MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『離ればなれになっても』

2023-02-16 00:51:28 | goo映画レビュー

原題:『Gli anni più belli』 英題:『The Best Years』
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
脚本:ガブリエレ・ムッチーノ
撮影:エロワ・モリ
出演:ピエルフランチェスコ・ファビーノ/ミカエラ・ラマツォッティ/キム・ロッシ・スチュアート/クラウディオ・サンタマリア
2020年/イタリア

「ビルドゥングスロマン」の描写の繊細さについて

 作品冒頭のシーンはローマで起こっている暴動の最中、銃で撃たれたリッカルドを病院に運ぼうとパオロとジュリオが手伝うところから3人の関係が始まる。1982年に16歳だったという設定からこれはガブリエレ・ムッチーノ監督自身の体験が反映されていると思われるのだが、1982年にローマで起こった暴動が何だったのかよく分からない。
 作中で一般に認識できる曲が2曲あり、リチャード・サンダーソン(Richard Sanderson)の「愛のファンタジー(Reality)」は『ラ・ブーム(La Boum)』(クロード・ピノトー監督 1980年)の主題歌で、シンプル・マインズ(Simple Minds)の「ドント・ユー?(Don't You (Forget About Me))」は『ブレックファスト・クラブ(The Breakfast Club)』の主題歌なのであるが、あまり本作のストーリーとの関連を感じない。
 この3人にジェンマという女性が絡んでストーリーが展開されていく。弁護士として出世頭だったジュリオが政略結婚の末に仮面夫婦を演じる羽目になることと比較するならば、文学とラテン語とギリシア語の教師となったパオロとジェンマが元の鞘に収まり、そしてその2人の間で妻と息子に冷遇される売れない俳優のリッカルドという中途半端な立場の4人が最後に新年を一緒に迎えるというハッピーエンドは悪くはないが、予定調和といった感じが拭えない。
 例えば、似たような作品として『リコリス・ピザ(Licorice Pizza)』(ポール・トーマス・アンダーソン監督 2021年)を観てみれば、傑作とそうでないものとの違いが分かると思う。

gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/otocoto/entertainment/otocoto-otocoto_82298


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