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今年(2017年)話題になった出来事で、
極私的に、最も印象に残っているのは、
豊田真由子議員による暴言、暴行騒ぎだ。
私自身は、基本的に、女性に対してはとても良い印象を持っている。
これまでの人生で、いろんな女性に出会ったが、
その多くは素晴らしい人達であったし、
あれほどに罵声を浴びせ続ける女性には出会ったことがなかった。
だから、
「女性から男性へのDVが増えつつある」
なんて聞いても、
きっとマスメディアによる話題づくりの嘘だろうと思っていた。
……そこへ、豊田真由子議員の録音されたあの声である。
「この、ハゲ~っ!」
「ち~が~う~だ~ろ~!」
罵声の間には、なにやら叩いているような音も聞こえる。
本当に驚いた。
ショックだった。
違った意味での私にとっての“ワンダーなウーマン”であった。(笑)
で、本日紹介する、映画の『ワンダーウーマン』である。
こちらは、皆さんご存知の、
史上最強の女性スーパーヒーローだ。
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アメリカのアメコミ出版社DCコミックスの作品に登場する、
飛行能力などを持つ怪力の美女戦士で、
誕生から75年以上経った現在も、世界中で愛されている。
今年(2017年)の6月2日に公開されるやいなや、
日本を除く(日本は公開が遅れた)全世界で大ヒット。
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全米興収は8月7日時点で約3億9950万ドルと4億ドル目前。
これは、『スパイダーマン』も『怪盗グルー』も『パイレーツ・オブ・カリビアン』も『トランスフォーマー』も超えて、今年の米夏映画最大のヒットなのだ。
そして世界の状況もすごい。
世界興収は8億ドル目前の約7億9340万ドルとなっている。
もうひとつ話題になっているのは、監督が女性だったこと。
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ハリウッドだけでなく、これまで世界の映画界で、
製作費1億5000万ドルもの超大作を女性に任せたことがなかった。
パティ・ジェンキンスという女性監督を起用し、
この『ワンダーウーマン』が大ヒットしたことで、女性監督の評価までも押し上げている。
観客も半分以上が女性で、
これまでこの手の映画は大半が男性だったことを考えれば、
観客動員にも大きな影響を与えた作品と言えるのだ。
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その女性監督であるパティ・ジェンキンスについて、
少しだけプロフィールを紹介しておこう。
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【パティ・ジェンキンス】
アメリカ合衆国の映画監督、脚本家。
1971年7月24日、カリフォルニア州ヴィクターヴィルに生まれる。
父親の職業が戦闘機の操縦士であったことから、幼少の頃は世界各地を転々としていた。
高校で音楽と写真を学んだのち、クーパー・ユニオンで絵画を学んだ。
アメリカン・フィルム・インスティチュートでは演出を学んだ。
2003年、シャーリーズ・セロン主演の『モンスター』で長編映画監督デビューを果たす。
2017年、ガル・ガドットを主演に迎えた監督作品『ワンダーウーマン』が公開。
オープニング興行収入で首位となり、
初週末の興行収入は女性監督作品として最高記録となった。
世界興収でも『カンフー・パンダ2』を超え、
アニメ作品を含めた女性監督作品として史上最高記録を更新した。
この歴史的な成功を受けて2019年公開予定の続編の監督も決定した。
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そう、
もう『ワンダーウーマン』の続編『ワンダーウーマン 2』も決定し、
全米公開日も2019年12月13日と発表されたのだ。
パティ・ジェンキンスの長編映画監督デビュー作となった『モンスター』は、
日本では2004年9月に公開されたが、
私は映画館で見ている。
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シャーリーズ・セロンが13キロ太って役作りをし、
実在のシリアル・キラー、アイリーン・ウォーノスを演じているのだが、
体当たりの演技が評価され、2003年アカデミー賞主演女優賞を受賞している。
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『モンスター』の主人公は、実在した連続殺人犯であるが、
この犯人も違った意味での“ワンダーなウーマン”であったような気がする。
豊田真由子議員のあだ名が“ピンクモンスター”であったこととも符合する。(コラコラ)
パティ・ジェンキンス監督は、
その『モンスター』の後もいろんな映画にオファーされたが、全部断って、
(その間にTVドラマなどの演出をやってはいるが)
とにかく映画『ワンダーウーマン』をやるために14年間を過ごしていたという。
ネックになったのは制作費で、
ハリウッドでは(ということは世界の映画界でも)、
これまで製作費1億5000万ドルもの超大作を女性に任せたことがなかった。
これが難航した第一の要因。
だが、パティ・ジェンキンス監督に任せ、制作してみると、
大ヒットとなり、女性監督映画の史上最大のヒットにもなった。
これは事件と言っていいほどの映画界における出来事だったのだ。
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前置きが長くなったが、
それほどの期待作である『ワンダーウーマン』が、
日本でも8月25日にやっと公開された。
私も、会社の帰りに、映画館へ駆けつけ、
やっと見ることができたのだった。
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邪神アレスの脅威に備え、日々戦闘力を鍛え上げてきたアマゾン族の女戦士たち。
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外界から閉ざされてきた彼女らの島で、
プリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、
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自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。
