この石碑は、栃木県大平町大中寺八世の白庵僧が開基し、建立したのは岡本讃岐守正親であり、それは天正十二年四月のこととある、鏡山寺創立からの歴史を記したものである。そしてそれ以上に私にとっての注目は、篆額揮毫者が宇都宮城最後の殿様である戸田忠友であり、その撰文者が戸田御三家の一人であり、当時の宇都宮で最高の漢学者である戸田香園。更にそれを揮毫したのがこれまた宇都宮藩の漢学、書家として知られた藤田安義。この三者の名が記された石碑は、宇都宮市内にも無く、当に私にとっては暫くぶりに嬉しいものであった。今回の鏡山寺訪問は、門前に建つ別の個人碑頌徳碑の調査にあったが、それは後回しにしてこちらを優先したことは云うまでもない。しかし、いざ手拓作業に入ると石苔が酷く掃除が必要、また中央が割れていて文字欠損箇所あり。加えて見た目以上に大きく、篆額を入れると手拓の高さが2メートルを超える。午後から始めたが、意外と時間が掛かって終わったのは夕方になっていた。午前中に、3基の石碑を終えていた身には疲労感がたっぷりと感じられ、帰路への道のりがいつになく遠く感じられた一日だった。そうそう、門前にある石碑は、次回に手拓することにしたのは云うまでもないが、こちらもこの石碑以上に汚れが酷く、何が書いてあるのかさえも読めない状態。加えて1メートル以上の高い台座に設置されているので、脚立が必要と、これまた手拓を終えるまでにはそれなりの時間が必要と、次回も覚悟を決めて再訪することにした。
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