都会から現在の中山間地へ移住して間もなく購入した「ヒメシャラ」は、枯れることなく清楚な小さな花をつけてくれている。樹の高さは7mくらいにはなっているだろうか、購入した時は120cmくらいだった。花が小さいので気がつかないときもある。
花は一日花なので、朝咲いた花は夕方には落花してしまう。したがって、樹の周りには落ちた花が散在している。樹皮は百日紅のようなつるつるとした赤褐色の輝きが素晴らしい。「日本三大美幹」というとアオギリ・シラカバだが確かにそれとと並ぶほどの人気がある。また、毎年種を放出しているはずだが新しい樹はまだお目にかかっていない。
似た樹には「ナツツバキ」(シャラノキ)があるが、それは花や葉がヒメシャラより大きい。仏教伝来のとき、日本に沙羅双樹の木がなかったので、ナツツバキを代用としたので名前に名残があるようだ。以前、屋久島にトレッキングに行ったとき、森の中のヒメシャラの巨木を見て偉く感動したものだった。縄文杉に混じってつやつやの褐色の樹皮が暗い森の中で美女に会ったように見えたものだった。
わが家のヒメシャラはまだまだその域には達していないが垂直に伸びる5本の美形を見る。このヒメシャラを見ると過疎へ不時着して以来、砂を噛むような思い出や人と自然とに日々癒された思い出などが走馬灯のようにあふれてくる記念樹でもあった。