久しぶりに、キジがもどってきた。遠くから「ケーン、ケーン」という独特の鳴き声は聞こえたものの、その姿はなかなか見られなかった。それが最近、ごく近くで聞こえるようになったのだ。懐かしい。
近所の畑にいたキジがわが家の畑のほうへ移動してきたようだった。オイラがこの地に初めてやってきたころの朝、ニワトリの代わりにキジの鳴き声で起こされたのを想い出す。その声はメスを呼ぶ声ともなわばりを宣言する声だともいう。しかし、引っ越し間もなくのオイラの不安のせいか、その声はむなしい悲哀の声に聞こえた。オイラの心にじっとり沁みてくる癒しの声でもあった。
「けんもほろろ」という言葉がある。これはキジの鳴き声が語源だという。「けん」の鳴き声も「ほろろ」の羽ばたき音も、その鳴き声は不愛想にも聞こえるので、この言葉は相手の冷淡な処遇に対する意味で使われる。しかし、オイラにはいまだ不愛想には聞こえない。「どうして会ってくれないの」というオスの虚しさのようにも感じてしまう。
オスは体が大きいし、模様もカラフルなので比較的見つけやすいが、小振りのメスはなかなか目撃できない。キジに近づいてみると、草むらに隠れてじっと動かない。ときおり、首をもちあげてあたりのようすを確認している。その振る舞いがなかなか不器用なのがいい。
だから、国鳥でありながら、キジの料理にされてしまうんだなー。これからなんとか、朝の目覚めの一刻を奏でていってほしいと願うばかりだ。