一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『ヴェルサイユの宮廷庭師』……ケイト・ウィンスレットの魅力あふれる作品……

2015年12月25日 | 映画
ケイト・ウィンスレットを初めてスクリーンで見たのは、
やはり『タイタニック』(1997年)であった。
レオナルド・ディカプリオの人気が絶頂の頃で、
ディカプリオ演ずるジャックが死に、
ケイト・ウィンスレット演ずるローズだけが生き残った為、
ディカプリオのファンから、ぽっちゃり体型を揶揄されたりしたが、
私的には、
〈冷たい海で生き残るには、あのくらいの皮下脂肪がなければ……〉
と、妙に納得し、
当時は針金のような体型の女優には魅力を感じていなかったので、
この作品で、いっぺんに彼女のファンになった。


翌年(1998年)、
ケネス・ブラナーが監督・主演し、
ケイト・ウィンスレットがオフィーリアを演じた、
上映時間242分の大作『ハムレット』が日本で公開された。
『タイタニック』の前年に制作された作品だが、
日本では、『タイタニック』より遅れて公開されたのは、
やはり『タイタニック』効果があったからかもしれない。
4時間を超えるこの『ハムレット』も、
ケイト・ウィンスレットに逢いたくて、
わざわざ福岡の映画館(ソラリアシネマ)まで見に行った。
4時間超えの作品なので、途中に休憩があり、
鑑賞者全員にカロリーメイトとファイブミニが配られたのを覚えている。


この後も、
ケイト・ウィンスレットの出演作はよく見ているが、
このブログで映画レビューを書くようになってから最も印象に残っているのは、
やはり、『愛を読むひと』(2008年、日本公開は2009年)である。
私の好きな小説『朗読者』(ベルンハルト・シュリンク)が原作だったということもあるが、
とても素晴らしい作品で、
この『愛を読むひと』で、ケイト・ウィンスレットはアカデミー主演女優賞を受賞している。


昨年見た『とらわれて夏』(2013年、日本公開は2014年)も良かったし、
ケイト・ウィンスレットは、私にとって、
常に気になる存在であり続けている。


そのケイト・ウィンスレットが主演した最新作『ヴェルサイユの宮廷庭師』を見た。
日本では10月10日に公開された作品であるが、
佐賀では、12月になってやっと(シアターシエマで)見ることができたのである。

1682年、フランスの田園地方。
心に傷を負い、
造園家としてひとりで生きるサビーヌ・ド・バラ(ケイト・ウィンスレット)の元に、


時の国王ルイ14世(アラン・リックマン)からの書状が舞い込む。


それは王が造営するヴェルサイユ王宮の庭園建設参加を求めたものだった。
庭園建設の責任者アンドレ・ル・ノートル(マティアス・スーナールツ)の面接を受けるが、
伝統と秩序を重んじる彼と対立してしまう。


落選を覚悟したサビーヌだったが、
ル・ノートルは自由な精神で庭と向き合う彼女の言葉が忘れられず、
宮殿における中心的な庭園造り(“舞踏の間”の建築)をサビーヌに任せることにする。
そして、
大きな可能性を秘める彼女に、ル・ノートルは次第に惹かれていくのだった……



サビーヌ・ド・バラ(ケイト・ウィンスレット)が任されるのは、
ヴェルサイユ宮殿に実在する、“ロカイユの木立”の別名を持つ“舞踏の間”。
実際には、
この映画に登場するアンドレ・ル・ノートルという人物によって造園されたものであるが、
〈完全なる秩序の中に「少しの無秩序」が光る庭園が、もし一人の名も無き女性庭師の手によるものだったら……〉
〈その女性庭師には、秘められたロマンスがあった……〉
と、脚本家のアリソン・ディーガンが空想し、
その想像力から生まれたのが、本作である。


本作の魅力は、
なんといってもケイト・ウィンスレットだ。
撮影中は、3人目の子を身ごもっていたとのことだが、
迫力ある(?)そのボディで、颯爽と動き回る。


庭師なので、男顔負けの仕事振りを見せるのだが、
そのオトコマエさは、惚れ惚れするほどだ。


サビーヌに好意を抱くル・ノートルには、
契約結婚によって夫婦となった妻がいて、
互いに干渉しない約束だと公言するマダム・ル・ノートル(ヘレン・マックロリー)は、
平然と愛人との逢瀬を楽しんでいる。


だが、夫と女性庭師との仲に気づき、
サビーヌの仕事を邪魔するような陰謀を企て、実行する。
その企てにより、サビーヌの手掛ける庭園は壊滅的なダメージを受けるが、
ル・ノートルや職人たちの助けもあり、
サビーヌは自らの仕事を成し遂げていく。


その過程で、
ル・ノートルや職人たちだけでなく、
国王や、


貴婦人たちの心をも魅了していく。


最初は、田園地方に住む寂しげな女性庭師であるが、


周囲の信頼を勝ち得ていくうちに、
見違えるように美しくなってくる。


その変化を、ケイト・ウィンスレットは実に上手く演じている。


最近でこそ、建築業や造園業などで活躍する女性が話題になっているが、
17世紀の昔に、庭師として活躍する女性の話は意外性があったし、
物語としても、とても面白かった。
ケイト・ウィンスレットのファンの男性はもちろん、
多くの女性に見てもらいたい作品である。

年末から年始にかけて上映を予定している映画館も少なからずあるので、
若者向け、子供向けの正月映画に飽き足らなさを感じている大人なあなたに……
ぜひぜひ。
(上映館はコチラから)


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