ネギの苗を購入したので苗床を急遽掘ることになった。いつもよりやや深く溝を掘り出していたら、向かいのおばあちゃんが「堆肥がいっぱいでいい土になったね」とほめてくれた。確かにミミズも多くなったものイノシシがたびたび侵入し、今のウクライナの侵略された町のような荒涼とした畑ともなった。イノシシが来なくなると葉物野菜の収穫が順調となった。しかし、深さ30cm以上を掘り出していくと次々拳大の石にぶつかった。
そう言えば、ここを初めて畑にしたときは石の捨て場ではないかと思ったほどの場所だった。10年以上たった今、石だらけだった過去の状態をすっかり忘れていた。鍬は役に立たず、ツルハシが頼もしい農具となった。尖がっているほうで掘ってみると次々石に当たり、手がしびれることもたびたびだった。まるで、川床をツルハシで掘っているような感覚だった。
さいわい、片手で持てるくらいの石がほとんどだった。以前は掘り出すのに一日がかりかかった大きな石もあった。その石は今では座るのにちょうどいい石となって近くに転がっている。掘り出した石はもちろん山へ至る階段の敷石に使うつもりだ。
けっきょく、二日がかりの穴掘りになってしまった。なんとか穴を掘り終わり、堆肥を入れて枯れたススキも漉き込む。数時間で終わるはずだったのに、二日もかかってしまうとは、想定外のドラマに嵌められる。農作業も人生も戦争も想定外の陥穽に満ちている。