一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

北アルプス2013「美しき夏の記憶」番外編 ……小説より奇なる話……

2013年12月22日 | 北アルプス(鷲羽岳・雲ノ平・薬師岳)
2013年も残り少なくなり、
一年を振り返りたくなる時期になった。
今年もいろんな山へ登ったが、
今夏の北アルプス行は、
特に印象深いものがあった。

新穂高温泉から入り、
双六岳、鷲羽岳、雲の平、薬師岳を経て、
折立へと抜けるルートを歩いたのだが、
鏡平山荘のテラスで、
「幸運の女神」であるよう子さんと出逢ったからだ。


予定していた5日間の天気予報はすべて傘マークだったにもかかわらず、
よう子さんに出逢ってからは、
ほとんど雨は降らず、
珍しい高山植物に出逢えたり、


ライチョウを何度も見かけたり、


好いこと尽くめだったのだ。
この旅の記録は、ブログ「一日の王」に、

北アルプス2013「美しき夏の記憶」①佐賀からわさび平小屋まで
北アルプス2013「美しき夏の記憶」②北アルプスで一番美しい花
北アルプス2013「美しき夏の記憶」③雲ノ平で会いましょう
北アルプス2013「美しき夏の記憶」④雲上の楽園から薬師岳へ
北アルプス2013「美しき夏の記憶」⑤燦めきの夏を私は忘れない

と、5回連載したが、
殊の外好評で、多くの方々から、
「アルプスの美女との山行、楽しく読ませていただきました」
「素敵な女神に出会えましたね。羨ましい~」
など、
ひやかしや、
ひやかしや、(笑)
ひやかしのメールをたくさん頂いた。(爆)

リンクさせてもらっている広島県在住のmariさんからは、
次のようなメールが送られてきた。

タクさんのブログを拝見して、
教えていただく花達に、癒されています。
北アルプスでのお話、まるで小説の世界。
吸い込まれるように、見入ってしまいました。
(「徒歩日本縦断の思い出」の記事の)函館のお寿司屋さんのお話も、
映画を見ているようでした。
世の中には、いいお話ってほんとうにいっぱいあるのですね。


いつも一緒に歩いているヤスさんからも、
「なぜ、タクさんの旅は、小説のような面白い出会いがたくさんあるのですかね?」
と言われたりする。

私の旅は「まるで小説のよう」な旅であるらしいのだが、
本人にその自覚がないので、
「なぜ?」と訊かれても困ってしまう。
あえて理由をひとつ挙げるとすれば、
「単独行が多いから……」
ということになるだろうか。
グループや団体で歩いていると、
どうしても出逢いは少なくなる。
仲間内でばかり話すようになるからだ。
だが、単独行だと、自分以外はすべて知らない人ばかりだから、
自然といろんな人と話すようになる。
他人とのふれあいが多くなるのだ。

とは言っても、
人と人の出会いは、不思議なものだ。
予測不能の出来事だし、
偶然に偶然が重なって、
奇跡のような出会いが生まれたりする。

たとえば、六甲全山縦走で出会ったK・Aさん。
この六甲全山縦走は、
海抜0メートルから歩きはじめたこともあって、
須磨海岸から歩いた分や、
道を間違えて余計に歩いた分も入れて、
約17時間もかかってしまった。
17時にはヘッドランプを点灯し、
宝塚にゴールしたのは20時48分だったので、
約4時間は、暗闇のなかを歩いていたことになる。
平日であったし、
こんな夜に歩いている人なんて私以外いるはずがないと思っていたのだが、
K・Aさんに出会ったのだ。


そのときの模様を、私は次のようにブログに書いている。

宝塚の街の灯が見えてきて、
嬉しくなり写真を撮っていたら、
背後からラジオの音が聞こえてきたので、振り向くと、
ヘッドランプを装着した人が下ってきた。
話しかけると、その方も縦走路を下ってきたとのこと。
20:25
K・A氏に出会う。

