![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/4d/1c87797c9d07ef272b7ca84cfda692a6.jpg)
TVドラマにCMにと、
現在、もっとも活躍している女優の一人・貫地谷しほりの映画初主演作である。
TVドラマでは多くの主演を務めているが、
驚いたことに、映画では初主演であったのだ。
1985年12月12日生まれだから、
まだ27歳なのだが、(2013年6月2日現在)
なんだか、ベテラン女優の貫禄というか、
風格があるので、
もうとっくに映画の主演作があると思っていたが、
調べてみると、本当に無い。
『スウィングガールズ』(2004年)
『夜のピクニック』(2006年)
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007年)
など、私の見ている出演作も多いのだが、
主演ではなかったこともあり、正直、あまり記憶に残っていない。
言われみれば、「あ~」と思う程度。
昨年(2012年)見た『僕達急行 A列車で行こう』では、
かなり重要な役であったし、
さすがに強く印象に残っているが、
TVドラマ界における、ここ数年の彼女の充実ぶりからして、
映画の主演作がこれまで無かったのが不思議なくらい。
で、とにもかくにも貫地谷しほりの映画初主演作なので、
見に行くことにした。
ところが問題発生。
映画『くちづけ』の上映館を調べてみると……
【福岡県】
(北九州市)T・ジョイリバーウォーク北九州
(福岡市)T・ジョイ博多
(久留米市)T・ジョイ久留米
(福津市)TOHOシネマズ福津
【長崎県】
(長崎市)ユナイテッド・シネマ長崎
【熊本県】
(熊本市)シネプレックス熊本
【大分県】
(大分市)T・ジョイパークプレイス大分
【宮崎県】
(宮崎市)宮崎セントラルシネマ
【鹿児島県】
(鹿児島市)鹿児島ミッテ10
【沖縄県】
(郡部)SOUTHERN PLEX
九州で唯一、佐賀県だけが『くちづけ』の上映館がない!
ということで、またまた福岡まで見に行ったのだった。
映画『くちづけ』は、
俳優であり、『花より男子』『愛と誠』等の脚本家としても活躍する宅間孝行が、
自身の劇団「東京セレソンデラックス」(2012年に解散)のために書き下ろした戯曲を、
堤幸彦監督が映像化したヒューマン・ドラマ。
その舞台版『くちづけ』は、
2010年に東京、大阪、名古屋、札幌で上演され、
合計2万4000人の観客を号泣させたという逸話のある話題作。
その舞台の映画化なので、
原作、脚本を手掛け、
メインキャラクターのひとりで知的障がい者のうーやんを演じた宅間孝行が、
映画版でもうーやんに扮していて、
そのうーやんと淡い恋仲になるマコを演ずるのが貫地谷しほりで、
男手ひとつでマコを育てた父・いっぽんを、竹中直人が演じている。
知的障害を持つ娘のマコ(貫地谷しほり)を、
男手ひとつで育てる愛情いっぽん(竹中直人)は、
かつては人気漫画家だったが休業し、すでに30年がたっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/07/a8cd7f78edc12962b6a08bf68ae2780c.jpg)
知的障害者のためのグループホーム「ひまわり荘」で、住み込みで働き始めたいっぽん。
そこで出会ったうーやん(宅間孝行)に心を開くようになったマコ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/c5/6b8632f09b5dd8d769521a3b0defa57f.jpg)
ふたりにとって、〈ひまわり荘〉は、夢のような場所であった。
しばらくの平穏。
だが、現実は厳しく、やがて、そのユートピアにも終わりが訪れる。
そして、いっぽんには、さらなる厳しい運命がふりかかる。
その時、いっぽんが選んだ道は……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/11/aabe2c1e457c297a59b0d027762b9cc9.jpg)
映画が始まり、
グループホーム「ひまわり荘」での日常からスタートする。
うーやん(宅間孝行)が出てきて、
演技を始めるのだが、
これが、舞台での演技そのまま。
〈困ったことになった……〉と、思った。
舞台と映画では、発声法も演技の仕方も違う。
映画にも舞台の演技そのままを持ち込んでいる宅間孝行に違和感を感じた。
続いて出てきた麻生祐未や岡本麗も、演劇的なハイテンション。
やかましいほどの大声、
大袈裟な身ぶり手ぶり、
〈このままずっと、こんな感じの演技を見せられるのか……〉
と、正直、滅入った。
舞台では、映画よりも約束事が優先する。
舞台では、老女優が少女を演じてもOKなのだ。
観客は目に老女が映っていても、少女として見ようとしてくれる。
だが、映画は違う。
実験的作品以外は、老女は老女としか認知しない。
当然、違和感をおぼえる。
映画では、宅間孝行が知的障がい者に見えなければならないのに、
宅間孝行が知的障がい者に見えないのだ。
知的障がい者を演じている(頭の良さそうな)宅間孝行にしか見えないのだ。
(言っている意味、解るかな?)
