一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 ……小松菜奈に逢いたくて……

2016年12月27日 | 映画


この映画を見たいと思った理由は、三つ。
一つ目は、小松菜奈が出演していたから。
二つ目は、監督が三木孝浩だったから。
三つ目は、吉田智子が脚本を担当していたから。

小松菜奈を初めてスクリーンで見たのは、
『渇き。』(2014年6月27日公開)においてだった。
その後、
『近キョリ恋愛』(2014年10月11日公開)
『予告犯』(2015年6月6日公開)
『バクマン。』(2015年10月3日公開)
などの話題作に出演した後、
今年(2016年)は、
『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016年2月27日公開)
『ヒーローマニア-生活-』(2016年5月7日公開)
『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年5月21日公開)
『溺れるナイフ』(2016年11月5日公開)
と、出演作品が目白押し状態だった。
中でも、このブログでもレビューを書いている
『ディストラクション・ベイビーズ』と、
『溺れるナイフ』での演技は素晴らしく、
(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
特に、菅田将暉とダブル主演となった『溺れるナイフ』の小松菜奈に、
私は心底惚れてしまった。(コラコラ)
で、今年のラストを飾る出演作『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』も、
楽しみに待っていたのだった。


その映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の監督は、三木孝浩。
ここ数年、
『陽だまりの彼女』(2013年10月12日公開)
『ホットロード』(2014年8月16日公開)
『アオハライド』(2014年12月13日公開)
『くちびるに歌を』(2015年2月28日公開)
『青空エール』(2016年8月20日公開)
と、三木孝浩監督作品はほとんど見ているし、レビューも書いている。
いずれも佳作と呼べる作品ばかりで、ハズレがない。
女優をより魅力的に撮ることに定評があり、
『陽だまりの彼女』では上野樹里を、
『ホットロード』では能年玲奈(現・のん)を、
『アオハライド』では本田翼を、
『くちびるに歌を』では新垣結衣を、
『青空エール』では土屋太鳳を、
これまでにも増して魅力的に撮っている。
私は密かに「光の魔術師」と呼んでいるが、
様々な光を活かした映像は、
女優だけでなく、風景なども、たとえようもなく美しい。
三木孝浩監督作なら、どんな題材でも、
これまでの実績から、
「ある水準以上の作品に仕上げているだろう」
という確信、信用があるし、
ハズレはないと思っている。
その三木孝浩監督の最新作が、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』なのだ。


原作は、七月隆文の同名ベストセラー小説。
2014年8月に刊行されて以来、
WEBサイト「読書メーター」の“恋愛小説のおすすめランキング”で1位をキープし続け、
150万部を突破しているとか。
10~20代女子に最も愛されている大ヒット小説を、
三木孝浩監督作での仕事が多い吉田智子が脚本化(脚色)している。
吉田智子は、
『整形美人。』(2002年、フジテレビ)
『美女か野獣』(2003年、フジテレビ)
などのTVドラマ、
『クローズド・ノート』(2007年)
『岳-ガク-』(2011年)
『僕等がいた 前篇・後篇』(2012年)
『奇跡のリンゴ』(2013年)
『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013年)
『ホットロード』(2014年)
『アオハライド』(2014年)
などの映画で脚本を担当し、
来年(2017年)後期のNHK連続テレビ小説『わろてんか』の脚本も、
彼女が担当することが決まっている。
そんな吉田智子が脚色した『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』なら、
三木孝浩監督と同じくハズレはないと思った。
で、ワクワクしながら、映画館へ駆けつけたのだった。



京都の美大に在籍する20歳の南山高寿(福士蒼汰)は、

ある日、大学へ向かう電車の中で、
読書をしている女性・福寿愛美(小松菜奈)を見た瞬間、恋に落ちる。


今、声を掛けなければもう会えなくなると思い、
高寿は勇気を振り絞って声をかけ、
「また会える?」
と約束を取り付けようとする。
それを聞いた彼女は、なぜか突然、涙してしまう。
その理由を尋ねることができずにいた高寿だったが、
不器用な自分を受け入れてくれる愛美にますます惹かれてゆく。


そして、親友・上山(東出昌大)からの後押しもあり、


初めてのデートで告白をして、見事OKをもらい、交際をスタートさせる。


初めて手をつなぎ、




初めて名前で呼び合う、


そんな初めてのことがあるたびに泣く愛美。
涙もろい愛美を少し不思議に思いながらも、
より彼女への愛情を深めていく高寿。




そんな二人の関係は、誰もがうらやむ程に順調で、
すべてがうまくいくものだと思われた……
「わたし、あなたに隠していることがある」
初めてキスをした日、
高寿は、愛美から想像もできなかった大きな秘密を明かされる。
そして、二人の運命は“すれ違い”始めるのだった……




