一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

市房山 ……あれほどのヒカゲツツジの大群落は見たことがない……

2010年05月16日 | 山岳会時代の山行
からつ労山の5月の月例山行は市房山。
山岳会で今年の山行計画を立てる際、アンケート調査を行ったのだが、
「今年登りたい山ベスト1」に輝いたのが、この市房山だった。
今月は、GWに、特別山行で、天包山と石堂山に登っている。
市房山に登れば、5月のうちに米良三山登山を達成することになる。
2週間前に石堂山に登った時、アケボノツツジ越しに見えた市房山はとても美しかった。
その山にいよいよ登ることができるのだ。
ワクワクする。
ただ、心配事がひとつだけあった。
二ツ岩への縦走路が、崩落の為、通行止めになっているようなのだ。
当初の計画では、市房山から二ツ岩へ縦走することになっていた。
その縦走ができないみたいなのだ。
もし縦走が無理なら、縦走路を行けるところまで行って、引き返そうということに決まった。
参加したのは18名。(男性11名、女性7名)
週間天気予報では、16日(日)はずっと「雨」の予報だったが、一昨日あたりから「晴れ」に。
雨を覚悟し、雨でも登るつもりでいたので、ちょっと拍子抜け。
午前4時に唐津を出たマイクロバスは、8時35分に市房キャンプ場に到着。
すぐに出発準備とストレッチ。
一般参加の女性が1名おられたので、輪になって各自自己紹介をした。
8:55
キャンプ場を出発。
市房山から二ツ岩にかけての稜線が逆光に浮かび上がっていた。


祓川橋を渡る。
9:02
神社の鳥居がある登山口に到着。
登山届箱に記帳し、ここから登り始める。


市房山神社の参道の森には、樹齢800年~1000年の老杉が何本もそそり立つ。


この森の中で、大きさ4位の杉。
幹周り7m48cm。
「デカイ!」


倒木に、新しい生命が宿る。


朽ちた木に根を張り杉が育っていく。


やや湿り気を帯びた森の中には、ギンリョウソウがたくさん。


生と死が共存する、不思議の森。
アニメのワンシーンのような雰囲気。
人間が小さく見える。


9:54
市房山神社に到着。
ここは4合目。
「登山者注意」の看板があり、やはり縦走路は危険な状態になっているようだ。
避けるよう呼びかけている。


10:17
馬の背に到着。
ここは6合目。


馬の背を過ぎると、ミツバツツジが……
もう開花時期を過ぎていると思っていたので、花を見ることができて嬉しい。


ヒメシャラの木も増えてきた。
ヒメシャラの林とも名づけたいような場所も……
ヒメシャラと新緑とミツバツツジのコントラストが美しい。


急登が続き、汗ばみ火照った頬に、ヒメシャラの冷たい木肌が気持ちイイ。


ミツバツツジも数を増してきた。


山頂が近くなると、バイケイソウが……
花は咲いていないけど、美しい。


12:09
「山頂まで5分」
お馴染み、人吉のかめさんの案内板。


山頂が見えてきた。


12:13
市房山山頂に到着。
途中に下りや平行移動のほとんどない、急登の3時間だったので、けっこうハードだった。
だからこそ、登頂の喜びもひとしお。


ここで昼食。
素晴らしい風景を楽しみながらのランチは格別であった。
食べ終えて寛いでいると、散策に行ったイチさんが帰ってきた。
「タクさん、ヒカゲツツジがね、たくさん咲いてたよ」
と、親父ギャグのようなことを言った。
このイチさん、いつも冗談ばかり言っているので信用ならない。
「タクさん、リンドウが……」
とイチさんが言うので、喜んで指さす方を見ると、「林道」があったり……(爆)
だから、「ヒカゲツツジがたくさん咲いていた」と言われてもにわかに信じ難い。
もし咲いていたとしても、沢山ではないだろう。
「たくさん」は、「タクさん」にかけたものだと思うから。
「ウソつき」
と私が言うと、
「ウソじゃないってば」
とイチさんは真顔で答える。
ヒカゲツツジは私の大好きな花なので、一輪でも見ることができれば御の字と思い、イチさんの後に付いて行った。
「ほら、あそこ」
イチさんの指さす方向を見て、私は仰天した。
本当にヒカゲツツジがたくさん咲いていたのだ。


まさか市房山で、ヒカゲツツジに逢えるとは思っていなかった。
ヒカゲツツジはおろか、アケボノツツジにも、ミツバツツジにも逢えるとは思っていなかった。
石堂山に登った時、アケボノツツジもミツバツツジも開花のピークだったからだ。
あれから2週間も経っているのだ。
もうすでに散っていると思っていた。
得も言われぬヒカゲツツジの花の色にウットリ。


山の斜面を埋め尽くすヒカゲツツジ。
これほどの大群落は見たことがない。


同じ場所には、アケボノツツジも咲いていた。


アケボノツツジとヒカゲツツジとの競演。


競演パートⅡ。


競演パートⅢ。
いや~驚きました。
まさかこの時期に、これだけの花に逢えるとは……
「イチさん、ありがとう!」


周辺には、ミツバツツジも、


ベニドウダンも、


アセビも見られた。
もう幸せの極致。
市房山は、なんて素敵な山なんだろう!


花を堪能した後、縦走路へ。
3分ほどで「心見ノ橋」に着く。
このチョックストーンは、心の卑しい人は通れないとか。
私はというと……


大丈夫でした~(コラコラ)


で、そこから先に行ってみると、ありました看板が……


でも、その先がどうなっているのか見たくて、ちょっとだけ行ってみました。
ロープをくぐって……(オイオイ)

バイケイソウの小径が続き、それはそれは美しい縦走路でした。


二ツ岩方面の眺め。


下を見ると、崩落箇所。
ここで引き返す。


山頂に戻り、風景を楽しむ。
ひとつ気になるのは、山頂に近い斜面に、立ち枯れした木が多いこと。


鹿が原因なのか(写真は帰路に見かけた鹿)、それとも酸性雨か……


麓から中腹にかけては素晴らしい原生林が残っているし、


生命の循環も永い時をかけて繰り返されている。


市房山の素晴らしい自然がこれ以上損なわれることのないよう、願わずにはいられなかった。


16:55
キャンプ場に到着。
大満足の山行であった。
想像以上に素敵だった市房山。
今度は、このキャンプ場で一泊して、ゆっくりと市房山を堪能したいと思った。
見上げた稜線は、眩しいほどに美しかった。
ヒカゲツツジの大群落と共に、市房山の美は、私の心に深く刻まれたのだった。

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