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ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロット・スティーブ(クリス・パイン)と遭遇。
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スティーブは英軍のスパイで、
彼を救出したことで、人間界の戦争(第一次世界大戦)のことを知ることになる。
戦争の背後にアレスの存在を感じた彼女は、
ドイツの毒ガス虐殺計画を阻止しようと動くスティーブと目的を一致させ、
人類を救うために島を後にする。
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「世の中に不正が起これば、何もしないか行動するかだ」
という、彼の信念に自らを重ねながら……
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上映時間が141分ということで、
一部では「長すぎる」という声もあったようだが、
アッと言う間だった。
とても楽しい141分であった。
映画を見て、最も印象に残ったことは、
女性が主人公ということもあるが、
主人公であるワンダーウーマン(ガル・ガドット)をはじめとして、
すべての女性が美しく、カッコイイ。
ワンダーウーマンは肌の露出の多い服装もあったりするが、
女性監督ということもあるが、まったくイヤらしさがなく、清潔感があった。
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ワンダーウーマンは、女性だけの孤島で育ったプリンセスという設定で、
世界のことは何も知らないお嬢様なのだ。
男性のことも知らないし、
都会で見るもの聞くもの初体験のことばかり。
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ファッションにも興味津々だし、
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初めて食べたソフトクリームに感激する。
そう、これは、ワンダーウーマン版『ローマの休日』であり、
『マイ・フェア・レディ』なのだ。
オードリー・ヘップバーンの数々の名作が、
ワンダーウーマンとして蘇っているのだ。
事実、これらの作品を意識したシーンがいくつもあり、
そういったことが、女性の観客を増やしている要因になっていると思われる。
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女性の観客を増やしているもうひとつの要因は、
このワンダーウーマンは、女性解放運動ともつながっているから。
ワンダーウーマンは、
剣と、盾と、腕輪と、真実の投げ縄という、4つの武器を持っているのだが、
腕輪は、かつてアマゾネスたちがみんな奴隷として手枷をはめられていたことを忘れないための象徴で、
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この腕輪で、銃弾などを跳ね返すし、
時には光線を発して、敵(ていうか男ども)をやっつける。
女性としたら、こんな痛快なことはないだろう。
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この映画を見ていると、
人間界、とくに男の駄目さ加減がよく表現されていて、(笑)
男の私でさえ、
〈本当にそうだよな~〉
と思わされることばかり。
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強者が弱者を迫害し、
女性の権利が剥奪された人間界を目の当たりにして、
ワンダーウーマンも岐路に立たされる。
〈人類は守るに値する存在なのか……〉
と。
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ただの女性スーパーヒーロー物ではなく、
そういった哲学的な命題にも悩みながら、
ワンダーウーマン自身の成長物語になっているのが素晴らしい。
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ここで、ガル・ガドットの簡単な紹介を。
【ガル・ガドット】
1985年4月30日生まれ。
イスラエル出身のモデル・女優。
イスラエルには兵役義務があるため、
18歳の時から2年間、イスラエル国防軍で戦闘トレーナーの職務に就いていた。
2004年度のミス・イスラエル。
2007年に、テレビドラマ『Bubot』で女優としてデビューし、
2009年公開の『ワイルド・スピード MAX』で映画デビューした。
2016年、DCコミックスを実写化した映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のワンダーウーマン役で一気に注目される。
2017年、パティ・ジェンキンス監督作『ワンダーウーマン』で映画初主演。
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ワンダーウーマンを演じるためにトレーニングしていた際、
「軍でトレーニングをしていた頃をすごく思い出したわ」
と、兵役時代の経験が役作りの役に立ったことを語っているが、
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イスラエル出身のガル・ガドットが主役ということで、
イスラエルと敵対するレバノンでは、
映画『ワンダーウーマン』の上映が禁止されている。
ワンダーウーマンでも“如何ともし難い”ことがあるようだ。
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『ワンダーウーマン』の大ヒットを受け、
続編『ワンダーウーマン 2』が決定した……と先程述べたが、
ワンダーウーマンは、
今秋公開される『ジャスティス・リーグ』(2017年11月23日公開)にも登場する。
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演じているのは、もちろんガル・ガドット。
『ジャスティス・リーグ』だけに限らず、
「DCエクステンデッド・ユニバース」のこれからの諸作品にワンダーウーマンが登場する可能性もある。
そういう意味でも、
今回の『ワンダーウーマン』は、ぜひ見ておくべき作品といえる。
ぜひぜひ。