こんな風に、違和感ありありで始まったので、
最初は、〈見なけりゃ良かったかな?〉と思った。
それを救ってくれたのは、
貫地谷しほり、竹中直人、平田満、田畑智子などの自然な演技だった。
TVドラマや映画で実績のある俳優たちが、
作品を落ち着かせてくれた。
特に、竹中直人は、持ち味である過剰な演技を封印し、
抑えた演技で、父親としての感情を表現していて、秀逸であった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/d2/c4592e0af2a4d6fe8e8e93ae0021ea9e.jpg)
貫地谷しほりは、前半は、目立たない静かな演技。
だが、後半、彼女はスゴイ演技をする。
熱演という言葉では足りないほどの演技で、魅せる。
彼女が主演であることを、見る者にしっかりと強く印象づける。
今年度の映画賞の最優秀主演女優賞にノミネートされるほどの演技であったと言っていいだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/2e/331a43658d099d04934e2d14f2e37358.jpg)
うーやんの妹・宇都宮智子を演じた田畑智子も良かった。
兄が知的障がい者ということが原因で婚約を破棄される妹の役。
複雑な思いを表現しなければならないという難役であったが、
見事に演じていた。
『ふがいない僕は空を見た』(2012年)での素晴らしい演技が記憶に新しいが、
これからも映画への出演を楽しみにしている女優のひとりだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/8a/380d1df0cf3c8eecf930924ee0d4f586.jpg)
国村先生(平田満)の長女・はるかを演じた橋本愛。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/70/530aedee61c6e17e6c6003ed6b084616.jpg)
映画では、『告白』(2010年)や『桐島、部活やめるってよ』(2012年)などで、
TVドラマでは、現在放送中のNHK朝ドラ『あまちゃん』で、
現在、もっとも輝いている若手女優のひとりであるが、
この作品でも、実に好い演技をしている。
6月15日公開の『俺はまだ本気出してないだけ』(2013年)にも出ているようなので、
こちらも楽しみ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/25/32d93d024f79db45cc5c0df79991aade.jpg)
ひまわり荘の住人を演じた、
嶋田久作、屋良学、谷川功の三人も良かった。
特に嶋田久作は、同じ知的障がい者を演じながら、宅間孝行とは対照的に、低い小さな声でボソッと話すところが巧かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/09/4d314cd33cf23483752da821f8854ad5.jpg)
舞台と映画の両方ではるかの同級生を演じた尾畑美依奈も、
記憶に残る演技で素晴らしかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/b1/4f668001ee544a40c6c63b1c8426c85c.jpg)
この作品が、単なるコメディやヒューマンドラマに留まっていないのは、
知的障がい者を取り巻く様々な社会問題を提示しているから。
ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、
きれい事ではない様々な事を問題提起しているので、
見終わった後に、深く考えさせられる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/bc/7437574b0303a7c2f26633088684140d.jpg)
映画としてはやや不満の残る部分もあるが、
貫地谷しほりと竹中直人の演技が、
それらを凌駕し、見る者を魅了する。
特に、映画初主演の貫地谷しほりの演技に圧倒される。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/a6/e0952a8a12ada020824bc1150413a9bd.jpg)
父親にとって娘は恋人のような存在でもある……
とは昔からよく言われる言葉であるが、
この映画は、究極の“父と娘のラブストーリー”であるのかもしれない。
ラストに流れる「グッド・バイ・マイ・ラブ」(歌・熊谷育美)を聴きながら、
そんな風に思った。
現在、もっとも活躍している女優の一人・貫地谷しほりの映画初主演作である。
TVドラマでは多くの主演を務めているが、
