今年(2018年)から始めている「逢いたい人に逢いに行く」という企画。
これまで、
1月27日、E-girlsのパフォーマーであり女優の石井杏奈(イベント)、
2月11日、女優でボーカリストの薬師丸ひろ子(コンサート)、
2月26日、女優の蒼井優(舞台)、
3月17日、ボーカリストの手嶌葵(コンサート)、
4月7日、女優でボーカリストの薬師丸ひろ子(映画祭)
に逢ってきた。
6回目となる今回は、チェンバロ奏者の曽根麻矢子。
【曽根麻矢子】(そね・まやこ)
桐朋学園大学附属高校ピアノ科卒業。
高校在学中にチェンバロと出会い、
1983年より通奏低音奏者としての活動を開始。
1986年ブルージュ国際チェンバロ・コンクールに入賞。
その後渡欧を重ね、同コンクールの審査員であった故スコット・ロスに指導を受ける。
ロスの夭逝後、
彼の衣鉢を継ぐ奏者としてエラート・レーベルのプロデューサーに認められ、
1991年に同レーベル初の日本人アーティストとしてCDデビューを果たした。
以後、
イスラエル室内オーケストラのツアーや録音に専属チェンバリストとして参加するほか、
フランスおよびイタリア等のフェスティバル参加、
現代舞踊家とのコラボレーションなど国際的に活躍。
日本国内でもリサイタル、室内楽と積極的な音楽活動を展開するとともに、
テレビ、ラジオへの出演、雑誌「DIME」でのエッセイ連載、『いきなりパリジェンヌ』(小学館)の刊行など多才ぶりを見せている。
録音活動も活発に行い、エイベックス・クラシックスよりCDを多数リリースしている。
また、
2003年からの全12回、6年にわたるJ.S.バッハ連続演奏会(浜離宮朝日ホール)に続き、
2010年から2014年まで全12回のF.クープランとラモーのチェンバロ作品全曲演奏会(上野学園エオリアンホール)を行い、いずれも好評を博した。
1996年「第6回出光音楽賞」をチェンバロ奏者として初めて受賞。
1997年飛騨古川音楽大賞奨励賞を受賞。
2011年よりスタートした「チェンバロ・フェスティバルin東京」では芸術監督をつとめている。
上野学園大学特任教授。
チェンバロとは?
鍵盤を用いて弦をプレクトラムで弾いて発音させる楽器で、
撥弦楽器(はつげんがっき)、または鍵盤楽器の一種に分類される。
英語ではハープシコード、フランス語ではクラヴサンという。
狭義にはグランド・ピアノのような翼形の楽器を指すが、
広義には同様の発音機構を持つヴァージナルやスピネット等を含めた撥弦鍵盤楽器を広く指す。
チェンバロはルネサンス音楽やバロック音楽で広く使用されたが、
18世紀後半においてピアノの興隆と共に徐々に音楽演奏の場から姿を消した。
しかし20世紀に復活し、
古楽の歴史考証的な演奏に用いられ、現代音楽やポピュラー音楽でも用いられている。
もともとチェンバロの音色が好きで、
出勤する車の中などでよく聴いているのだが、
日本の奏者では、曽根麻矢子さんのCDを好んで聴いていた。
コンサートも何度か行っており、
CDにサインをしてもらったこともある。
そんな曽根麻矢子さんのコンサートが、
我が家から車で20分ほどの所にある伊万里市の西念寺で行われるという。
そのことを地元紙の記事で知った。
伊万里市大坪町上古賀の西念寺(井手恵住職)で5月19日午後6時から、チェンバロ奏者曽根麻矢子さんのコンサートがある。繊細で豊かな音色に浸りながら心と向き合い、命の大切さなどについて考える。
親鸞聖人の誕生日(5月21日)を祝う降誕会(ごうたんえ)に合わせて毎年、第一線で活躍する音楽家や学識者を招いた催しを開いている。曽根さんは日本を代表するチェンバロ奏者で、バッハの名曲などを披露する。門徒以外でも誰でも入場できる。
