シリーズ「麓から登ろう!」の7回目は、虚空蔵山。
とは言っても、虚空蔵山と名の付く山は全国に30座以上もあるし、
西彼杵半島や、有明海と大村湾に挟まれた一帯には、なんと5座もある。
で、今回登るのは、
この一帯で最も標高が高く、
「九州のマッターホルン」と称されている、
かの虚空蔵山(608.5m)である。(説明しなくても判るよね。でも九州以外の人たちの為に、一応……)
虚空蔵山の主な登山口は、
佐賀県側に長野登山口、
長崎県側に木場登山口、岩屋登山口、川内登山口がある。
どの登山口も標高がかなり高い場所にあり、「麓から」という感じではない。
しかも、佐賀県側には、麓と呼べる場所すらない。
長崎県側を見てみると、佐賀県側にはない「海」があり、「JRの駅」もある。
羨ましい限りだ。
で、今回は、「佐賀県側から」というこだわりを捨てて、長崎県側からアタックすることにした。
川棚の海から出発し、木場登山口を経て、虚空蔵山山頂へ。
復路は、川内登山口へ下りて、東彼杵町の海へ。
「海から海へ」と同時に、
「駅から駅へ」もやりたいので、
JR川棚駅から出発し、海へ、
復路は、JR彼杵駅に寄った後に海へ行くことにする。
彼杵駅6:24発の佐世保方面行きの電車があるので、
5:00に車で家を出た。
5:40に道の駅「彼杵の荘」着。
我が家からわずか40分で東彼杵町まで来ることができた。
「こんなに近かったのか!」とビックリ。
「彼杵の荘」の駐車場の一番奥に駐めさせてもらい、彼杵駅へ。
6:24発の電車に乗り、
川棚駅に6:31着。
実はこの川棚の町には、特別の「思い」がある。
あれは、小学3年生のときだった。(古ぅ~)
当時好きだった女の子が、この川棚に転校したのだ。
お父さんの仕事の関係での転校だった。
小学3年生の私にとって、川棚は「遠い町」だった。
正直、どこにあるかも知らなかった。
なんだか、彼女が「遠い世界」に行ってしまったように感じたものだ。
あれから40数年の月日が流れ、
何かの用事で稀にこの川棚の町を車で通過する度に、
転校していったJ子を思い出す。
そして、胸がキュンとなる。
これまで一度も川棚の町に降り立ったことはなかった。
私にとっては、なんだか神聖な感じの町だったのだ。
今回、その川棚から出発する。
初めて歩く川棚の町。
J子はどこに住んでいたのだろうか?
まずは海抜0メートルから出発する為に、海へ向かう。
橋を渡る。
海が近いので、なんだか大河のよう。
海に着いた。
7:00
海水に登山靴を浸け、出発する。
7:23
川棚小学校を通過。
J子が転校した小学校は知らないが、もしかしたらこの小学校だったかもしれない。
この道は、「彼女が歩いたかもしれない道」なのだ。
校庭にJ子の面影を探す。
7:42
地方道4号線(川棚有田線)から県道106号線(嬉野川棚線)へ右折。
右折してすぐの場所に石木小学校があった。
登校する小学生たちと、J子のイメージがダブる。
〈J子が転校したのは、もしかしたらこちらの小学校だったかもしれない〉
などと考えながら歩く。
8:02
虚空蔵山がわずかに顔を覗かせる。
8:16
岩屋登山口と木場登山口との分岐に到着。
ここは左へ。
ここから先は、なんだか秘境的な趣きがある。
雨が降り出してきたので、傘をさして歩く。
暑いので、雨具は着なかった。
これ以降、雨の降ったり止んだりが続く。
それにしても見事な棚田である。
こんな感じの風景がずっと続く。
やはり「日本棚田百選」に選ばれた棚田であった。
ここは車で通過するのではなく、ゆっくり歩いてじっくり味わいたい場所だ。
9:20
「虚空蔵の水」に到着。
ここでしばし休憩。
湧き水を飲む。
茶畑を見ながら登って行く。
かなりの急坂で息が切れる。
9:41
木場登山口に到着。
海からここまで2時間40分ほど。
さあ、ここから本格的な登山道だ。
9:56
