだ。コフィーと友人の警察官を襲いにきた暴漢が、一度逃げたのにわざわざ気絶しているコフィーのおっぱいを触りに戻って来るサービスショットには思わず笑ってしまうけど、それもまぁご愛敬。密売人キング・ジョージがはべらす娼婦たちの中には、タランティーノのお気に入り映画「ローリング・サンダー」のリンダ・ヘインズの姿も。
 




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

直撃地獄拳・大逆転

2013-11-01 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その13)★”イシイさん”/千葉真一
直撃地獄拳 大逆転 [DVD]
■「直撃地獄拳・大逆転」(1974年・日本)

監督=石井輝男
主演=千葉真一 佐藤充 郷治 中島ゆたか 志穂美悦子

 オーレン・イシイのネーミングは、タランティーノが尊敬する日本人映画監督に、石井克人・石井隆など”イシイさん”が多いからである。中でも最も尊敬する”イシイさん”が「網走番外地」で知られる石井輝男監督なんだとか。若い映画ファンには93年の「ゲンセンカン夫人」が知られていることだろう。その石井監督が千葉真一のアクション映画を監督したのが「直撃!地獄拳」シリーズ。本作はその第2作で、一見空手アクション映画なのだが、その実はやりたい放題のコメディ快作!。ラストには自作ネタの小技が用意されてます。お楽しみに。ちなみにこのシリーズ、アメリカでは「Executioner」のタイトルで公開されているそうな。

 もう究極のおバカな映画と言ってもいいかも。でもそれ故になーんか憎めない愛すべき映画だ(正直言って好き!)。千葉真一は甲賀忍者の末裔で、警視総監から内密に盗まれた宝石奪還の依頼を受ける。強力な接着剤で棒を壁や天井に貼り付け、それをつたって忍び込む妙技。アドバルーンにぶら下がった空中アクション、もちろん空手アクションも満載の面白さ。ところが全編小学生男子のような悪ふざけの連続で、相手の飲み物にハナクソやらフケやら入れるわ、食い物ぶっかけるわ、屁を見舞うわ、小便かけるわ、中島ゆたかのチャイナドレスを下からのぞき込むわ・・・もう観ていて気恥ずかしくなってくる。接着剤でテーブルに手がくっついた郷治は、テーブルを手形に切り抜いてしばらくそれで登場するのはご愛敬。セスナ機がトンネル内を飛ぶ場面は「ミッション・インポシブル」を思い出したりなんかして!(もしかしてこれも影響なのか?)。クライマックスの大乱闘では、用心棒役安岡力也の目玉は飛び出すし、マフィアをバックに持つ悪役名和宏は、千葉真一の蹴りで首が一回転!、腸を引きずり出される!。残酷描写というより、もはやギャグ!。「キル・ビル」でも、青葉屋での格闘シーンに目玉が飛び出すアクションがそのまんま引用されている。またゴーゴーの頭上、ユマが天井に張りつくところも影響か?。ついでに服部半蔵の側近シロー役の大葉健二は、「直撃地獄拳・大逆転」に、ギャングの一人として出演しているらしい。探しだせますか?。



直撃地獄拳 大逆転 [DVD]直撃地獄拳 大逆転 [DVD]
石井輝男

東映ビデオ 2007-10-21
売り上げランキング : 47096

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする