一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

天山 ……あらゆるものがどこかでつながっている……

2010年01月11日 | 天山・彦岳
今日は本来、ネット仲間と、とある山域を縦走する筈であった。
だが、現地の天気は雨とのこと。
やむなく中止となった。
残念!
次の機会に……と言う間もなく、リベンジの日程も決定!
う~、楽しみ~
楽しみが先に延びたと思えば、そう残念でもない。
私は、このあたりの気持ちの切り替えは早い。
ぽっかり予定が空いたこの日、
午前中は映画に、
午後は天山に登ることにした。
一年を通じてお世話になっている天山、
四季折々に楽しませてくれる天山、
その天山に、新年の挨拶をしなければ……
映画を見終え、書店に立ち寄り、いざ天山へ。
午後からの登山のため、上宮からの楽々コースを選択。
上宮駐車場に着いた時には、もう14時半近かった。
駐車場には車が1台のみ駐まっていた。
登山靴に履き替え、軽くストレッチ。
登山口から先はガスに覆われていた。


歩き出すと、すぐに若い女性が二人下りてきた。
「こんにちは」と挨拶を交わしてすれ違う。
服装からして登山者ではなかった。

上宮には雪がかなり残っていた。


池はやはり凍結していた。


あの二人の女性はこの池を見に来たのだろう……と思った。


ガスで展望はきかないが、薄墨で描かれたような風景が美しかった。




道や草や木々に、新年の挨拶をしながら、ゆっくり登って行く。


雨山分岐を通過。


木々の枝先を見ると、芽吹きも見られた。
春はもうそこまで来ているような気がする。


気をつけて見ると、枝や芽には滴が……



雨が降り、川となり、海へ。
蒸発した水は、雲となり、再び雨となり、雪となり、地に注ぐ。
循環する水が、滴となり、ほんのひとととき、この枝先に留まっている。
この滴は、地球のすべてを知っている一滴なのだ……と思った。


天山山頂には、予想通り誰もいなかった。
山頂はガスに覆われ、展望はまったくなかった。


尾根道をしばらく歩いてみる。
と、雪がかなり残っている場所に出くわした。


雪原と呼んでもいいような、純白の世界であった。
さっきまで、春はもうそこまで来ているような気がしていたが、ここへ来て、
「いや、まだまだ冬はここにある」
とひとりごちた。
私は腰を下ろし、珈琲を淹れた。
珈琲を飲み、その後で、雪をひとつまみ指に取った。
地球を循環する凍った水の欠片を、珈琲で温められた舌先に乗せてみた。
私の舌先は、何万年、いや何億年と循環している水の物語を感じ取った。
「宇宙のあらゆるものがどこかでつながっている……」
雪の欠片は、舌先に染み、私にそう教えてくれた。

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