私は映画館に行く回数が多いので、
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の予告編は何度も見ていたが、
原作は読んでいないし、
その他の情報は仕入れず、
ほとんど予備知識なしで見たので、
とても楽しく、ワクワクしながら見ることができた。
〈愛美(小松菜奈)はいつも何故泣くのだろう?〉
と思いながら見ていたので、
真相が判ったときには、ちょっと感動してしまった。
感動するかしないかは、
この作品のある設定を受け入れられるか、そうでないかで決まるのだが、
私は問題なく受け入れられたし、
素直に感動できた。
あまりにも良かったので、
映画鑑賞後、原作も読んでみたが、
原作よりも映画の方が優れているように感じた。
原作を読んだ時は、やはりその設定に矛盾を感じたし、
〈この原作をこれほどの映画になるよう、よくぞ脚色してくれました〉
と、脚本を担当した吉田智子を褒めたくなった。
難しい設定を、実に巧く構成していたし、
吉田智子なればこそ……と思ったのだった。


かつての三木孝浩監督作品『陽だまりの彼女』も、
ちょっとファンタジーっぽい不思議な設定の映画だったが、
三木孝浩監督の手にかかると、不自然さがなく、
鑑賞者はすんなりとそのストーリーを受け入れてしまう。
難しい設定の原作を、これほどの作品に仕上げたのは、
脚本を担当した吉田智子と共に、
監督が三木孝浩なればこそ……とも思った。
今回も、三木孝浩監督作品にハズレなしであった。


小松菜奈もすこぶる良かった。
『ディストラクション・ベイビーズ』や『溺れるナイフ』では、
相手の男優が演技派の柳楽優弥や菅田将暉だったので、
演技の方はちょっと見劣りしたが、
今回は相手が福士蒼汰だったということもあって、
(福士蒼汰ファンの方、ごめんなさい)
見劣りすることはなかったし、
むしろ演技的には福士蒼汰をリードしているようにも見えた。
『渇き。』や『ディストラクション・ベイビーズ』の時のような、
ぶっ飛んだ演技の小松菜奈も良かったが、
本作のような切ないストーリーでの小松菜奈も〈いいな〉と思った。


来年(2017年)は、
TVドラマ『赤の章〜警視庁庶務係ヒトミの事件簿』(2017年2月22日、NHK総合)
で、主演・中野瞳役が決まっており、
映画『沈黙 -サイレンス-』(2017年1月21日公開)や
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年夏公開予定)
への出演も決まっているようなので、期待して待ちたいと思う。



※注意
最後にちょっとネタバレします。
これから『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を鑑賞予定の方は、
以下の文章は、映画を見た後にお読み下さい。

と言っても、読むよね。(笑)


この映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を見て、
私がすぐに思い出したのは、
日本では2009年2月7日に公開された映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』だ。
(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
この映画は本当に感動したし、
難しい設定のストーリーを見事に映画化していた。
主演は、ブラッド・ピットとケイト・ブランシェット。
脚本は、アカデミー脚本賞受賞作『フォレスト・ガンプ/一期一会』のエリック・ロス。
そして、監督は、『セブン』などで有名なデビッド・フィンチャー。

この『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のパラレルワールド版が、
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』ではないかと思った。

※パラレルワールド(parallel world)とは、
ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。
並行世界、並行宇宙、並行時空ともいう。

原作者の七月隆文がどういう着想で『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を生み出したのかは判らないが、
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』が少なからず影響を与えているのではないか……
と推測した。
だから、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を鑑賞して感動した人は、
本作『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』も感動できると思うし、
ぜひ見てもらいたいと思った。
それから、
『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』などの時間軸を扱った作品に感動したことのある人にも、ぜひ見てもらいたいと思った。
この『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』を見た時は、
「今」という時間が愛おしくなり、
一日一日を、一瞬一瞬を、しっかり生きていこう……と思ったものだが、
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を見た時も、
同じような感想を持った。
それから、
〈傍にいる人をもっと愛していこう〉
とも。




若者向けの映画ではあるが、
中高年世代が見ても感動できる作品である。
映画館で、ぜひぜひ。

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