ヴィーナスの誕生 平成25年2月1日
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ヴィーナス、愛の女神の名前を知らない人はいない
でしょう。
さまざまな芸術作品のモチーフになっていますが、
絵画では ボッチチェリ(1444~1510)の
”ヴィーナス誕生”(1480)が 有名なようです。
イタリア・フィレンチェ生まれの画家のこの代表作は
ルネッサンス時代の象徴ともいえそうです。
ギリシャ神話からとった題材で、人間の裸体の美を描く。
暗い中世時代の押し付けられた価値観から、人間らしい
復興をと、新しい価値観に目覚めた”文芸復興期” の
代表的絵画 といわれています。
名門メディチ家から、別荘の壁を装飾する絵画として、
注文を受けたこの絵には、波の上を揺られて貝殻の上に
のった、ヴィーナスが サイプラス島に着いたときの
様子が描かれています
ヴィーナスの生まれに関しては、様々な説があるようです。
ジュピターとディオーネの2神を両親に持つとする、本来の
ギリシャ神話の説のほかに、ロマンチックな海の泡 から
生まれた女神だという説もあるようです。
絵の中では、四季の女神が、裸体のヴィーナスに衣服
を着せ、花飾りをあしらい、神々の前へと連れて行きます。
多くの神々がヴィーナスを妻として向かい入れたいと所望
する中、ジュピター神はヴァルカン神に、あることへの
報償として、ヴィーナスを贈ります。
あることとは、ヴァルカン神は、”雷”をつくったのです。
その功績が認められ、ヴィーナスとの結婚が許されました。
ヴァルカン神は 神々の中でも、一番、醜い神 とされて
いたのですが、一番美しいといわれる女神、ヴィーナスを
妻とします。
二人の間の子供が キューピッド。 手にしている弓矢で
誰かのハートを射抜くと、とたんに、恋心を芽生えさせる
ことができるという、なじみ深い、天使 キューピッド
です。
”雷神” というのは、どこの国でも、一目置かれる存在
です。
日本では、いかずちの神 と呼ばれ、古文献に登場します。
インドでは、雷の神は インドラ と呼ばれます。
悪しき神にとっては、とても手ごわい、神様です。
後世、仏教の神様としても 登場します。漢訳では
帝釈天 と呼ばれ、寅さんで有名な柴又帝釈天こそ、
元をただせば聖典ヴェーダに登場するインドラ神です。
泡で生まれたとされるビーナスと、夫である雷神の
創造神のお話し。
実は 印度の聖典、ヴェーダにも何となく、似た話が
あります。
リグ・ヴェーダの中に出てくる話です。
インドラ(雷神)は、悪神を率いる ジャランダラ
と闘います。
そして、インドラは魔神を倒します。
その魔神の名前は ブリトラ、そして、最後は、泡の柱
で倒すという話しです。
泡の柱、ギリシャ神話では 海の泡は、ヴィーナスが
生まれた故郷でもあります。こじつけかもしれませんが、
何となく、ヴィーナスの象徴でもある泡が、海を越えた
異国の神話にも、生かされているような錯覚を覚えました。
このあたりを 原文から少し拾ってみます。
”名だたるプリトラ、斯く、太陽なき暗黒において、
如何にしてか成長し、眠れるを・・・・
強力なるインドラは、ソマ(一種の神酒)に酔いて、
声高に威嚇しつつ、これを殺せり。”(*1)
”彼は 天帝なり。 馬も牛も、村人も、一切の車も、
我の指揮にあり。
彼は太陽も、生じたり。彼は水の指導者なり。
人々よ、彼は天帝なり。”(*2)
天帝と讃えられたインドラ神は、盗み取られた多くの
牛を解放し、太陽も支配し、世界の光と雨の恵みの
象徴ともされました。
こうしたエピソードは インドの ヴェーダの中のお
話しです。
ギリシャ神話も同様、古いお話しです。
いずれにしても、このような 雷神の持つ、凄さを
ヴェーダを通して知ると、醜い神様、ヴァルカン神は、
ヴィーナスの相手として、決して、不釣合いではなく、
むしろ、ふさわしい相手だったのかもしれません。
雷神を生んだ神との結婚
絵画 ”ヴィーナスの誕生”の中のヴィーナス
*1 リグヴェーダ Indra 5・32・1~3
*2 リグヴェーダ Indra 2・12・1~15
山本三生 訳 昭和4年12月30日発行 改造社
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