森川葵という女優を初めて強く感知したのは、
フジテレビ系のTVドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年1月18日~3月21日)においてであった。
それぞれに辛い過去を背負っているにも関わらず、
明るく前向きに生きようとする主人公の音(有村架純)と練(高良健吾)の二人を中心としながら、
彼らを取り巻く四人の男女(西島隆弘、高畑充希、森川葵、坂口健太郎)の想いが、
複雑に絡み合いながら物語が進んでいく群像ラブストーリーで、
坂元裕二によるオリジナル脚本が話題のドラマであった。
視聴率はそれほどでもなかったが、
ドラマ通の間では評価が高く、
第3回コンフィデンスアワード・ドラマ賞作品賞・脚本賞などを受賞している。
このドラマに、市村小夏役で出演していたのが森川葵で、
私は、その個性的な顔立ちと、素晴らしい演技力に魅了された。
そして、ほぼ同時期に、
『A-Studio』(2016年4月1日~2017年3月24日、TBS系)で、
笑福亭鶴瓶のアシスタントにキャスティングされ、
そこでのトークも私に好印象を与えた。
いつか森川葵が主演の映画が見たいなと思っていたら、
彼女が主演する映画が、10月14日に公開された。
それが本作『恋と嘘』である。
漫画アプリ、マンガボックスで連載され、2017年夏にはテレビアニメされた、
ムサオ原作の同名人気マンガを実写化した青春ロマンスで、
国から結婚相手を指定される法律が施行された近未来を舞台に、
政府が見つけた相手と幼なじみとの間で揺れる女子高校生の物語で、
森川葵の他、北村匠海、佐藤寛太なども出演している。
今流行りのキラキラ映画のようであるが、
これまで見たことのない森川葵に出逢えると思い、
映画館へ向かったのだった。
子化が進んだ未来の日本では、
政府が国民の遺伝子情報を分析し、
最適な結婚相手を通知する「超・少子化対策法」が施行されていた。
16歳の誕生日に“政府通知”が送信され、
それを受け入れると自由恋愛は禁止となるものの、
遺伝子レベルでのマッチングシステムは功を奏し、
“科学の赤い糸”と呼ばれ、幸せな結婚のかたちとして定着していた。
人よりちょっと優柔不断な仁坂葵(森川葵)は、
“政府通知”が教えてくれる相手をずっと心待ちにしている女子高生。
そんな葵は、誕生日前日に、幼なじみの司馬優翔(北村匠海)に突然「好きだ」と告白される。
小さな頃からいつもそばにいてくれる心優しい優翔の気持ちに戸惑う葵のもとに、
無口でミステリアスな高千穂蒼佑(佐藤寛太)が政府通知の相手として現れる。
葵は蒼佑に心惹かれていくのだが……
国から結婚相手を指定されるという、
ちょっとありえない設定であるが、
まずはこの設定を受け入れること。
そうしなければ、この映画を十分に楽しむことはできない。
これまで様々なSF映画、近未来映画で、
それこそ多くの無理難題の設定を受け入れてきたので、(笑)
この程度の設定ならば、容易に受け入れることができた。
昔は、親が決めた許婚(いいなずけ)と一緒になることが当たり前の時代があったが、
国が決めた許婚と思えば、さほどの違和感はない。
国から結婚相手を指定されるといっても、
それほどの拘束力はなく、
自由恋愛を選択しても問題はない。
ただ、“政府通知”を受け入れると、自由恋愛は禁止となる。
国から指定された結婚相手以外の異性と二人きりでいたりすると、
監視員のような男に注意される。(笑)
この映画は、
政府が見つけた相手と、
これまで仲良しだった幼なじみとの間で心が揺れる女子高校生の物語で、
その主人公・仁坂葵を、森川葵は実に巧く、可愛く演じていた。
普段、シリアスなドラマで、憑依系女優、カメレオン女優と呼ばれるほどに、
演技に対して高い評価のある彼女であるが、
私個人としては、
そんな森川葵ではない、キラキラ映画での森川葵を見ることができて、
とても嬉しかったし、大満足であった。
(いやいや、この『恋と嘘』でも、仁坂葵という女子高生に憑依し、カメレオン化していたのかもしれない……)
仁坂葵の幼なじみ・司馬優翔を演じた北村匠海。
映画『君の膵臓をたべたい』(2017年7月28日公開)で見たばかりで、
その印象が強いのだが、
(ちょっとネタバレになるが)
そのキミスイに似た設定のところもあり、
興味深かった。
『君の膵臓をたべたい』での北村匠海に感動した人は、
また違った意味での感動をもらえることだろう。
(ネタバレにならないような微妙な言い回し)
国が指定した結婚相手・高千穂蒼佑を演じた佐藤寛太。
劇団EXILEのメンバーで、
福岡県出身(1996年6月16日生まれ)の21歳。(2017年10月現在)
映画出演は、シリーズ物の
『HiGH&LOW』(2016年~2017年)と、
『イタズラなKiss』(2016年~2017年)のみで、
この両シリーズを見ていない私は、
本作『恋と嘘』で、初めて佐藤寛太という男優を知った。
演技はこれからといった感じではあるが、
目が印象的で、
高千穂蒼佑という役をクールに演じていて、
将来に期待が持てる俳優だと思った。
この他、
葵の叔父で、良き相談相手、四谷大輔役に徳井義実、
葵と優翔のクラスメイトの小夏役に、
SUPER☆GiRLSとして活躍しながら、女優としても注目を集める浅川梨奈、
秋帆役には、現役セブンティーンモデルの田辺桃子、
葵と優翔の行きつけのクレープ屋の店員に、温水洋一、
政府通知で結婚した葵の両親に、遠藤章造と三浦理恵子、
同じく政府通知で結婚した蒼佑の両親に、中島ひろ子、木下ほうかが主演しており、
それぞれが個性あふれる演技をしている。
監督は、古澤健。
このブログでもレビューを書いている『今日、恋をはじめます』(2012年)の監督で、
この他、
『ルームメイト』(2013年)
『クローバー』(2014年)
『ReLIFE』(2017年)
などを監督し、
今年(2017年)11月11日公開予定の映画『一礼して、キス』も控えている。
監督作が連続している所為か、
本作『恋と嘘』の完成度はイマイチで、
やや雑な作りになっており、それだけが残念。
とってつけたようなエンドロールの映像と、
エンドロールが終わってからの映像は、
(原作を読んでいないので何とも言えないが……)
極私的には蛇足という感じがした。
エンドロールの時に席を立った人もいたが、
今回だけはそれが正解だったかもしれない。(笑)
まあ、作品的には、秀作とも佳作とも言えないが、
森川葵が好きな人には、見逃せない作品になっている。
こういう映画も見ていなければ、
これからの活躍が期待される森川葵という女優を論ずることはできない。
映画館で、ぜひぜひ。