「ここは大丈夫だろう」
長浜駅近くの古風な食堂に入ることにした。私は旅先の食べ物屋については事前に調べない主義で「己の勘」に任せている。食べ歩きの駄文を飽きもせずに書いている者の多くが「肝心の舌」に問題を抱えているのであまり参考にはならない(笑)
テーブル席に座り壜ビールと真鯖にぎりを注文した。先ずはビールで喉の渇きを癒してすしを待つ。10分くらいして品のいいお婆さんが握りを持ってきてくれた。それを見てにっこりした。まことにさりげない盛り方だ。
これが「凶の都」であれば小綺麗な皿にこれ見よがしと自慢げに盛ることだろう。内面の醜さや弱さを見せまいと虚勢を張るようでは逆に食べる気が失せる。長浜の老舗食堂は自然体を貫き余裕を漂わせていた。
真鯖は主に焼津や三陸で水揚げされたものを使っている。脂ののりと〆具合は私の好みにぴったり合った。5個で600円。今時こんな店があると知り有難い気持ちで胸が熱くなった。
無駄に金を使うばかりが幸せとは限らない。当たり前のことをふと気付かされた休日だった。「よもぎそば」は次回に食べるとしよう。
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