大西巨人原作のマンガ『神聖喜劇』を読み始めた。
軍隊内の不条理をリアルに告発した大作だが、ときどき難しい言葉が出てくるなか、読めない・意味が分からない「偸安」という言葉があった。
「偸」(トウ)とは、漢和辞典によれば盗むという意味がある。そこで、常用している旺文社の国語辞典で「偸安」という言葉を調べた。
すると、「現在の無事に安心していて、将来を考えないこと」と書いてあった。
パソコンで言葉を調べたら「目先の安楽をむさぼること。一時しのぎをすること」と表記しているのが多い。
内容的には、旺文社の表意が優れている気がした。
二・二六事件の「決起趣意書」には、ときの軍部や政府の腐敗に対しての言葉として引用されていた。
ひるがえって、この「偸安」という言葉は、現在の日本の現状を表す的確な言葉ではないかと思った。
総選挙をめぐる日々の動向もそうだが、本質的に戦後の歩みは国民も権力もそうした選択をしてきたのではないかと思わざるをえない。
人ごとではないが、「想像力」を作動せずに思考停止したため漂流する世論に判断をゆだねてきた結果のツケが今の混沌を招いているのではないだろうか。
そんななかで「何からはじめるべきか」の課題が迫ってくる。