新道(冒険コース)と旧道(家族連れコース)の分岐にさしかかる。
雨も降っているし、岩も濡れているだろうし、
新道(冒険コース)を選択。(笑)
10:12
寺屋敷跡を通過。
ギンリョウソウがたくさん。
クサリ場は慎重に登る。
旧道と合流する辺りで、60代の男性3人組に出会う。
私の出現にビックリした様子。
「こんな日に山で登山者に出会うとは思いませんでした~。お互い物好きですな~」
と笑い合い、しばし談笑。
伊万里から来たとのことで、話しているうちに、共通の友人がいることが判明。
二度ビックリ。
10:44
虚空蔵山山頂に到着。
当然のことながら、まったく何も見えず。
オレンジジュースを飲みながらサンドイッチを食べていたら、激しい雨が……
仕方なく、傘をさしたまま食べ続ける。
11:00
山頂を出発。
11:17
「犬の墓」を通過。
梅雨ということもあって、
植物たちはなんだか生命力に満ちている。
緑の怪物が襲ってくるような錯覚をおぼえる。
11:34
標識のある川内登山口を通過。
空気が濃い。
楽に息ができる感覚。
あちらこちらに無名の滝がある。
里に下りてくるとこんな風景が……
「美しい日本のむら景勝地」で日本一に選ばれた地区のある東彼杵らしい風景だ。
雨と汗でグッショリ。
だが、意外に元気。
高速道路の下をくぐり、突き当たりの国道34号線を右へ。
ゴールが近づいてきた。
遠くに海が見えてきた。
13:18
彼杵駅に到着。
「駅から駅へ」はここで完結。
次の「海から海へ」の為に、海へ向かう。
川棚では、J子が歩いたかもしれない道を歩いたが、
ここ東彼杵では、「あの人」が歩いたかもしれない道を歩くことにしよう。
「あの人って、誰?」と思ったあなた、
私のブログで何度も採り上げている東彼杵町出身の女優を覚えていませんか?
そう、仲里依紗だ。
仲里依紗の実家は東彼杵町役場の近くの「TACK」というアメカジの店。
たぶん、東彼杵町では知らぬ人はいないんじゃないだろうか。
東彼杵町は、昔から「お茶」と「鯨」が有名だが、
今は、「お茶」と「鯨」と「仲里依紗」だとか。
仲里依紗の実家の前の道を通って、海へ向かう。
この道も、仲里依紗が歩いたかもしれない……いや、歩いたに違いない道である。
海が見えてきた。
ここ彼杵港は、昔はとても繁栄した港であったらしい。
13:34
海に登山靴を浸す。
これで、「海から海へ」も完結した。
海を見ながら、満足感に浸る。
山もイイけど、海もイイよね~
シリーズ「麓から登ろう!」を始めてから、山だけでなく、里や町や海も同時に楽しめるようになったのが、いちばんのメリット。
楽しみの幅がグッと広がったような気がする。
13:55
道の駅「彼杵の荘」に到着。
ここで買いたいものが……
仲里依紗が「はなまるマーケット」に出演したとき、
彼女が「おめざ」で持ってきたのが、この「甘古呂餅」(かんころもち)。
で、この「甘古呂餅」が一躍有名になった。
売場には、仲里依紗がTVに出演したときの写真も置いてあった。
(仲里依紗が「はなまるマーケット」に出演したときの動画はコチラから)
道の駅「彼杵の荘」では、
駐車場に車を駐めさせてもらったので、この他、
「鯨の竜田揚げ」や
「そのぎ茶入りの茶ちゃ焼」などを買った。
こうして約7時間の旅が終わった。
東彼杵は、長崎街道と平戸街道の分岐点の宿場町でもあったし、吉田松陰、シーボルトなど多数の要人が足跡を残した町でもある。
「道」には、何百年にも渡って、そこを歩いた人々の思いが残っているような気がする。
J子も仲里依紗も、遠足などで一度は虚空蔵山に登っていると思う。
だから、今日私が歩いた道はすべて、私の思うふたりの女性がかつて歩いたであろう道なのである。
皆さんも、自分が思う人の面影を求めて、いろんな「道」を歩いてみたらどうだろう。
変哲もない道が、きっと特別な道に思えてくるに違いない。