「門徒以外でも誰でも入場できる」と書いてあったので、
行ってみようと思った。
西念寺の井手恵住職は、かつて(20数年前)地元紙で、
アレグリーニ・アレグリーノ神父との「往復書簡」を連載されおり、
イタリア人神父と浄土真宗僧侶が語り合うというミスマッチな組み合わせが面白く、
世代、宗教の垣根を超えて、宗教や政治、いじめ、環境問題などを語り合うという内容も興味深かったので、私は毎回熟読していた。
『心のシルクロード : 神父と僧侶の往復書簡』(佐賀新聞社/1995年刊)という本にまとめられ出版されているので、ご存じの方も多いことと思う。
そんな井手恵住職が、今度は、「お寺でチェンバロ演奏」という、これまたミスマッチな面白さのあるコンサートを企画された。
もともとチェンバロの音はそれほど大きくないので、大ホールのような場所は適さない。
案外、お寺のような空間の方が良い音色を生むのではないか……と思った。
で、ワクワクしながら伊万里市にある西念寺へ向かったのだった。
西念寺に到着。
炎は美しい。
本堂の中に入ると、
チェンバロを調律中であった。
調律しているのは、
唐津市浜玉町で工房を構える調律師の中村壮一氏。
このチェンバロは、中村氏自身が1990年に制作したもので、
国内外の一流アーティストの要望を受け、
演奏会でたびたび愛用されているとのこと。
佐賀県にチェンバロは2台しかなく、
その内の1台がこのチェンバロだそうだ。
午後6時が近くなり、
多くの人たちが集まってきた。
午後6時から降誕会のおつとめがあり、
午後6時半からコンサートが始まった。
登場した曽根麻矢子さんはとても若々しく、溌剌としておられた。
ご自身が書かれているブログに、
「生まれ年ワイン」と題し、
ワイン仲間との新年会で、自分の生まれ年ワインをいただきました。
1964年のラフィットロートシルドです。
とても素晴らしい状態でした!
雨に濡れた枯葉の様な香り…
素晴らしい熟成感を堪能させていただきました。
と書かれているので、
1964年(11月11日)生まれの53歳(2018年5月現在)
ぜんぜんそんなお年には見えない。
井手恵住職から、
「自由にお弾き下さい」
と言われていたそうで、
「プログラムなしで弾きたい曲を弾いていきます」
と冒頭に曽根さんは宣言された。(笑)
前半は、
バッハの「アリア」や「プレリュード」、
シャンボニエールの「神達の対話」などを次々に演奏され、
休憩を挟んで、
後半は、全部スカルラッティの曲であった。
曽根さんは、
今年(2018年)7月22日に、
フランスのモンペリエで開催される「スカルラッティ・フェスティバル」に出演することになっており、
そこでは、ソナタ555曲を、30人のチェンバリストで演奏することになっている。
曽根麻矢子さんは、そのうちの17曲を演奏するそうで、
すべて、これまで一度も演奏したことのない曲だとか。
いま、暇を見つけては練習しているとのこと。
後半は、
曽根麻矢子さんが担当するそのスカルラッティの曲を演奏されたのだ。
アンコールは、ソレルの「ファンタンゴ」だった。(井手恵住職からリクエスト)
お寺でのおつとめの後のコンサートということで、
1時間くらいで終わるかなと思っていたら、
2時間を軽く超えるコンサートであった。
井手恵住職からの「自由にお弾き下さい」は、
選曲だけでなく演奏時間も指していたようだ。
曽根麻矢子さんはチェンバロを弾くのが楽しくて仕方ないような感じで、
いつまでも弾いていたいような雰囲気であった。
聴いている我々も幸福感に包まれ、楽しいひとときを過ごすことができた。
今日も「一日の王」になれました~
ソレルの「ファンタンゴ」。