訊くと、何度も六甲全山縦走されている方で、
六甲全山縦走大会にもすでに4回出場されていて、
今年で5回目だそうだ。
今日は、練習と下見を兼ねて、六甲全山縦走路の半分を歩いてきたとのこと。
一緒に宝塚駅に向かいながら、
全縦(六甲全山縦走の略)のことをいろいろお訊きする。
六甲全山縦走大会は人気があり、
応募が殺到して、最近ではなかなか参加するのが難しくなっているが、
必ず参加できる裏技(笑)なども教えて頂いた。
〈来年は応募してみようかな~〉
とふと思った。
私のことも訊かれたので、
九州から来たことを告げると、大変驚かれていた。
「九州からやってきて、初めての六甲全山縦走を、単独で、一日でやってしまったんだから、大したものですよ」
そう仰って頂いて、なんだか嬉しかった。


このときの模様を、もう少し詳しく書いてみようと思う。
塩尾寺からは、私は六甲全山縦走の地図にしたがって、車道を歩いていた。
宝塚の夜景が見えてきたので、立ち止まって写真を撮っていた。


その写真を撮っていた場所には、狭い路地へと下っていく階段があった。
K・Aさんが私の横をすり抜け、その階段を下って行かれるのを見て、
私の方から声をかけたのだ。
ヘッドランプをしてザックを背負っておられたので、
すぐに六甲全山縦走している人だと判断したのだが、
私が歩いて行こうと思っている車道ではない道を選択されたので、
不安になって声をかけたのだ。
K・Aさんは、
「ここまできたら、ゴールまではどの道を歩いてもいいんですよ。こちらの方が近道ですよ」
と教えて下さった。
で、K・Aさんと宝塚駅まで一緒に歩くことになったのだが、
歩きながらいろんな話をした。
K・Aさんは、途中で、観光客に道を訊かれたので、道案内をしていて遅れてしまったとのこと。
私は道を間違えて遅れてしまっていたし、
どちらかが何事もなければ出会うことはなかったのだ。
宝塚の夜景の写真を撮ろうと私が立ち止まらなければ、
私はそのまま車道を歩いていただろうし、
K・Aさんとは出会っていなかっただろう。
すれ違っても、あのとき私が話しかけなかったら、出会いにはならなかった。
偶然に偶然が重なり、
K・Aさんと出会ったのだ。


今夏の北アルプス行をブログに連載し終えた頃、
そのK・Aさんから、メールが届いた。
そして、メールの文面を見て、私は驚愕したのだった。

ご無沙汰しております。
久しぶりに「一日の王」のブログを拝見してびっくりしました。
私(二人連れ)は7月25日の早朝、
新穂高温泉から歩き出して、三俣山荘に同じ日に宿泊していたのです。
タクさんが出会った彼女とは、夕食時、同じテーブルでした。
翌日、小屋を5時30分に出て、
鷲羽岳に、山頂で7時13分まで滞在。
山頂付近でもすれ違っていたんですね。
いやぁ~驚きました。
その後笠ヶ岳まで戻る予定でしたが、
鏡平山荘泊で、翌日27日に新穂高に下山しました。
毎年7月末に槍~穂高あたりを歩いているんですが、
今年は早くに梅雨明けしたのに、天候不順で雨でしたね。
(後略)



私とK・Aさんは、
三俣山荘ではすぐ傍で食事をし、


鷲羽岳山頂付近ではすれ違っていたのだ。


私もK・Aさんも、なぜ気づかなかったかと言えば、
六甲全山縦走でK・Aさんと出会ったとき、
暗闇であったし、
私もK・Aさんも、
お互いの顔をはっきりとは憶えていなかったのだ。


それに、まさか、あんなに広い北アルプスで、
また再会できるなんて思わないもの……ね。

六甲全山縦走で偶然出会った人に、
北アルプスでまた偶然出会ったというような小説を読まされたら、誰しも、
「そんな都合のいい話、まるでリアリティがない」
と、呆れ果てるだろう。
私も、そんな小説は読みたくない。(笑)
でも、現実に、そんなことが起こるんだよね。

「二度あることは三度ある」って諺もあるし、
K・Aさんとは、またどこかで会えるような気がする。
そのときは、お酒でも飲みましょう!
でも、その前に、お互いの顔を認知しておかなくては……ね。(笑)

よう子さんとも、また逢いたいな~(な~んちゃって

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