一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『箱入り息子の恋』 ……本年度屈指のラブコメであり、感動作だった……

2013年10月25日 | 映画
佐賀県に住んでいて、
それほど不便を感じることはないが、
文化的な環境だけはやはり如何ともしがたく、
舞台、コンサートはもちろん、
映画も、佐賀で上映される作品は少なく、
それだけが不満だ。
いつもいつも福岡まで見に行くことはできないし、
見逃してしまう作品も多々ある。
今年(2013年)6月8日に公開された映画『箱入り息子の恋』も、
そんな作品のひとつであった。
主演の星野源にはそれほど関心がなかったが、
ヒロイン役の夏帆には、
映画『天然コケッコー』(2007年)を見て以来、好印象を持っていたので、
ぜひ見たいと思っていたのだ。
やや諦めかけていた作品なのだが、
10月12日から(25日まで)シアターシエマで上映が決まり、
数日前にやっと見ることができた。


そして、見た感想はというと、
これが、本年度屈指のラブコメであり、感動作であったのだ。
今年も多くの映画を見たが、
芸術性や完成度で評価すれば他の作品になると思うが、
「一番好きな作品は?」と訊かれたら、
この作品を挙げるかもしれない。
それほどの好印象を私に残してくれた。


市役所に勤める天雫健太郎(星野源)は、
内気で愛想がなく、女性と付き合ったことが一度もなかった。
35歳の童貞こじらせ系独身男。


家と職場を往復するだけの日々で、
ペットのカエルが唯一の癒し。


そんな息子を見かねて、
健太郎の両親は、親同士が子どもの結婚相手を探す‟代理見合い”に参加。
今井家の美しい一人娘・奈穂子(夏帆)とのお見合いを決めてくる。
実は、彼女の目がまったく見えないということは知らずに……
お見合い当日、
緊張する中、清楚で美しい奈穂子を見て、
健太郎は生まれて初めて恋に落ちる。
だが、平凡で無気力な健太郎を見て、
「まっとうな男じゃないと娘はまかせられん」
と奈穂子の父(大杉漣)が猛反対。
好きという感情を爆発させる健太郎であったが、
二人の行く手には、幾多の壁が立ちふさがっていた……。


俳優、音楽家、文筆家でもある星野源の初主演映画なのだが、
一部の人たちからは熱烈な支持があるものの、
知名度においてはやはりかなり劣るので、
パッとポスターを見ただけでは、インパクトに欠けるし、
事実、今年6月公開時には、それほど話題にならなかった。


だが、この星野源が好い味出していた。
草食系の童貞独身男を巧く演じていたし、
初めて恋をしたことで、
感情を爆発させ、疾走し、絶叫する男に変貌していく姿が見事であった。


奈穂子役の夏帆。
私は彼女を目当てに見に行ったのだが、
まったく期待を裏切らない素晴らしい演技で、感動させられた。


雨に濡れながら佇むシーン、
お見合いのときのシーンなど、
忘れがたい場面が多かったが、
秀逸だったのは、ひとりで行った吉野屋で、牛丼を食べながら泣くシーン。
見ているこちらの人間も、大いに泣かされた。
牛丼を食べるシーンで泣かされたのは、私にとって、おそらく初めて経験。
あのシーンだけでも、この映画を見る価値はあると思う。
『天然コケッコー』とともに、この『箱入り息子の恋』も、
夏帆の出演作として長く私の記憶に残ることであろう。


主演の星野源の知名度はそれほどでもなく、
ヒロインの夏帆もそれほど自己主張する女優ではないので、
作品的にやや地味目の印象を受けるが、
実は、脇を固める共演者が豪華なのだ。
健太郎の両親が、平泉成と森山良子。


奈穂子の両親が、大杉漣と黒木瞳。


ことに、黒木瞳の存在感は抜群で、
健太郎と奈穂子の仲を取り持つような役でもあったので、好印象であった。


平泉成と森山良子は、大いに笑わせてくれたし、




大杉漣の猛反対ぶりも見事で、作品を最大限に盛り上げてくれた。


たくさん笑わせられ、たくさん感動させてくれたこの作品、
上映館がそれほど多くなかったので、
見ていない人が多いのではないかと思う。
12月にはDVDが発売されるので、
年末には見ることができるが、
九州では、大分県「日田リベルテ」で、
11月2日(土)から15日(金)まで公開予定。
くじゅうへ行った帰りにでも、ぜひぜひ。
超オススメの映画です。


【予告編】

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