公開日(2018年1月27日)に見た映画なのだが、
レビューを書くのが遅れてしまった。
映画を見た印象もそれほど悪くなかったのだが、
本作以降に見た映画のレビューを先に書いているうちに、
なんだか書くのが億劫になってしまっていた。
で、出勤前に、ちょっと書いていこうかという気になった。
東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。
被害者は滋賀県在住の押谷道子。
殺害現場となったアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。
やがて捜査線上に浮かびあがる美しき舞台演出家・浅居博美(松嶋菜々子)。
しかし彼女には確かなアリバイがあり、捜査は進展しない。
松宮脩平(溝端淳平)は捜査を進めるうちに、
現場の遺留品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることを発見する。
その事実を知った加賀恭一郎(阿部寛)は激しく動揺する。
それは失踪した加賀の母(伊藤蘭)に繋がっていた……
東野圭吾の人気ミステリー小説を映像化した「新参者」シリーズは、
これまで、
2010年に放送された連続ドラマ「新参者」、
2本のスペシャルドラマ、
映画『麒麟の翼 劇場版・新参者』と続いているが、
『祈りの幕が下りる時』は、このシリーズの完結編となる。
主人公の刑事・加賀恭一郎の、父との確執、母の失踪など、
これまで明かされることがなかった加賀自身の謎が明らかとなる。
前作『麒麟の翼 劇場版・新参者』も映画館で見ているのだが、
このブログにレビューは書いていない。
あまり感心しなかったからだ。
殺人の動機が甘く、
レビューを書いたら批判的なものになってしまうと判断したことに由る。
この『祈りの幕が下りる時』も、
〈そんなことで人を殺すかな?〉
という疑問が「なきにしもあらず」なのだが、
全体的な雰囲気が名作『砂の器』に似ており、
なんだか懐かしく見ているうちに、
〈まあいいか……〉
と思ってしまった。(笑)
ちなみに、「号泣必至」だそうだが、涙は出なかった。
スミマセン。(って、なんで謝るんだ)
原作は未読なので、原作もそうなっているのかは分らないが、
映画『祈りの幕が下りる時』は、『砂の器』に酷似していた。
日時、場所など、各シーンの状況を字幕スーパーで表現していることや、
親子の因縁話であること。
そして、ラストのクライマックス、
『砂の器』は演奏会であったが、
『祈りの幕が下りる時』は演劇の舞台で、
音楽家と演出家、男と女の違いはあるが、
『砂の器』を見たことのある人なら、きっと思い出さずにはおられないだろう。
これは、監督である福澤克雄の影響も少なからずあるだろう。
TVドラマ『半沢直樹』や『陸王』などの演出を務めたことで有名だが、
過去に、中居正広が主演したTVドラマ『砂の器』も演出しているからだ。
幼少時代の浅居博美と父親(小日向文世)が、海辺を彷徨うシーンは、
映画『砂の器』のあの名シーンを意識したものであることは明白であろう。
ただ、かの名作『砂の器』とは格調が違う。
すべて点で『祈りの幕が下りる時』の方が劣っている。
まあ、比べること自体が無謀で、失礼なことなのだが、
東野圭吾と福澤克雄監督からの『砂の器』へのオマージュと考えれば、
納得できる一作と言える。
舞台演出家・浅居博美を演じた松嶋菜々子や、
看護師・金森登紀子を演じた田中麗奈が美しく、
加賀の母が住んでいたアパートの大家・宮本康代を演じた烏丸せつこや、
浅居博美の母・浅居厚子を演じたキムラ緑子の演技も見事だ。
「新参者」シリーズのファンならずとも楽しめること間違いない。
映画館で、ぜひぜひ。