一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

北アルプス2013「美しき夏の記憶」④雲上の楽園から薬師岳へ

2013年07月27日 | 北アルプス(鷲羽岳・雲ノ平・薬師岳)


2013年7月27日。
北アルプス4日目。
いよいよ雲ノ平ともお別れである。
そして、よう子さんともお別れなのである。
よう子さんは、新穂高温泉に車を駐めているので、
当然のことながら、ここから引き返さなければならないのだ。

今日は、ヤスさんと一緒に、
薬師沢、太郎平を経由して薬師岳(2926m)へ登り、
薬師岳山荘に宿泊の予定。
歩行時間(ガイドブックのコースタイム合計)は、9時間10分。
タフな一日になる予感。

4時半に起床し、出発準備。
5時に朝食を摂り、
ザックを持って玄関口へ。
玄関口から食堂の窓越しによう子さんが見えた。
目が合ったので手を振ると、
食事を中断して玄関口まで見送りに来てくれた。
そして、我々にとって、もったいないような言葉をかけてくれた。
なんて優しい女性(ひと)なんだ。

7月25日に、鏡平山荘で出逢い、一緒に歩き、
7月26日には、ヤスさんとも一緒に歩き、
7月27日の朝、こうして別れようとしている。
よう子さんは、
単独で何時間でも歩けるオトコマエな体力と精神を持ちながら、
見目麗しく、それでいて心の景色はそれ以上に美しい女性であった。
佳き人に巡り逢い、素晴らしい時間を共有できたこと、
山の神様に、感謝、感謝である。

5:35
雲ノ平山荘を出発。




雲ノ平山荘が遠ざかっていく。
もう戻れないのだ。


5:44
アルプス庭園入口通過。


5:49
奥日本庭園通過。


6:15
アラスカ庭園通過。


雲上の楽園は本当に素晴らしい所であった。


木道脇には、イワイチョウがたくさん咲いていた。


花期を終え、花柱が伸びて放射状に広がり風車のように見えるチングルマ。


新緑のような美しい緑の道を進むと、


やがて下りの急坂が始まる。


足もとの岩や木の根は非常にすべりやすく、注意が必要。


朽ちた木に、ゴゼンタチバナが群生して咲いていた。
自然が創り出した盆栽といったところか……


カラマツソウがたくさん咲いてた。


この梯子を降りると、


沢に出る。


下が見える吊り橋を渡る。


吊り橋の上から見た風景。


8:00
薬師沢小屋に到着。


しばし休憩の後、出発。


登山道から見える沢の水は透き通っていて本当に美しい。


この辺りから、ニッコウキスゲが現れ始める。


ツマトリソウが可愛い。


楽しい散歩道だ。


8:12
カベッケ原で、ニッコウキスゲの群生に出逢う。
嬉しい。


8:23
第三徒渉点を通過。


マイヅルソウや、


ハクサンチドリがたくさん咲いている。


ニッコウキスゲとコバイケイソウのコラボ。


8:54
第二徒渉点を通過。


ヤスさんも軽快に歩いている。


時折青空も見え、気分がイイ。


どこまでも歩いて行ける感じ。


この辺りから、俄然花が多くなってきた。




ミツバオウレン、


シナノキンバイ、


サンカヨウ、


キヌガサソウ、


ミズバショウなど、目移りするほどたくさん咲いている。


9:19
第一徒渉点を通過。


第一徒渉点を過ぎると、急坂が始まる。
ゆっくりゆっくり登って行く。
「タクさんから水分の摂取の仕方を教わって、歩きが随分楽になりました。ことに、水とポカリスエットを併用するようになり、快適に歩けるようになりました。ポカリスエットって、元気になる力水なんですね」
とヤスさん。
「ポカリスエットより元気にしてくれるものあるんだけど、知ってる?」
と私。
「えっ、そんなイイものあるんですか? ぜひ教えて下さい」
「それはね、よう子さんの笑顔だよ」
「ちょ、ちょっとタクさん、しっかりして下さい。大丈夫ですか?」
というような他愛のない会話をしながら登っていたら、
やがて木道になり、歩きやすくなった。


「夏ぅ~」って感じ。


太郎平小屋が見えてきた。


ハクサンイチゲなどの花もたくさん咲いている。


この雪渓を渡ると、太郎平小屋はもうすぐそこ。


雲ノ平が見えた。
〈あそこから歩いて来たんだな~〉
と、しばし感慨に耽る。


10:21
太郎平小屋に到着。
ここで、昼食のラーメンを食べる。
(あまりにお腹が空いていたので、写真を撮り忘れた)


しばらくノンビリとして過ごす。


10:50
太郎平小屋を出発。


薬師岳を目指し、歩き始める。


なんだかワクワクするような風景。


木道脇には、タテヤマリンドウがたくさん咲いていた。


11:08
キャンプ場を通過。


沢=登山道という感じの所を登って行く。(笑)


11:49
薬師平を通過。


すれ違う登山者も多い。


右手にはダイナミックな風景が広がる。


雪渓が美しい。


チングルマや、


タカネヤハズハハコも多く見られた。


12:38
薬師岳山荘に到着。
受付をして、しばし休憩。
お茶をご馳走になる。
ヤスさんは、ここの女将さんが書かれているブログの愛読者で、
そのことを女将さんに告げると、女将さんは大いに喜んでおられた。


12:49
薬師岳山頂を目指し、出発。


最初はゆるやかだが、次第に傾斜がきつくなってくる。


途中からガレ場になり、歩きにくくなる。


風が強くなり、ヤスさんはジャケットの下に服を1枚着込む。


山頂が見えてきた。


13:42
薬師岳山頂(2926m)に到着。
ガスで周囲はまったく見えず。
強風が吹き付ける中の登頂であった。




山頂には、薬師如来像が祀られた祠があった。


初めて3000m級の山に登頂し、
感動の面持ちで、何枚も写真を撮っていたヤスさん。
きっと思い出の一日になったことであろう。


13:50
薬師岳山頂を出発。

14:21
薬師岳山荘に戻ってくる。


寒かったので、おでんをツマミに、ビールで乾杯。
大いに語り合った。
北アルプスも山小屋も初体験だったヤスさん、
昨日から今日にかけて、感動の連続であったようだ。
晴天ではなく、荒れた日の3000m級の山頂を経験できたのも収穫であったようだ。
「来年はぜひ縦走したいです」
ヤスさんの夢はふくらむ一方であった。


夕食は女将さんの心遣いが感じられて、とても美味しく頂いた。


明日はいよいよ北アルプス最終日。
どんな一日になるのだろう……

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