夫婦の道 平成25年2月13日
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昨日の例でもわかるように、夫婦の心の交流は、
お互いの病の完治に大いなる影響を与えている。
それは癌の場合も例外ではない。
内田医師の患者さんで76歳の男性、肺がんと直腸癌
で入院されている方のお話しだ。
ご家族は 半ば、あきらめかけておられるほど、
経過は思わしくなかった。
内田医師の信念は、心と身体は切り離せない
という点にある。そこで、早急に、この患者さんの
心的要因を調べ、解決策を講じられた。
入院当日、第一回の、奥様との面談の機会を得た。
以下、内田医師と患者さんご家族との対話である。
”夫婦というのは、うれしいことも辛いことも、
両者5分5分の責任があります。癌になった場合、
本人自身の原因と、知らず知らずのうちに、癌 に
ならせるような、家族側の要素も考えられます。
ご主人は努力家で頭が良くて、優しい反面、
とても、我慢強く、頑固で容易に人の意見に
応じられない特性がみられるでしょう。
それに慣れて、奥様がご主人に長期間、
グーッと我慢させていたことはありませんか?”
すると、その妻が答えた。
”あります。
私は三人の子供を産んで、30歳ごろから
胆のう炎になって、いまだに治りませんので、
40年間 夫婦関係を辛抱してもらってきました。”
そこで、内田医師は、
”胆のう炎はたいてい、2,3か月で治る
病気なのに、40年間も治らないのは、変じゃ
ありませんか?”とさらに問いかけると、
”そういえば、この間、レントゲン検査で異常なし
と言われました。・・・確かに、40年間、
傷み続けていたのに、不思議です。
先ほどから、この胆のうのところが痛く
ないのです。”
そう言って、妻は、夫に申し訳ないことをした、
と感慨深く反省して、病室の夫を見舞い、謝った。
内田医師の考えた、”癌になる要因” の一つが、
”夫に辛抱させていた”という、夫婦生活の問題と、
心の和解 が判明、除かれたという。
入院2日目、内田医師と妻との第二回の面談は、
食生活の習慣 についてだった。
内田医師は、妻に、
”5大要素として、いろいろな食べ物を、偏らずに
いただくことが健康になる秘訣です。
正しい食生活が原動力となって、新陳代謝が活発
に働き、肝臓の解毒作用や老廃物の排泄作用も
目覚めてきます。それによって、免疫力もつきます。
また、しっかり食事すれば、脳の食欲中枢が刺激
されて、本当の食欲も感じられます。”
と 身体のもつ、自然治癒現象を話した。
さらに、回診のおり、積極的に明るい希望と検査結果
の少しでも 良い点を指摘して、心からほめたり
するうちに、この患者さんの顔色が良くなり、表情も
明るくなってきたと内田医師は書いている。
内田医師は放射線や抗がん剤の治療法に関して、
心身相互関係のついて、以下のように語っている。
”現象にあらわれた 癌 への対策はなかな困難で
あって、現在のところ、早期がんは切除するか、
抗がん剤や コバルト療法がおこなわれていますが、
いずれも、絶対的な治療法ではありません。
かえって、副作用のために、逆効果の場合も
見られます。ところが、原因結果の法則(須田注:
因果の法則)から考えますと、肉体に結果として
あらわれる以前に、心に病の原因があることが
わかります。
心 は水や空気と同じように、無形 であります
から、自由自在に入れ物によって形を変化させる
ことができます。悲観的な考え方や、腹が立って
仕方が無かった人でも、理論的に納得のいく指導が
行われれば、だれでも健康で幸福でありたい人間
の願望がある以上、健全な心の持ち方に変える
ことは不可能ではありません。
言い換えれば、癌的な心質 を、健全な 心質に
変えることも 意思の力で可能なはずです。”
この考え方を踏まえて、内田医師は この癌患者の
老夫婦に 心の持ち方の指導も試みられた。
このご夫婦は、ご主人は言いたいことを抑える寡黙な人、
妻は夫への質問も、横から鉄砲玉のような勢いで、
まくし立てて、夫の発言を封じるほどの”おしゃべり”
癖がある。
その点を夫婦に指摘した内田医師は、夫に もっと
発言の機会を与えるように妻に反省を促し、夫が次第
に自分の意見を表現できるようになってきた。
すると、ある日、妻が心配そうに、内田医師に質問した。
”先生、主人が派手なパジャマを買ってきてくれ
というのです。主人は気が変になって、色気違いに
でもなったのでしょうか?”
内田医師はそこで、
”ご主人は、私の説明を実行されて、食事もしっかり
食べ、気分が明るくなり、そのうえ、今まで辛抱して
きた分が形を変えて、少しずつ吐き出されるよう
になってきたのですよ。
言い分をかなえてあげてください。
4,5着買ってあげてください。
きっと、満足しますから”
こうアドヴァイスすると、妻は、チェック柄、水玉模様
無地、縞柄 など明るい色調のパジャマを買ってきた。
夫は嬉しそうに着替えを楽しんだが、とうとう、5着目には、
”もう、買わなくてもよい”と一言。
これで 一件落着したという。
次の夫の要望は、大豆の煮豆だった。
内田医師はさらに、言った。
”言われた通りに差し入れしてあげてください。
毎日食べれば、腹具合がおかしくなって、もういらない
と、言われるでしょうから。 ご心配いりません”
それからは、娘が、外から煮豆を買って病室に運び、
父親にせっせと食べさせた。 やがて、案の定、父親の腹
が張り、軟便になったので、自分自身から、この豆の供給
をやめさせた。
ここで内田医師は重要なことを述べている。
患者の要求通りに満たしてあげることの意義についてだ。
”なぜ、このように、適当な時期に、ことが治まるか、
それは、決して物質を与えられた満足ではなく、
ご主人の主張に対して、奥様や子供さんたちが
’ハイ’と素直に従われたことに対して、ご主人が
愛情を感じ、満足されたからに相違ありません。”
と述べ、さらに、
”’夫は針、妻は糸’とよく喩えられますが、
このような、自然の法則 に則ったとき、本来人間
として、あるべき姿に戻って、(要求が)行き過ぎた
場合、反省の心が湧いて、中庸になるのだと思います。”
と夫婦の道の本来の姿が この患者夫婦の病の経過の
中で、妻の反省を促し、良好の回復がみられたことを
述べておられる。
続く~
参考資料: ”生命医療を求めて” 内科医 内田久子著
平成7年11月1日18刷発行 発行所 日本教文社
内田医師について: 昭和2年大阪生まれ・
昭和25年大阪女子高等医学専門学校
(現在関西医大)を卒業。
その後 大阪大学附属病院、池田市立病院、
国立療養所、私立病院内科部長を経て
講演活動も行った。
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