驚いたことに、映画では初主演であったのだ。
1985年12月12日生まれだから、
まだ27歳なのだが、(2013年6月2日現在)
なんだか、ベテラン女優の貫禄というか、
風格があるので、
もうとっくに映画の主演作があると思っていたが、
調べてみると、本当に無い。
『スウィングガールズ』(2004年)
『夜のピクニック』(2006年)
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007年)
など、私の見ている出演作も多いのだが、
主演ではなかったこともあり、正直、あまり記憶に残っていない。
言われみれば、「あ~」と思う程度。
昨年(2012年)見た『僕達急行 A列車で行こう』では、
かなり重要な役であったし、
さすがに強く印象に残っているが、
TVドラマ界における、ここ数年の彼女の充実ぶりからして、
映画の主演作がこれまで無かったのが不思議なくらい。
で、とにもかくにも貫地谷しほりの映画初主演作なので、
見に行くことにした。
ところが問題発生。
映画『くちづけ』の上映館を調べてみると……
【福岡県】
(北九州市)T・ジョイリバーウォーク北九州
(福岡市)T・ジョイ博多
(久留米市)T・ジョイ久留米
(福津市)TOHOシネマズ福津
【長崎県】
(長崎市)ユナイテッド・シネマ長崎
【熊本県】
(熊本市)シネプレックス熊本
【大分県】
(大分市)T・ジョイパークプレイス大分
【宮崎県】
(宮崎市)宮崎セントラルシネマ
【鹿児島県】
(鹿児島市)鹿児島ミッテ10
【沖縄県】
(郡部)SOUTHERN PLEX
九州で唯一、佐賀県だけが『くちづけ』の上映館がない!
ということで、またまた福岡まで見に行ったのだった。
映画『くちづけ』は、
俳優であり、『花より男子』『愛と誠』等の脚本家としても活躍する宅間孝行が、
自身の劇団「東京セレソンデラックス」(2012年に解散)のために書き下ろした戯曲を、
堤幸彦監督が映像化したヒューマン・ドラマ。
その舞台版『くちづけ』は、
2010年に東京、大阪、名古屋、札幌で上演され、
合計2万4000人の観客を号泣させたという逸話のある話題作。
その舞台の映画化なので、
原作、脚本を手掛け、
メインキャラクターのひとりで知的障がい者のうーやんを演じた宅間孝行が、
映画版でもうーやんに扮していて、
そのうーやんと淡い恋仲になるマコを演ずるのが貫地谷しほりで、
男手ひとつでマコを育てた父・いっぽんを、竹中直人が演じている。
知的障害を持つ娘のマコ(貫地谷しほり)を、
男手ひとつで育てる愛情いっぽん(竹中直人)は、
かつては人気漫画家だったが休業し、すでに30年がたっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/07/a8cd7f78edc12962b6a08bf68ae2780c.jpg)
知的障害者のためのグループホーム「ひまわり荘」で、住み込みで働き始めたいっぽん。
そこで出会ったうーやん(宅間孝行)に心を開くようになったマコ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/c5/6b8632f09b5dd8d769521a3b0defa57f.jpg)
ふたりにとって、〈ひまわり荘〉は、夢のような場所であった。
しばらくの平穏。
だが、現実は厳しく、やがて、そのユートピアにも終わりが訪れる。
そして、いっぽんには、さらなる厳しい運命がふりかかる。
その時、いっぽんが選んだ道は……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/11/aabe2c1e457c297a59b0d027762b9cc9.jpg)
映画が始まり、
グループホーム「ひまわり荘」での日常からスタートする。
うーやん(宅間孝行)が出てきて、
演技を始めるのだが、
これが、舞台での演技そのまま。
〈困ったことになった……〉と、思った。
舞台と映画では、発声法も演技の仕方も違う。
映画にも舞台の演技そのままを持ち込んでいる宅間孝行に違和感を感じた。
続いて出てきた麻生祐未や岡本麗も、演劇的なハイテンション。
やかましいほどの大声、
大袈裟な身ぶり手ぶり、
〈このままずっと、こんな感じの演技を見せられるのか……〉
と、正直、滅入った。
舞台では、映画よりも約束事が優先する。
舞台では、老女優が少女を演じてもOKなのだ。
観客は目に老女が映っていても、少女として見ようとしてくれる。
だが、映画は違う。
実験的作品以外は、老女は老女としか認知しない。
当然、違和感をおぼえる。
映画では、宅間孝行が知的障がい者に見えなければならないのに、
宅間孝行が知的障がい者に見えないのだ。
知的障がい者を演じている(頭の良さそうな)宅間孝行にしか見えないのだ。
(言っている意味、解るかな?)
