春は黄色の花から始まる。小さな山を歩くと大好きなキブシ・ダンコウバイ・アブラチャンなどに会うと春を感じ始める。公園では、マンサク・ロウバイ・サンシュユ・ヒュウガミズキなど、ほんとうに黄色い花が春を呼ぶ。もちろん路傍には、タンポポ・カタバミ・ノゲシ・ヘビイチゴ・オニタピラコなどの雑草の花も黄色だ。これらの春はすでに多彩な夏色に変わり始めている。それでも、わが家にも「ニガナ」の群落がまだ春の歓迎の歌をやめていない。
ニガナが群落になると江戸の紋様が想起される。シンプルな形状だがすっきりした自立感がある。それが群落になると江戸小紋のような深みが増してくる。食べると全草が苦いので「苦菜」と呼ばれる。中国では「五味」を授乳前に体験させるとき、このニガナを使うという。
畑の脇には、「ナヨクサフジ」(弱草藤・マメ科)が咲いていた。これは帰化植物だが緑肥として利用していたものだ。トマトなどのコンパニオンプランツとして雑草を除去してくれる物質を発散する。しかし、生態系に被害を及ぼす外来性植物に指定されている。ただし、肥料として使用可能だが、増殖の危険があり、その管理が必要な「産業管理外来種」となるという。ちなみに、「クサフジ」は夏に咲く。春の花の紫色と言えば、スミレが代表格。いまでは種を飛ばし始めている。
裏山に、「ガマズミ」(蒲染・ガマズミ科)の白い花が咲いているのを発見。秋にはたわわな赤い実が見事だ。昆虫がいつも集まっている。どうやら、花は媚薬のような匂いを発散するようで、「ベニカマキリ」がへばりついていた。
ガマズミの語源には二つある。その材を鎌の柄に利用したこと、実が酸っぱい(酸実)ことからつけられたという。二つ目には、マタギが山中で空腹になるとガマズミを見つけて食しひとまず体を休めたという。つまり、ガマズミは山の神からの贈り物として「神の実」と称した。説得力があるのは前者だが、後者には夢と感謝がある。いずれにせよ、ガマズミは暮らしの身近な植物であったということだ。
春の白い花は、コブシ・ウメ・ホオノキなどけっこう多い。黄色から白へ移っていくのもている。春野楽しみ方だ。ガマズミもそろそろ終盤を迎えている。