残暑から逃げるように映画館に逃避するが、駐車スペースがなくてしばらく空きを待つ。同じことを考えるのか、会場とその周辺は人の荒波でざわつく。上映時間ぎりぎりで会場にたどりつく。三谷幸喜監督「記憶にございません!」を観る。完成度はいまいちだがさすがの三谷ワールドコメディの真骨頂が発揮されていた。
記憶喪失した総理が自分がやってきた汚れた政治をクリーンに改革していく物語だ。チャップリンの「独裁者」という映画に似ている。パロディとしてはチャップリンが優れているが、三谷コメディは硬直した現代の政治に遊び心をどぼどぼ注入していることが主眼だ。
三谷組の常連・中井貴一は監督の期待通りの主演の総理役を演じたのは言うまでないが、意外性あるキャストは、ニュースキャスターの有働由美子が初めて出演しているところとか、USAの日系女性大統領役の木村佳乃の英語力も異彩を放った。ディーンフジオカや佐藤浩市の安定した存在感も三谷コメディの一翼を担っている。
これからの政治家は「記憶にございません」という答弁はこれで使えなくなりそうだといいな。