こんな風に、違和感ありありで始まったので、
最初は、〈見なけりゃ良かったかな?〉と思った。
それを救ってくれたのは、
貫地谷しほり、竹中直人、平田満、田畑智子などの自然な演技だった。
TVドラマや映画で実績のある俳優たちが、
作品を落ち着かせてくれた。
特に、竹中直人は、持ち味である過剰な演技を封印し、
抑えた演技で、父親としての感情を表現していて、秀逸であった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/d2/c4592e0af2a4d6fe8e8e93ae0021ea9e.jpg)
貫地谷しほりは、前半は、目立たない静かな演技。
だが、後半、彼女はスゴイ演技をする。
熱演という言葉では足りないほどの演技で、魅せる。
彼女が主演であることを、見る者にしっかりと強く印象づける。
今年度の映画賞の最優秀主演女優賞にノミネートされるほどの演技であったと言っていいだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/2e/331a43658d099d04934e2d14f2e37358.jpg)
うーやんの妹・宇都宮智子を演じた田畑智子も良かった。
兄が知的障がい者ということが原因で婚約を破棄される妹の役。
複雑な思いを表現しなければならないという難役であったが、
見事に演じていた。
『ふがいない僕は空を見た』(2012年)での素晴らしい演技が記憶に新しいが、
これからも映画への出演を楽しみにしている女優のひとりだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/8a/380d1df0cf3c8eecf930924ee0d4f586.jpg)
国村先生(平田満)の長女・はるかを演じた橋本愛。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/70/530aedee61c6e17e6c6003ed6b084616.jpg)
映画では、『告白』(2010年)や『桐島、部活やめるってよ』(2012年)などで、
TVドラマでは、現在放送中のNHK朝ドラ『あまちゃん』で、
現在、もっとも輝いている若手女優のひとりであるが、
この作品でも、実に好い演技をしている。
6月15日公開の『俺はまだ本気出してないだけ』(2013年)にも出ているようなので、
こちらも楽しみ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/25/32d93d024f79db45cc5c0df79991aade.jpg)
ひまわり荘の住人を演じた、
嶋田久作、屋良学、谷川功の三人も良かった。
特に嶋田久作は、同じ知的障がい者を演じながら、宅間孝行とは対照的に、低い小さな声でボソッと話すところが巧かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/09/4d314cd33cf23483752da821f8854ad5.jpg)
舞台と映画の両方ではるかの同級生を演じた尾畑美依奈も、
記憶に残る演技で素晴らしかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/b1/4f668001ee544a40c6c63b1c8426c85c.jpg)
この作品が、単なるコメディやヒューマンドラマに留まっていないのは、
知的障がい者を取り巻く様々な社会問題を提示しているから。
ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、
きれい事ではない様々な事を問題提起しているので、
見終わった後に、深く考えさせられる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/bc/7437574b0303a7c2f26633088684140d.jpg)
映画としてはやや不満の残る部分もあるが、
貫地谷しほりと竹中直人の演技が、
それらを凌駕し、見る者を魅了する。
特に、映画初主演の貫地谷しほりの演技に圧倒される。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/a6/e0952a8a12ada020824bc1150413a9bd.jpg)
父親にとって娘は恋人のような存在でもある……
とは昔からよく言われる言葉であるが、
この映画は、究極の“父と娘のラブストーリー”であるのかもしれない。
ラストに流れる「グッド・バイ・マイ・ラブ」(歌・熊谷育美)を聴きながら、
そんな風に思った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/40/ad839fb11f73147d75576894791bbdb8.jpg)