近所の庭のムシトリナデシコの見事な群落に黒い蝶が飛来していた。はじめはクロアゲハかなと思っていたが、青い斑紋や白色帯も見えたので、これはミヤマカラスアゲハかカラスアゲハらしいと予想した。
近づくと逃げてしまうので望遠でキャッチするが、なかなか翅を休めてくれない。以前、長野の山中で大型のミヤマカラスアゲハを初めて見た衝撃が忘れられない。まさに複数のメタリックな光沢が水たまりに反射して群舞する。しかし、目の前の蝶は小型だ。
春型のミヤマカラスアゲハは小型であるのを初めて知る。いずれにせよ、アゲハチョウくらいの大きさなのは間違いない。止まってくれないので残念ながらグリーンのメタリックな表の翅は確認できなかったが、黒っぽく、またジャコウアゲハのような灰色帯が交差するように見えた。ここでは「ミヤマ」か「カラス」かは問題ではない。こうした珍しい蝶がこの小さな山里に飛来していることが素敵なのだ。
新型コロナは、人類の急速な経済成長・土地開発の価値観を根底から揺さぶった。この教訓からわれわれはどういう価値観を日々の暮らしのなかに貫いているかどうかが問われている。同時に、貴重なカラスアゲハの飛来について、中山間地の価値をもっと輝かしいものにしたいものだと、こじつけながら思うのだった。