一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

チョモランマより鬼ノ鼻山

2007年07月01日 | 音楽・美術・その他芸術
山の雑誌『山と溪谷』(7月号)を読んでいたら、チョモランマに関するニュースが載っていた。
今年の5月初めから24日までの3週間で、なんと514人が登頂したというのだ。
2008年北京五輪聖火リレーのエベレスト越えをめざす中国隊は、約250人の試登隊を送り、17人が頂上に立ったそうだ。
チョモランマの山頂が、聖火リレーのコースになっていることにも驚かされるが、それにしてもスゴイ登頂者数である。
私の地元の山・鬼ノ鼻山にはよく登るが、日曜日でもめったに人に会わない。
もしかすると、鬼ノ鼻山よりもチョモランマの方が登山者数が多いかもしれない。
この『山と溪谷』には最後の頁に、アルピニストの野口健氏がエッセイを書いているが、彼も5月15日にチョモランマに登頂したそうだ。
その野口氏のエッセイに驚くべきことが書かれている。

《それにしても、この10年でチョモランマ……いやチベットは変わった。ラサは区画整理され、共産圏によくある飛行機の滑走路かと見間違えてしまうほどの大通りがいくつも並んでいた。その道ばたには巨大ショッピングセンターに高級ホテルが建ちならび、ラサからチョモランマまでの砂漠地帯の一本道も、そのほとんどにまっ黒なアスファルトが敷かれていた。》

《驚いたのは、チョモランマ・ベースキャンプの入口にホテルや飲食店がズラリとならび、夜には隠れ売春宿として、その趣旨を変化させる。ホテルの前を歩いているとき、チベット人女性に「泊まっていかない?」と黄色い声をかけられたときには、はたしてここがチョモランマなのかと目を疑ってしまった。》

《ベースキャンプには観光バスまでが乗り入れ、私たち登山隊は動物園の動物のように一般観光客にカメラを向けられた。》

ベースキャンプ周辺の清掃活動を行ったら、中国隊から「オリンピック前にチョモランマにゴミがあることを公にするな」と注文がつき、「そんなことを指摘する前に、落ちているゴミのひとつでも拾え」と憤慨したそうだ。
チョモランマのノースコル(7000m付近)に登ってみたら、200張り以上のテントが張られており、至るところがロープに囲まれていたり、旗がさしてあって、さながら花見の場所取りのようだったとか。しかも酸素ボンベなどの盗難が多発していて驚いたそうだ。

いやはや、チョモランマはたいへんな事態に陥っているのである。
野口氏は、この10年でチョモランマに8回通ったとか。
だが、今回の登頂で、チョモランマは「最後」にするそうだ。

《10年間、いろいろあっただけに思いが強く、去りがたいと感じつつも、これ以上荒んだ世界最高峰を見たくない。》

発売されたばかりの『Green Walk』(Vol.23 夏号)を読んでいたら、九州マウンテンガイドサービス(山下健夫ガイド事務所)の広告が載っていて、そこでエベレスト登山の登頂隊員を募集していた。
参加費は600万円。(ヒエ~!)

アウトドア雑誌『BE-PAL』(7月号)が面白い特集を組んでいる。
題して「47都道府県おすすめ235低山リスト付き・ニッポンの低山は寄り道が楽しい!」
寄り道が楽しい低山を各都道府県から5山ずつリストアップし、5×47=235の低山を紹介している。
現地ナチュラリスト、地元観光協会ガイド、本誌記者の聞き込み情報等から、寄り道の面白さを中心にセレクトしたものだそうだ。
気になる佐賀県の山は、

基山(404m)
鎮西山(200m)
鬼ノ鼻山(435m)
黒髪山(516m)
鏡山(284m)

私の地元の山「鬼ノ鼻山」が選ばれていたので驚いた。
鬼ノ鼻山は、山頂付近が開発され過ぎていて、よく登っている割には、私自身はそれほどの山とは思っていなかっただけに、意外な気がした。
《一帯は「鬼ノ鼻山憩いの森」として整備され、森林浴、草スキーなど、レクリエーションの場として親しまれている》というのが選定理由のようだ。
理由はどうであれ、全国235低山に選ばれたのだから、大したものだ。

「ヒマラヤよりウラヤマ」(辻まこと)

自宅の玄関から登山靴を履いて登れる「鬼ノ鼻山」をこれからはもっと愛し、何度でも登ろうと決意したことであった。


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