一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『九月の恋と出会うまで』…高橋一生と川口春奈による純粋なラブストーリー…

2019年03月04日 | 映画


私は、現在、佐賀県に住んでいるが、
出身は長崎県(佐世保市)である。
なので、長崎県出身の女優は、
原田知世とか、
仲里依紗とか、
いつも気になっている。
なかでも長崎県五島市(旧・福江市)出身の川口春奈は、
〈しっかりやっているだろうか……〉
と、まるで本当の親のように心配している。(コラコラ)

昨年大みそかに放送された、
「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!大晦日年越しスペシャル!絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時」
で魅せた衝撃のスケバン姿は好評であったし、


現在放送中のTVドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(2019年1月19日~、日本テレビ)では、和倉楓の役で頑張っているし、


今年(2019年)2月22日からオンエアされている、
クラシエのヘアケアブランド「いち髪」のCMも評判となっている。


だから、もう私が心配などしなくても大丈夫なのであるが、
ついつい応援したくなるのである。(笑)
その川口春奈の主演作(高橋一生とのW主演)『九月の恋と出会うまで』が、
3月1日(金)に公開された。
「書店員が選んだもう一度読みたい文庫」の恋愛部門でトップに輝いた松尾由美の小説を実写映画化したもので、


小説家を目指す営業マンと、その隣室に越してきた女性が、
ある謎を追い掛ける中で惹かれ合う奇跡の恋の物語だという。
〈見なければ!〉
と思った。
で、雨の日曜日、映画館へ向かったのだった。



ちょっと不思議なマンションに引っ越してきた北村志織(川口春奈)は、


マンションのオーナーである権藤(ミッキー・カーチス)、


マンションの住人・倉(浜野謙太)や、


祖父江(中村優子)、


そして、小説家志望の風変わりな隣人平野進(高橋一生)と出会う。


ある夜、部屋のエアコンの配管を通す穴から、
「1年後の未来にいる」
という男の声を聞き、
声の主に平野の尾行を頼まれる。
“未来からの声”に半信半疑であったが、
次々に予言を的中させるその声を信じざるを得なくなる。
会社の後輩・香穂(川栄李奈)の誘いも断り、


平野への尾行を繰り返しているうちに、


ある日、志織の部屋に空き巣が入り、
その空き巣が殺人を厭わない凶悪な強盗であったことが判明する。
もし志織が在宅していたならば、殺されていたかもしれない……
この事件をきっかけに、1年後からの声は聞こえなくなり、
あの声は何だったのか解明しようとする志織。
志織からこの不思議な出来事の相談を受けた平野は、
「もしかしたら、強盗殺人に遭うところだった志織さんを助けようと、時空を超えて届いた声だったのではないか……」
と、推理する。
そして、もし、それが本当なら、
「助かった志織さんに“タイムパラドックス”が生じる」
と告げる。


それは一年後、志織の存在が消えることを意味していた。
志織が助かるためには未来の声が誰なのかをつきとめて、
一年後に同じことを再現してもらわなければならない。
タイムトラベルをしてまで志織を助けたかったのは、一体誰なのか……
一緒に未来の声の主探しに協力するうちに、


急速に惹かれ合っていく平野と志織。


最初は、志織の元カレ・森秋真一(古舘佑太郎)が声の主ではないかと推測するが、


自分の殻を破れずにいる平野は、次第に、
志織にとって自分が運命の相手=未来の声の主ではないと考えるようになる。
志織が“タイムパラドックス”によって消されてしまうまで、あと一年。
二人の別れの時は近づいていた……




“タイムパラドックス”を描いた映画はたくさんあるので、
それほど新鮮味はなかったが、
登場人物も少なく、ほとんど高橋一生と川口春奈が出ずっぱりで、
すっきりまとまっている佳作であった。
高橋一生と川口春奈のファンには堪らない一作になっている。


山本透監督が、

ファンタジーやサスペンスといった要素が含まれているが、実はシンプルに、愛する人のために何でもしてあげたいという気持ちが、奇跡を起こすことを描いている。

と語るように、
“タイムパラドックス”を利用したラブストーリーなのである。
なぜ声だけがタイムスリップするのか……など、
この手の映画にありがちな疑問に思う箇所も多々あるが、
理詰めで矛盾を追及するのは野暮と言うものであろう。
「書店員が選んだもう一度読みたい文庫」の恋愛部門でトップに輝いた小説が原作なので、
純粋にラブストーリーとして楽しむのが、正しい鑑賞法なのだと思う。


僕はこれまで、お客さんがどれだけ気持ちよく映画館を出られるかということを大事にしてきました。ビターエンドやホラーはダメなんです。苦さを重視する作品もありますけれど、僕はそういう作家ではありません。見た人が気持ちよくなれるハッピーエンドのものを作りたい。そして、少しでもポジティブなものを熱量として伝えたい。この映画はラスト10分にいろいろな謎が解け、平野は最後にやっと自分の言葉で想いを告げます。その温かさをたくさんの人に感じていただけたらうれしいです。

と山本透監督が語るように、
私自身も、映画を見て、なんだかピュアな気持ちが蘇ってきたし、
気持ちよく映画館を出ることができた。


平野(高橋一生)が、
「男はみんな奇跡を起こしたいと思っている」
と言うセリフがあるのだが、
志織を助けたいという想いが、
それまで破れなかった自分の殻を破り、
その結果、奇跡のようなことが起きる。
この奇跡こそが、山本透監督が描きたかったものなのだろう。

それが、エンドロールに流れるandropの「Koi」にも繋がっているような気がした。


映画館で、ぜひぜひ。

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